偶然の出来事 あれこれ
1 飛行機内で偶然
ある年のクリスマス休暇に、オーストリアのウィーンに家族で行くことにした。休暇に入る前日に、職場の隣の席の人とあいさつを交わし、「それでは良いクリスマスを」と言って別れた。
その同僚は、私より少し年上の親切な女性で、私が転勤して間もない頃、この職場のことを丁寧に教えてくれました。
さて、次の日、オーストリア航空のウィーン往きの直行便に乗り込むと、なんとその同僚の女性がすぐ近くの座席に乗り合わせていたのである。職場では私も彼女も、休暇中にウィーンに行くことなどは全く話題にしたこともありませんでした。
彼女は、ご主人とスイスでトレッキング旅行、私たちはウィーン観光でした。残念ながら、帰りのフライトは一緒ではありませんでした。
私たちの職場では、休暇中に海外旅行することは問題ないのですが、上司に届を出すルールになっていましたが、私は、この旅行の届を出していませんでした。そのため、機内で偶然会ったことは職場では話題にしないでください、と彼女にお願いしておきました。
彼女は、真面目な方なので約束通り、ウィーン行きの飛行機で一緒になったことは、秘密にしてくれました。もし私が彼女の立場だったら、職場の誰かに話したい気持ちになってしまうような気がします。
「ネ、ここだけの話だけどさ〜」
私は絶対、こんなことは言わない、という自信はないですね。
2 ユースホステルの偶然
学生の時に、北海道周遊券を使い1人で北海道を貧乏旅行をして回った。宿はユースホステルである。
夕張近くのユースホステルに泊まったときのことである。お風呂に入ると、他には誰もいなかった。すると、1人の男性が入って来た。私と同じ学生のように見えたので、どこから来たのかと尋ねた。私と同じ東京都内の学生だということがわかり、出身地などを聞いて話が盛り上がった。
彼は静岡県浜松市の出身とのこと。私には大学の同級生で、浜松出身の親友がいたので、彼の話をすると同じ高校の出身でしかも同学年だと分かり、私の親友と、風呂に一緒に入った男は友だち同士だということもわかった。その二人が、同じ大学を受験したこともあったという。
後日、私の親友に聞いてみると、彼とは同じクラスになったこともあったという。二人とも勉強もスポーツも頑張っていて、ライバル同士のような、友だちのような、存在だったという。その後、私を含めて三人で飲みに行ったこともあった。
その友だちの友だちは、私が推測するに、一流企業の役員にまで出世して、今は顧問でもやっているのではないかと思う。この推測が当たっているか、今度親友に会った時に聞いてみようと思う。
3 神宮外苑の偶然
その浜松出身の親友と、学生時代に東京の神宮外苑を散歩していたときのことである。季節はちょうど秋でイチョウの紅葉が見頃だったので、カメラ(もちろん銀塩カメラ)を持って彼とイチョウ並木を散歩した。
するとイチョウ並木の中ほどで、写真撮影をしている集団がいた。その集団の中心に椅子に座った若くて綺麗な女性がいた。よく見ると、当時の人気アイドルの柏原芳恵さんでした。
私は、思わず持っていたカメラを彼女に向けてシャッターを切った。その時、彼女は私のカメラに向かって、にっこり微笑んでくれた。私はありがとうございます、と言って写真を2、3枚撮っただけで、その場を離れた。
今の時代では、勝手に芸能人の写真を撮るなどもってのほかであろうが、当時(1980年頃)は撮影スタッフからは、何のストップもかからなかった。おそらくファンサービスの一つと捉えていたのだろう。
そのフィルムを現像してみると、彼女の笑顔がバッチリ写っていた。男友だち何人かに写真を自慢して見せると、みんなに焼き増ししてくれと言われて、柏原芳恵さんの生写真をみんなに配って回った。
友だちに配った写真を見て、さらに欲しいという同級生が増えていった。女子でも欲しいという学生が何人かいた。
柏原芳恵さんはファッション雑誌の撮影中だったので、カメラを向けられて反射的に微笑んだのだろう。
彼女の笑顔と、黄金色のイチョウ並木の思い出です。
4 映画館の偶然
私は20歳代の一時期、映画を年間150本余り見ていたことがありました。話題の新作は、封切り日に見ることもよくありました。
ケビン・コズナー主演の「ダンス・ウィズ・ウルブス」を丸の内ピカデリーに見に行った時のことです。
映画が終わりロビーに人がどっと出てきた時、私は人混みの中で、ある人にぶつかってしまったのです。思わず、すいませんと謝った相手は、なんと映画解説者の淀川長治さんでした。
彼はかなり身長が低い人だということが、その時わかりました。多くの人混みの中で、私は人混みの中で遠くを見ていたのか、彼の姿がまったく視界に入りませんでした。
彼は少しよろめいたけど、倒れなかったので、ことなきを得ました。私がぶつかったにもかかわらず、テレビでお馴染みの笑顔を私に返してくれました。淀長さん、本当にごめんなさい!