アジアを旅したときの話②
いきなりだけど、盛り上がりマックスなホーチミンでのお話をしたいと思います。
旅の途中、僕は人が恋しくなっていきました。それぞれの地で優しくしてくれる人はたくさんいました。ゆえに別れが寂しくもなる。タイでは宿がない僕を4日間も泊めてくれたとある家族と別れる時に大人気なくワンワン泣きました。
出会いと別れ。光と闇。すべては表裏一体となり絶妙なバランスを保ちつつ、あらゆるものに価値を持たせます。そうして自身で得た体験を人はこれでもかというほど最大限に美化してゆく生き物。
その最も美化された風景が僕の中ではホーチミン。いろんな『初めて』を体験した思い出の地。興味あるかどうかは別として話を進めたいと思います。
ビジネスマン
まずはとある起業家の話しなければならないでしょう。僕は町中にあるいわば地元の常連客が集うようなこじんまりとしたBarで一人の男性に声をかけられました。
『となりいいかい?』
怪しいの来たーーーーって思いました笑
当時まだ海外旅行なんてほとんど経験のない島国っ子だった(今もですが)ので、まずは全力で怪しんでみました。
すると当然向こうもその雰囲気を察したようで、いきなりなんだか気まずい雰囲気に。ですがそこはさすがとでも言いましょうか、許可したわけでもないのに黙って隣に座り、特に何かを話すわけでもなくお互いに相手を意識しながらしばらく時に身を任せます。
しばらくして彼が再び僕に話しかけてきました。『あなたは日本人ですか?』って。
何の準備もしていなかった僕はとっさにそうですって答えてしまいました。すると彼がこう言いました。
『おじいちゃんと同じだ!』
後からわかったことなのですが、彼の祖父は戦争でベトナムに残された日本の兵士だったのです。どうやら戦時中に捕虜になり、逃げ出してホーチミンに流れ着いたのだとか。マンガみたいな話やなぁって話半分で聞いていましたが、知らない多くの文化や事実に触れることで徐々に心のドアは開放されていきました。
いちばん嬉しかったのは、日本に縁のある人に出会えて安心したことでしょう。そのとき僕も日本を離れて1ヶ月、なんやかんやで疲弊していたのだと思います。一方で新たな発見もありました。彼と話しただけでは体の疲れが回復するわけでもないはずが、体が軽くなっていきました。知らず知らず心に溜めたストレスが浄化されたことで肉体の疲労を感じなくさせたのでしょう。心って大切なんだなって感じました。
つづく