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ときわ座サブカル古本市「はかない展」

2024年11月16日土曜日、11時~15時 新宿区高田馬場1丁目6-13

かつて生花店、いけ花教室であったり、寿司屋であったり、様々な時期を経た建物が、5年前にセルフリノベーションを経てイベントスペースとしてオープン。芝居小屋として、ライブ会場として、映画上映会場として、展覧会場として、アトリエとして、リハーサル会場として、カフェとして、宴会場として、、、など利用する人のアイディアで多彩な表情を見せている。「5年限定」と期限を決めて始めた当初の計画どおり、今年の年末、もうすぐ幕を閉じるという。運営する歌川夫妻と知り合ったのは6、7年前、ユウキさんの東京滞在の折、稲城のおうちへ連れて行ってもらった。その時の話題で、ケイコさんの親戚が亡くなり、ゴミ屋敷と化していた古い建物の掃除をしているとのことだった。ゴミを出しても出してもまだ物に溢れているという話に、自分自身の経験も重ねて耳を傾けた。やがて「ときわ座」の話が具体化して、ゴミ出しの段階からセルフリノベーションの話題になり、なんだかおもしろいことが始まる予感がした。

この5年間の前半はCOVIT-19旋風で「ときわ座」もオープンして間もなく表立った営業ができず、貸しスペースの借り手が少ない中、自称応援団長のタケシゲくんが音頭を取って?度々小さな宴会が繰り広げられていた。そんな様子が映画監督でもある歌川恵子さんのiPadで記録され、、、知り合って日が浅い私はケイコさんが映画監督であることを知らず、ある日ときわ座の宴会模様がホームビデオ的記録でなく、映画として完成(2021年)し、上映されることを知って驚いたのだった。
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歌えやトキワザのあらすじ
空き家を改装し、コロナ禍直前に開店した貸しスペース「ときわ座」。客の来ない「ときわ座」には店主夫婦の友人たちが集い、そこにはいつも「ご近所の竹重くん」の姿があった。竹重くんはときわ座の応援団長となり、たまたま集った人たちと飲み食いしながら数々のセッションを繰り広げる。「ときわ座の宣伝映像を撮ろう」というのがお決まりであった。そしてコロナ禍。アラフィフたちの即興歌劇は続く。それは、時に熱く! 激しく! くっだらない! 宴であった。
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いまも続くコロナ禍、パンデミックについて思うことは色々あれど、緊急事態宣言によって世の中が停滞したかのように見えたあの時期に「ときわ座」が静かに人の集まりを絶やさずにいてくれたことで、私は随分支えられた。「うちうごはん」なんて、ケイコさんの導きで味噌づくりを始めたことなしには始まらなかったとも言える。繰り返される宴会に度々試作を持ち込み、酒飲みたちのご意見を聞かせてもらったことは大変役立っている。

というわけで、今週木曜にも「ときわ座」で演奏予定はあるけれど、企画から関わるイベントの最後である「はかない展」で酒の肴、熱燗のつまみ担当をと声がかかったのは必然であったかもしれない。ときわ座は貸し賃が異様に安い。絶対に赤字なのでは、と懸念するが、カンパもなかなか受け取ってもらえない。ので、アルコールなしに手が震えてしまうタロウさんに、やっぱり酒の肴やお酒の差し入れをしてしまう・・・イイノカワルイノカ・・・。ときわ座初期にタロウさんは「粋なことがしたい。そういう場にしたい。粋ということのひとつは、儲けないということ。宵越しの金は持たない、+と-が差し引きゼロ、トントンになる状態が理想」という話をしてくれた。

そんなわけで、「はかない展」の売上で利益を出さない、かといって赤字も出さない丁度良いラインとして、「300円以上のカンパ制、食べ放題」という試みをした。偶然、友人のご実家が能登の伝統製法の塩づくりをしているという縁があり、「究極の酒のつまみは塩」と思っている私は今回の企画の最初に能登の塩を注文した。約15000円分の塩。集まったカンパはおおよそそのくらいだった。つまり客単価300円と考えればのべ50人。物販も同時開催していたため、純粋につまみだけの収益ではないけれど。私も昼からお酒をいただき、夕方にはアコーディオン弾きとしてこの日デビューを飾ったアリマタカシさんと演奏もして、ときわ座をひけてから夜は塚本功さんのライブがたまたま高田馬場だというので小西くんにお供して、と盛沢山な一日を過ごした。帰宅する頃にはまっすぐ歩くことができないほどだった・・・

kamebooksさんの写真引用

おさらいすると、【はかない展】は【サブカル古本市】も兼ねていて、古本市はkamebooksさんの仕切りで、展示はけんちく新聞の柳田亮さんがとりまとめ、さらに【80年代ディスコ専門レコード市】をDJmoyokoさんが運営という複合企画。そのつなぎにDJYudetaro氏の熱燗と私【うちうごはん】のつまみを供した。天気もほどよく、それぞれのコーナーも終始それなりに賑わっていた印象である。

さて、お酒にこだわりはないものの、父の影響で辛口純米酒を基本としてしまったため、大吟醸などが苦手な私の味覚で今回のつまみも準備した結果、お正月料理のようになってしまった。上にも書いたがとにかく最初に塩を注文した。というのもお正月の震災以来、能登のニュースを気にかけているが、東北の震災、あるいは関西の震災と比べ、とにかく対応が遅い。地形、人口、経済、それと恐らくは原発問題など様々な要素があるのだろうけれど、水道開通が7月半ば過ぎだった。道路事情にも難ありで、ボランティアもかけつけづらい中、知人友人がボランティア活動をしている様子をSNSなどで見かける。私もなにかと思いながらなにもできずにいたので、能登の塩を料理に使うことを決めた。少し前までは出荷の見通しが立たないという情報もあったが、注文したらすぐに届いたので安心した。

