【視聴感想】ReHacQ 歴史小説家 今村翔吾VS高橋弘樹〜物語の作り方〜ACジャパンのCMから作る歴史時代小説
今回の「視聴感想」はReHacQ 歴史・時代小説作家「今村翔吾」さんゲスト回。
歴史小説と時代小説の違い、歴史とか、ダンス教室の先生から作家になるまでの経緯とか、書店経営の話も面白かったのですが、僕的に一番興味深かったのは今村さんの物語の生み出し方でした。
まず、今村さんは昔から歴史小説をたくさん読んできて(中高生時代年間120冊読破)さらに歴史研究書も読んできたので頭の中に歴史データベースがあるそうです。(すごい)
そして、普通の歴史小説作家は「テーマ」(題材)を史料(歴史資料)から見つけるのですが、今村さんは「AC のCM」から見つけます。
僕は元々放送局の人間なのでAC(公益社団法人ACジャパン)はお馴染みですが、ACは社会の啓蒙・啓発を目的としていて、人を楽しませるエンタメ・娯楽とは真逆にあるように思っていたのですが、今村さんは歴史・時代小説を書く上で、読者に読んでもらうためには、今の時代のコトとして考える(「自分に返す」)ことができることが大事だと考えていて、その点、ACジャパンのCMを見ると、今の時代が抱えている問題が端的にわかるということでした。(確かに!)
そして、テーマの選定基準は「昔から変わらないもの」「大きく変わったもの」のいずれかだそうです。
そこで見つけた「テーマ」について、自分の頭の中の歴史データベースを検索して、そのテーマを書くのに適した時代、登場人物を見つけ出すそうです。
具体例として今村さん作「童の神」で言うと…
(1)AC:ex.インバウンドに向けた地方への啓蒙CM(「言語よりも思いやり」)→その裏側に外国人への恐怖感・抵抗感、心の垣根の問題の存在を感知
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(2)自分と違う人間への「差別」の問題
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(3)自分の頭の中の歴史データベースから「差別」の根源がどこにあるかざーっと探す
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(4)「朝廷」ができて、それに従わない人たち(異民族)を「鬼」「土蜘蛛」「みしはせ」など化け物として扱い「討伐」した時代があった→これが差別の一番最初では?
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(5)「平安時代の「鬼」と呼ばれた人の物語を書こう!」
となるそうです。
これで骨の部分ができるわけですが、そこに今村さんが読んできた数多の歴史・時代小説等で得てきた歴史知識(「鬼」の語源(「隠」(オヌ))、「童」の語源は「奴隷」、都の外で人が穴掘って暮らしている状況等)や、面白がらせる演出(漫画的演出(ジョジョ、NARUTO、ドラゴンボール等)、配信動画的演出(3ページに1回)で肉付けしていくことで他にないような魅力的な作品になるのだろうと思いました。
僕は、今まで今村さんの作品を読んだことがなかったのですが今回の動画を見て読んでみたくなりました。まずは、NETFLIXに映像化させようと思って書いたという「イクサガミ」を読んでみようと思います。
ちなみに、ACジャパンの2024年全国キャンペーンのテーマ(A)は「不寛容な時代~エンパシーをヒントに」です。
ちなみにテーマ(B)は「防災」です。
ゼロからイチを生み出すのは簡単ではないですが、自分にとって当たり前、当然のこととして日々見逃しているものの中に創作のテーマがあるとすると、エンタメのヒントは身の回りにたくさんあるのかもしれません。
あと、やはり、自分が好きでちゃんと興味を持っていることが大事だなと思いました。(今村さんは歴史時代小説しか読まないほどの歴史好き)
テーマをACから見つけることは「気付き」さえすれば誰でも真似できるのかもしれませんが、それを物語に昇華させるためには、これまでの人生で詰め込んできた知識や強烈な興味関心が必要です。今村さんを真似ようとして歴史時代小説をこれから急に自分の中にインストールしようと思っても膨大な時間が必要だし、好きじゃないと続けられません。何かを作ろうするなら、まず自分が何が好きか、興味を持っているのかちゃんと把握する必要があります。逆にそれさえあれば、それに掛け算するものを見つければ大きな物語が書けるのではと思います。
自分の物語創出の武器は何か?僕はプロデューサーなので全てを自分で充足する必要はないので、どういう人を連れて来れば面白い物語が作れるのかも考えていきたいと思います。
<まとめ:物語の生み出し方〜レシピ〜>
・歴史時代小説だけど昔の話を書くのではなく今の時代に通じる話を書く(実は現代劇を書いている)
・そのために今、生きている人の「問題、課題」をテーマに「材料」(設定)を探す
・その「材料」を自分の「好き・関心」で料理
今回の動画ですが物語の作り方以外にも、
「歴史・時代小説作家の第7世代」「新規層への安心感・既存層への斬新感」「コロンブスの卵」「小説でしかできない演出」「AI時代の小説の生き残り方」「SNSとの相性」などなど興味津々な話が盛りだくさんなので、小説家ではななくても、物語作りを志す人にはヒントになる話がたくさん聴ける回です。
<後編>