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滔々咄〜ビリギャル著者・坪田信貴 カジサックとFANYを作った男の話

石井玄さんがパーソナリティーを務める「滔々咄」#36 坪田信貴さん出演・後編を聴きました。

前編の「間違って二人の外国人女性を映画に誘ったときの出来事をきっかけに一念発起してニュージーランドに留学した話」も面白かったのですが、後編で、吉本興業の社外取締役としてデジタル化に取り組んだエピソードが面白かったです。

吉本興業のデジタル化FANY)をビリギャルで有名な坪田さんがやったというのは知りませんでした。そもそも僕の中では、映画・書籍の印象で坪田さんは塾の先生で落ちこぼれた生徒の成績を伸ばしてくれる…というイメージだったので、塾以外もやっていたことに、まず驚きました。というか今は塾で教えていないようです。会社を作って事業を育てては他者に売っているそうです。(連続起業家ということでしょうか)

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ビリギャルきっかけで各メディアに引っ張りだこになった坪田さん。そこで共演したことで芸能界とも接点が生まれて、キングコング西野さんの紹介で吉本興業 大崎元会長と出会い、吉本興業のデジタル化を進めるべく社外取締役にオファーされたそうです。


坪田さんがすごいなと思ったのは、大崎元会長が吉本のデジタル化でやりたいこととして言った「Googleになれたらええなぁ」を聞いて、すぐに「デジタルのプラットフォームになりたい」ということだと理解できたことです。現在のGoogleの規模の巨大さを考えると、一朝一夕になれるものでもなく、偉い人がまた適当なこと言っているなぁーと流しがちな気がしますが、大真面目に「Googleいいですねぇ、アジアのGoogleになりましょう」と賛同していける人は中々いないと思います。(*大崎元会長の中でもプラットフォームという言葉にまでは具体的になっていなかったと思います)。
そして、プラットフォームを作るぞとなって、いきなりシステムに手を出すのではなくて「プラットフォームが成功するかしないかはいかに良いコンテンツを乗せられるか次第」ということで、デジタルコンテンツ作り(デジタルで活躍する芸人づくり)に着手したところです。

で、吉本興業所属芸人のYouTubeコンテンツ作りに着手。最初は、吉本興業のアドバンテージを最大限生かすために所属するトップランクの人気芸人でのYouTubeチャンネルを提案したそうですが、リスクを嫌がっている雰囲気を察すると、すぐにBプランに移行。最初のYouTubeチャンネルが成功した後、あとに続く芸人が出てきやすいようにと、ただ養成所を出たばかりのど新人でやるのではなくて「知名度があって、最近少しテレビ出演は減っている芸人」を「YouTubeで復活させる」という独自の物差しとストーリーで芸人をセレクト。1つ成功する前から成功した後の2のことも考えている、コンテンツが生まれ続ける良いサイクルを作ることを最初から考えていたのは、すごいなと思います。
最終的には、吉本入りのきっかけにもなったキングコング西野さんの相方の梶原さんでYouTube開始。

カジサックって、ビリギャルの人(坪田さん)が仕掛け人だったのか!

全然知らなかった。

しかし、調べてみたら既に、以前にそんな話も出ていたようです。
しかもTOKYO FMで。

あと、ちゃんと活動開始タイミングから告知されている。

知っている人は知っている話ということだと思うのですが、世間一般的な認知はカジサックさんが芸人YouTuberのフロンティア…というところまでのように思います。その仕掛人がビリギャルの人というところまでは知られていないように思います。

ドクター中松さんが、バラエティな人に見えて実はあれもこれも発明していました的な、あれもこれも実は坪田さんが仕掛け人でした・・・みたいなこともありそうです。

話を本線に戻します。

吉本のデジタル化については、カジサックさんが成功して、芸人が続々YouTubeに参入する流れを作りつつ、デジタルプラットフォーム、後のFANYに着手。

僕はお笑いに疎いのでFANYをちゃんと知らなかったのですが、石井さん曰くお笑い界において「すごい」らしいです。

吉本興業の開発した仕組みですが、吉本興業以外の事務所に所属している芸人さんのライブのチケットも販売しているとのこと。まさにお笑い界のGoogle 。全てのお笑いがそこにある…状態…らしい。

僕はこのFANYを作るにあたっての坪田さんのプロジェクトの進め方が自分の考えていたことと符合していて、完全同意というか自分の考え、やっていることへの自信にもなりました。会社の中で何か新規事業をやろうとしている人にはとても参考になる話が色々ありました。

(1)計画を進める上で必要な「予算」と「人事」の権限を最初に持つ。

かなり巨額な予算を最初から承認してもらっていたそうですが、理由は、デジタルに対する投資を成功させるためには失敗をする可能性の高いたくさんの挑戦をしていく必要があるけど、何回か失敗して赤字が増えていくと、ただでさえよくわからないデジタル投資に対して、吉本興業の役員たちが徐々に腰が引けていってプロジェクトが頓挫するだろうと予想したからだそうです。そうならないように最初から必要な予算(巨額)を大崎元会長に承認してもらったそうです。

