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「素材」としてのハゼノキの現在地

みなさんこんばんは。先日久々に東京に行ってきました。目的は「日本工芸週間」への出席。3年前から工芸品を素材の視点から考えるため開催されているフォーラムです。

日々私たちが目にする工芸品は、多くの方や工程を経て完成した製品あるいは作品ですが、その出発点となる「素材」を意識することはあまりないのではないでしょうか。漆器1つでも木地はどの地域のどんな種類の木が使われているのか?漆は岩手県、あるいは茨城県産?それとも福島県でしょうか。

比較的日の当たっている食品でさえ、出発点となる「素材」へアクセスするのはなかなか難しかったりするのが現状です。ましては日用品として使用するモノは本当に見えづらく、あるいは販売している方や作り手さんでさえ知らないこともあります。あえてそんな「素材」に光をあてるとても意義のあるフォーラムでもあります。


■特用林産物としてのハゼノキ(木蝋)

最初にオフィシャルのデータを紹介します。毎年林野庁が集計している特用林産物としてのハゼノキ(木蝋)の現状です。令和5年の木蝋の生産量とハゼノキの植樹面積がこちらになります(数量が無い都道府県は消しています)。あれ、鹿児島は?と思われる方もいるかもしれませんが、実は鹿児島県は「木蝋」を特用林産物として登録していないため、統計上のデータには出てきません。

令和5年度木蝋生産量・作付け面積(抜粋)

ついでにあれ?福岡の面積が0??佐賀と宮崎にもたくさんあったような???とう思方もいらっしゃるかと思いますが、植樹面積に関しては個人で所有されている数字は統計上出てこず、自治体からの申請の無い植樹地に関しても数字として見えないのが現状です。そのため統計データは木蝋の生産量で現在地を計る指標としてみるのが適当な状態です。

『全国で22.5t』

これが特用林産物としてのハゼノキの現在地です。よく比較される洋ロウソクの原料であるパラフィンワックスの日本での生成量が年間約765万tとなるので、もはや誤差の範囲にすら入らない生産量の差があることがわかります。「素材としてはもはや比較の対象ではない」この点は今後木蝋を広げていくうえで重要になってきそうです。

特用林産物全体の生産統計資料はこちらで見ることができます。e-Statは何気に色々見れるので数字を調査するときに便利です。

■材木としてのハゼノキ(大隅半島)

つづいて木材です。木材はもはやデータすら存在しないレベルになっています。私の住む大隅半島でも木材市場はあるのですが、数か月に1本でればよい方です。原因はそもそも木材として育てていないという点もありますが、自然木の特有の曲がった木のため、製材料が難しくほとんどが、ほとんどがチップ用として流通されていくこと、そして、漆科樹木特有の水分含有量が非常に多く、乾かすのに時間がかかるうえ、曲がりが強いため建具や木工品の素材としても避けられる傾向にあります。

土場に集まったハゼノキ

それでも1部は国の伝統工芸にも指定されている都城大弓の材料としてハゼノキは使われおり、数少ない市場に流通したまっすぐな材が使われています。その都城大弓でさえも弓材としてハゼノキを使用するには短くても10年以上、最長で30年乾燥させ使用します。実は現在の木材は30年後の材料調達をしている状態であるため、今後数がすくなっていく製材可能な木材をどうやって確保していくかも課題です。

弓の素材としてのハゼノキの調達は重要な要素と考えていますが、先ほどのパラフィンワックスと同じように別の比較ではなく別の要素で「素材」としとしての在り方をみつけていく必要があります。

ということで今日は「素材」としてのハゼノキをみてみました!視点と用途の変換。これからのテーマですね。

こちらで製材しているハゼノキ。まっすぐなところが短い。。。


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