あいらぶエッセイ⑨「子どもの力」
幼い頃、両親のことが大好きだった。歳がいってから結婚し、僕ら兄弟が生まれ、可愛くてしかたなかったのか、父親は、いつも僕らへ柔らかな笑みを浮かべていた。寡黙で、威厳もあった。僕は夕方5時半を過ぎると、二階のベランダ側の掃き出し窓のそばに立ち、オートバイのスーパーカブに乗って仕事から帰宅する父親が道の遠くから現れるのを、よく楽しみに待っていた。母親へはわがままをよく言い、ケンカも頻繁にしたが、夜、寝床に就くときには、「お父さんも好きだけど、お母さんも好き」と伝えるなどしていた。