これは、どこの会社でもそうで、スモールスタートと言って中途半端な予算で立ち上げると、小さな失敗をいくつか重ねただけで、プロジェクト撤退の判断になりがちではあります。(それっぽく将来を悪く予想して言うことはいくらでもできるので)

僕もコンテンツビジネスをやりたいと思った時に、わかっていない人に(従来のラジオ局の経験の通用する領域ではないと思ったので)トライ&エラーにいちいち口をだされて停滞するのを回避したくて5000万円の資本金を預かって自分が代表権を持つ会社にして始めました。
とはいえ、むやみに権限を渡した方がいいんだ主義になると、本当に意味のない失敗不可避のプロジェクトに巨額の予算を預けてしまう可能性もあるので、結局「誰に」その権限を預けるかが重要で、その目利きが経営者は求められると思います。(大崎元会長は1回の会食で坪田さんは任せられると判断されたわけですが、そこがやはり経営者として優れていたのだと思います。)

(2)顧客との接点となるIDにこだわる。(吉本ID→FANY ID)

坪田さんが参画したタイミングでは、吉本興業の中でIDを特に重視するような雰囲気はなかったそうです。坪田さん的には「デジタルで一番重要なことは顧客との接点をデジタルでどれぐらい持てるか」。その顧客を管理、捕捉していくためにIDが最重要と考えて、1000万ID獲得を目指してFANYを推進されたそうです。

僕も今、ラジオビジネスにおいて、番組放送以外にもリスナー向けにデータ把握が可能なデジタル経由で多角的なサービスを行っていくことで、リスナーとの接点を増やしつつ、それによってラジオメディアとして、ラジオコンテンツとしての価値を上げられるのではないかと考えています。
匿名性は担保しつつ、リスナーの価値を証明(広告媒体としての価値)、リスナーに向けて付加価値を提供していく(ex.レコメンデーション、インセンティブ付与)には、IDを付与して、そのIDを使ってデータを蓄積し活用していく(=CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)を構築し活用していく)ことが必要だと考えているので、坪田さんのID重要という考えがよく理解できました。


吉本興業のデジタル化の成功において肝になったのは
①当事者員意識のある外部プロの存在②吉本興業社内の優秀なリソースが同じ方向を向いてしっかり組み合えたことだと思います。

以前に書きましたが…→<参考>リピット・ノスターモデル…新規事業(変革の実現)の成功のためには「ビジョン」「スキル」「インセンティブ」「リソース」「アクションプラン」が必要です。

しっかり組み合えた要因としては
(1)吉本興業最大の権力者である大崎元会長がコミットしたこと
(2)プロの坪田さんが本気でデジタル化実現に向けてのめり込んだこと
これが、吉本興業社内の人を吉本のデジタル化を達成しようという方向に向かわせたのだと思います。

ただ知見・知識があるだけの人が言うことは、長い歴史や成功体験があり、プライドの高い会社の人間を動かせないのですが、「この人、社外の人なのに、なんでここまでしてくれるんだろう」と思うような動きに触れると、やはり人間誰しも心をほだされて社員である自分も頑張ろうと思うものです。(さらに加えて、今回の滔々話聞いててもわかりますが、坪田さんの話し方が上手!緩急自在!このコミュニケーション能力の高さがたくさんの人が頑張る空気、流れを作ったのだと思います。見せる姿勢+言語としてちゃんと理解させる力)

なので単純に専門知識、高い能力があるだけではなくて、その会社の人間と同じマインドで動いてくれる当事者意識のあるプロであるということが大事なのだと思います。

ラジオも成長していくためには、ラジオに対して当事者意識のあるプロと組んでいく必要があるのではと思います。

とりあえず、まだ、僕の中では「ビリギャル・坪田塾(ニュージーランド留学(英語勉強))」と「吉本興業デジタル化成功」の間の坪田さん情報が抜けているので、そもそも、どこでそんなにデジタルに関する知見を坪田さんが得たのかわからなかったので、また「滔々話」に出ていただいて話が聞ければよいなと思っています。(ただ一つ、予想するのは、坪田さんのようなタイプの人からすると、自分で英語を勉強して習得するのも、人に勉強を理解させるのも、YouTubeで人気番組を作るのも、デジタルブラットフォームを作るのも、同じことなのかもしれないなと思っています。ただ原因を調べて解決していくだけ・・・的な1つのやり方だけで全部こなしているとか。だったら、もう万能の人だなと思います。)

<坪田さん吉本デジタル化事例 成功ポイントまとめ>

  • 当事者意識のある優秀なプロを経営者が連れてくる

  • 新規プロジェクトの推進担当には人事と予算の大きな権限を付与(経営者のコミットが必要)

  • 先を読む

  • 投資は、「何に(どんな事業に)」ベットするか(賭けるか)」ではなくて、「誰に」ベットするか

  • プラットフォームの成功は、いかに良いコンテンツを乗せられるかにかかっている

  • デジタル化とは顧客との接点をデジタルでどれぐらいたくさんもてるかということ(IDが重要)


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