僕が東京パラリンピックを目指す訳 第3回 ~銀座オジサンとブラインド・ファッショニスタというお仕事~
先日、【JBB(日本視覚障がい者美容協会)の「Voicy」というインターネットラジオにゲスト出演した。
目の見えない方のためにファッション雑誌を読んでくれるメディアで、見えなくてもお洒落を諦めないで!という趣旨らしい。
オファーをもらってまず、「なんで俺?」てなった。
理由は「イケメンだったので」♪。
・・・ありがたいけど、わかるようなわからんような・・・。
理由はさておき、目が見えないとおしゃれの情報が取りにくく、みんないろいろ苦労していると聞くので、これは素晴らしい取り組みだ。
ちょっと身近な例を挙げてみる。
友人の先天性全盲男性(電気・ガス業会社勤務)(30)。曰く「元々見えないから服に興味を持ったことがない」。いきなり致命傷だ。加えて仕事柄身体を鍛えているので服のサイジングが難しく、自分で選ぶと楽な恰好をしようとしてアンバランスになってしまうという。しかも異様に物持ちがよく、服をボロボロになるまで着続ける習性もあり、浮浪者と見まがうばかりの恰好だったこともある。
ただ幸運なことに彼は人望に厚く、彼の状況を見かねた友人知人からしょっちゅう服や小物をプレゼントされており、貰い物で固めることでなんとかそれなりにいい感じになっている、という状況だ。ちなみに僕も先日ついつられてポロシャツをプレゼントしてしまった。
この例からもわかるように、見えない人のおしゃれには周囲のサポートが不可欠である。
僕は見えなくなる前から結構おしゃれが好きだったこともあり、今も見た目には気を使いたいのだけど、服を選ぶ作業にはどうしても人の助けが要る。説明を介して把握するというプロセスが不可避である以上、友人やスタイリストさんのアドバイスにはかなり影響を受けざるを得ない。元々は一人でじっくり店を見て回り、(なんなら店員さんのことも無視して)買い物を楽しみたいタイプの人間だったので、最初の頃は正直精神的に窮屈で辛かった。
そんな僕の意識を変えたのは数年前、おしゃれ師匠、銀座オジサンとの出会い。
銀座オジサンは、僕の通っていたジムのお客さんで、たまたま一緒にトレーニングしたことがきっかけで知り合いになった。その頃僕は丁度ファッションイベントのトークショーに出演する予定があって、その衣装のセレクトに困っていた。そんな話をトレーナーさんとしていたら、銀座オジサンを紹介してくれた。銀座オジサンはお洋服屋さんの社長さんなんだけど、パーソナルスタイリストという仕事もしていて、一緒にお買い物に付き合ってコーディネートしてくれる。なんせお洋服のプロなので、凄まじい知識とセンスをお持ちなのである。
銀座オジサンことKeiichiro Seiさん
正直、銀座オジサンのチョイスは僕には攻めすぎに感じることが多い。試着する時は大体半信半疑。だが、実際に銀座オジサンのアドバイスで買ったものを着ていると周囲から驚くほど高評価を受けることがある。自分の(概念的な)視野の狭さを思い知らされ、身をもっておしゃれのなんたるかを学ばされている。さらに銀座オジサンは一緒に買い物する間もずっとおしゃれうんちくを語ってくれるので、どんどん知識も増えて、次の自分のセレクトにも生かせている。ありがとう、銀座オジサン!
もし普通に目が見えていたら、わざわざ他人にアドバイスを求めることはなかったろうと思うので、見えなくなったおかげで見えていた時よりもおしゃれになれたと言っていいかもしれない。というかなっている。間違いなく。
銀座オジサンともよく話すことだが、僕は「パラアスリート」という言葉に責任を持たなくてはいけないと思っている。障がい者であってもアスリートである以上、やっぱりカッコよくなきゃいけないよなって。生まれ持ったものとか年齢とかはどうしようもないけど、努力でどうにかできることについては最善を尽くしているつもりだ。
おかげで最近、もう結構いい歳なのに見た目を褒めてもらえることが増えている。お世辞だろうなって思いつつも、やっぱり嬉しい。
でも、しばしばちょっと引っかかる褒められ方もある。
ウチューさんて服とか見た目が普通すぎて障がい者ってわかりませんよね♪
(身体の障がいじゃねえんだからタリメエだろゴルァ!)
宇宙さんって障がいがあるのにおしゃれでカッコいいですよね♪
(”あるのに”ってなんだよコゴルァ!)
現実にはもちろん、めちゃめちゃイケてる障がい者もいれば、めちゃめちゃイケてない健常者もいるわけで、わざわざ障がいの有無と絡める必要はないんだけど、障がいによっては見た目を整えるのが難しい場合もあるので、そういう言われ方も仕方ないと思う面もある。
いつか、「障がい者っておしゃれなイメージあるよね♪」ぐらいのことを言わせられるようにブラインド・ファッショニスタとして、おしゃれイケメンモテモテアスリートを目指していきたいと思っている。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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