共感とエゴが錯交するYouTube
男女が夜明けを眺めるシーン。
この画像からどんな”思い”を想像したでしょうか。
「君の名は」で知られる新海誠監督のインタビューにも記載されていましたが、この映画で伝えたかったことは
運命の人はいる
ということだそうです。
男女が入れ替わるというシチュエーションがピックアップされがちですが、監督からするとそれはこれを伝えるための一つの装置に過ぎないのだとか。
ではなぜ、このような装置を取り入れたのか?という問いに対して
「若者に伝わるものを作りたいと思っていた。なので、途中で飽きないよう常に笑いやコミカルな要素を意識した。」といった思いを語っています。
企業の作る失敗作
スマホやチャットアプリでのやり取りなど、現代風の描写が頻出する同作品。まさに現代に共感するポイントが多く詰め込まれています。
商品・サービス・それらを告知するためのCMなど、企業が企てるあらゆるものには私たち人間の心理が至る所に散りばめられているものです。
成功している商品やサービスを思い返してみると、そのプロモーションが実に巧みであることがわかります。
それはYouTubeなど動画コンテンツにおいても同じことが言えるのです。
私は現在、企業YouTubeチャンネル運営をお手伝いをさせていただいていますが、ことYouTubeにおいても同じことが言えると考えています。
あれだけ素晴らしいプロダクトを提供している〇〇社なのに、YouTubeになるとどうしてそんなにつまらないものが作れてしまうのだろうとか、逆に世間一般ではそんなに名の知れた企業ではないのに、ここのYouTubeチャンネルは本当に面白い、といった逆転現象が起こってしまうのが今のYouTubeです。
理由は色々ありますが、概ねうまくいっていないYouTubeチャンネルに共通して言えることは
共感が圧倒的に足りていない
ということかもしれません。
自分たちが好きなように発信することができるプラットフォームを持つことができる、そんな理由でYouTubeを開設する企業様が増えてきました。
ですが、ここで大切なことは、これはYouTubeのキャッチコピーであって、YouTubeを利用してもらうためにYouTube(google)が私たちに浸透させたい思いであり、私たちがYouTubeを開設する理由ではない、ということです。
これを除くと…多くの企業様がYouTubeを開設する理由が
みんな(他の企業)やってるから…
が圧倒的に多いです。
なんじゃそりゃ!?
ってよく思います。笑
あぁ…こんなところにも悲しき日本人の洗脳マインドが…私たちの洗脳は相当根深いものなのですね、GHQやってくれたな…っていつも思ってしまいます。笑
共感してもらいたいことって何ですか?
一生懸命に商品やサービスの説明をしている人って、ネットでもリアルでも
「すごいでしょ?」
って言いたいだけです。
なのでそれを聞かされた私たちは嫌な気分になることが多いですよね。
むしろ私たちが欲しいのは
その良い商品を使えば私はどう変われるのかとか、自分の悩みをどう解決できるのかとかといった内容かもしれません。
もしくは企業がどんな思いでそのサービスに取り組んでいるのかといった部分に共感ポイントがあるのかもしれません。
視聴者にとって私ごとにならないような内容は応援してもらいにくいですし、スルーされる可能性が極めて高いですから。
原則、人が他人に共感するのはその人の思いに対してです。なので、新しい商品を発表する際には「私たちは〜な思いで、この商品を作りました」といった内容でアプローチすることが多いです。
同様に、企業YouTubeのコンテンツもそれに沿った構成で動画を制作していく必要があります。特に、企業の名前を出してしまった後というのは広告観念の方が圧倒的に強くなります(何か買わされる、売られるといった潜在意識への防衛本能)。
なので、企業チャンネルというのは実は応援してもらうファンを増やすためのアプローチを続けた方が結果として伸びていったり、長期的に視聴者の離脱率を抑えることに繋がる、といった分析結果が一定数あったりします。
「お役立ちコンテンツ」と呼ばれるもののほとんどは役に立たないことが多いです。ですが「お客様のためにこれだけのものをご用意しています」といった誠意は伝わる場合がほとんどです。
目的から考えて、結果それで良いのです。YouTubeの収益を最優先目的として運営されている企業はほとんどいません(すべては本業のために)ので、自社のあらゆるもの・ことを伝える、アピールする内容であればそれでいいわけですから。
ただ、アピールの仕方や立て付けにはくれぐれも注意してくださいね、というだけのお話です。
前提条件:楽しむこと
企業YouTubeを開設すると、実際にこんな意見が多く寄せられます。
・早く結果を出したい
・そこから売上に繋げたい
・再生回数が少ないのは恥ずかしい
これら全て企業(もしくは運営している人)のエゴです。
1万人のフォロワーよりも100人のコアなファンを、と言われる時代において、1日でも早くこの概念にシフトした企業が成功し、結果的に多くのユーザーを獲得することができているのが事実です。
登録者も高評価(いいね)も、何なら案件としてのステマでさえも全てお金で変えてしまうこの時代において、自社のサービスになった途端に視聴者がまるでそのことに気がついていないかのような振る舞いをしてしまう方が非常に多いです。
YouTube上での案件なんて視聴者にとってはもはや周知の事実…これだけ色んなYouTuberが炎上騒ぎを繰り返しているのですから気がつかない方が不思議です。
だからこそ逆に堂々と案件と宣言しているものや、本当にわからないような演出をしているものの方がウケているのも確かです。
ある人気YouTuberの案件動画のコメントに以下のようなものがありました。
・自然体すぎて案件だと気がつかなかった…そこが逆に高評価
・案件なのに自分らしさ貫いてる〇〇ちゃんが本当に好き!
もはやYouTubeのコンテンツさえも無意識に企業が後ろに潜んでいることを視聴者が本能的に察知してしまう時代。良く見せたい、という企業の意図はとても理解できますが、結果的に逆効果であるということをまず大前提として理解した方が良いでしょう。
個人・法人問わず、最後は自分たちが楽しんでいる人、楽しみ続けている人たちが人気を集めるのがネットの世界です。
やり始めた時から成果を求めることも大切ですが、それを追うのがいつしか目的になってしまう…そんな地獄絵図が企業YouTubeチャンネルの今後の大きな課題であると言えるでしょう。
そういった観点から、今後はもっと「顔出し・声出しで堂々と自社についてPRすることができる人を採用します」なんて企業の需要が高まっていくかもしれません。
自分を前に立たせることが全体的に苦手な日本人。このような文化の変化は若い世代を中心にこれからもますますアップデートされていくことでしょう。
コンテンツを作る・企てる側の立場の人間として、そんなワクワクに満ちた世界が訪れることをさりげなく期待しています。
今回は大好き&リスペクトしている新海誠監督の「君の名は。」を活用してnoteを書かせていただきました。
最後まで読んでくれた方、本当にありがとうございます!