お酒に合うつまみについて、リクエストというか関係者にアンケートを取ることも試みた。一応料理をすることが求められているはずだったが、意外にもアンケートのご意見は、エイヒレやポテトチップス、あるいは刺身など、そのまま出すもの、切るだけ、炙るだけ、といった回答が多く(無論気持ちはわかるし私もそのようなものが好きであるが)、あまり参考にならなかった。kamebooksさんからは過去のイベントですっかり気に入っていただいた「お味噌汁」というリクエストがあり、「塩」と「味噌汁」をテーマにつまみの献立を考え始めた。

何度もアナウンスしていることだが、私の仕入れている昆布は北海道日高地方の浦河町に住む木下さんという漁師さんから直接購入させていただいている。旧日高線の沿線を舞台に撮られたドキュメンタリー映画『日高線と生きる』にも出演されている。去年馬頭琴バンドgiingooのツアーで初めて浦河を訪れた時には住所を手がかりに時間のない中、木下さんを訪ね、昆布浜の様子も見ることができた。昆布の労働の大変さ、後継者問題、気候変動による昆布の激減など、昆布の未来はあまり明るくないが、木下さんはさっぱりと明るい方で、お手紙も毎度ユーモラスである。はっきり言って、お味噌汁というより昆布ダシ汁に塩を加えただけのスープで十分おいしい。

松前漬け
2日前に数の子を塩抜き開始
三浦大根、人参 千切り、塩もみ
するめイカ、納豆昆布 日本酒で戻す
醤油和えしてひと晩置き、味見して塩気が足りなければ足し、辛ければ日本酒またはみりんを足す
酒、みりんはアルコール苦手な人がいる場合は加熱してアルコールを飛ばし、冷ましたものを使う

うずら卵のニラ玉
卵を茹で、殻をむく
他の料理の出汁に漬けて加熱
煮立ったらニラとセリを入れて塩で味を整え、火を止め、冷ます

とりハラミ薩摩芋ピリ辛炒め煮
薩摩芋を薄切りしヒタヒタの水で煮る
煮立ったところへとりハラミを入れ、火を通す
調味料を入れ、塩で味を整える

とりハツ
こんにゃくを塩もみし、水から茹で、湯切りしてアクを抜く
昆布出汁にこんにゃく、人参を入れて煮る
煮立ったところへハツを入れて加熱し、火が通ったら塩で味を整える

里芋を水煮、塩をつけながらいただく

銀杏を煎り殻を割り、塩をまぶす
毎度お世話になっている大玉村の野内家から仕入れたばかりの大粒できれいな銀杏。こればかりは家で調理するより現地で熱いうちに食べるのが一番おいしいわけなので、ときわ座のタロウさんに「おつまみ食べ放題」のかわりに炒っていただいた。会場内各所にFREE銀杏スポットができた。

ぬか漬けを刻む
糠漬けが苦手な人、慣れていない人も増えている昨今、つけ過ぎないで取り出す。今回は人参と蕪

梅干し カメから出す
モヨコさんに「魔法のようにおいしい」といわれた梅干し。梅の仕入れも知り合いの梅農家さんが引退され、2024年は全国的に不作だったし、ますます困難になってきたけれど、なんとか作り続けたいものです。
梅干しは大量(私は毎年20キロ)に漬けると干すのが大変。でもどの工程も梅の良い香りに包まれる至福の時間でもあります。
魔法をかけるのは私ではなく、雨と風と太陽、そして土壌と川、塩。
料理はいつから始まるかという問い、それは海から始まるのかもしれない。

大根葉、蕪葉、セロリ、昆布の塩もみサラダ、味噌汁
生椎茸
タコ刺身

珍味として(準備したものの、みかん以外は出す暇なく持ち帰り)
エイヒレ
干しタラ
チーズ
サラミ
えびせん
ウインナー
さつま揚げ
みかん

一夜文庫(@ichiya_bunko)さん / X


https://x.com/ichiya_bunko/status/1857654812101456186

それにしても、いろんな人と会えた。
歌川夫妻、サブカル古本市kamebooks夫妻と出店者のみなさん、モヨコさん、柳田さんと出展者のみなさん、あらかわさん夫妻、YUDETAROさん、それぞれの常連さん、ときわ座応援団長タケシゲくん、小西くん、まやちゃん、大塚さんとお友達、夜に関根さん、最近改めて知り合った愛子さん、夜に明星さん、蟻鱒鳶ルダーズを代表してアリマさんとカズノさん、たまたまライブの打ち合わせに見えたまるたんぼ親子、、、

kamebooksシゲさんリクエストのお味噌汁は3回作った。
ときわ座にある銅のお鍋で一度に6杯くらい作れたから約20杯分だったのかな。数日前の仕込みでお味噌汁用に昆布を数枚、タッパーに入れ、お漬物用の蕪の葉や糠床に入りきらなかった蕪、大根の葉、セロリなどをナマのまま食べられるように塩揉みし、一緒にしておいた。畑で収穫した菊芋を朝刻んで菜種油で炒めておいたもの、葉類、生椎茸を煮込み、油揚げも入れて、自家製米味噌と豆味噌、寝かせて置いた麦味噌、先日宮崎で購入した麦味噌、で味を調えた。

去年と今年はライブが多かったのであまり料理イベントができなかったけれど、来年は月に一度はできたらいい。でもkamebooks屋上、ときわ座、気流舎、なじみのスペースが次々とクローズしていくので、そんなことのできる場と出会えるかどうか。

ともあれ、よく働いてよく呑んで、はかなくも印象深い一日を過ごせました。ときわ座さん、お会いした皆さん、ありがとうございました。



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山本恭子
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