奇跡の理不尽ゲーム、地球防衛軍
地球防衛軍という、なかなか癖のあるゲームを紹介させて欲しい。
バラエティ豊かな理不尽
グラフィックが2000年代
7,000円以上のフルプライスで買って、いざ起動してみるとコレである。2000年代レベルのグラフィック、B級映画のような大味なBGM。訓練されていないプレイヤーにしてみれば、まず騙されたと思うだろう。
実際のプレイも、こんな調子だ。自分の何倍も大きいアリ, クモ, カエルが主な敵だ。作中では "侵略性外来生物α" など正式名称でやりとりされているが、まず敵キャラクター名を憶えられない。プレイヤーは見た目通り "黒アリ" としか呼ばない。
このシリーズは、もともと2,000円で売られていたゲームだ。一作目は『SIMPLE2000シリーズ Vol.31 THE 地球防衛軍』。その頃からは大してデザインが変わっていないのだ…
ただこれは、意図的にシンプルにデザインされているのかもしれない。インタビューでは次のように語られている。
ステージ難易度の上げかたが雑
このような敵が大量に襲ってくるので、プレイヤーたち少数の歩兵でなんとか撃退するゲームなのだが、ステージ難易度の上げかたも実にシンプルである。
敵の数を増やす
攻撃力・体力を強くした色違いの敵を登場させる
基本的にはこの2つだけである。これで100ミッション以上を持たせている。ステージのバリエーションは少ないし、敵の攻撃のバリエーションも多くない。
(長く遊んでいると分かるのだが、実はレベルデザインがかなり絶妙にできている。味方と交互にダウンして命をつなぎながらギリギリクリアできるミッションも多い)
さらに、最新作の地球防衛軍6は "ループもの" である。これで使いまわしの必然性が与えられてしまった。
処理落ちする
難易度の底上げのために敵の大量投入を行うものだから、ゲームが処理落ちする。あのグラフィックなのに。
話が入ってこない
ミッションによって出てくる敵が違うので、武器を持ち替えながら備えるのだが、ミッション概要が全くあてにならない。現場の一般兵の感想が書いてあるだけなのだ。
ミッション中も会話のやりとりがあるので、背景にストーリーがあるのはうっすらと分かるが、もちろん地獄のような状態で交戦中なので小難しい話を聞く余裕がない。
上に書いたように、地球防衛軍6のストーリーはタイムトラベルが絡んでおり、かなり凝った話だ。戦闘の片手間に把握できるような単純な状況ではない。(話そのものは、かなり面白いと思うが)
作戦に納得いかない
現場の歩兵を何だと思っているのか分からないが、作戦があまりにも雑すぎる。戦車は援護してくれるのでなく援護対象になるし、援軍を待たずに作戦を開始するし、敗戦濃厚でもデータをとるために倒し切るように言い出すし。
それでも戦うしかない
フルプライスのゲームなのに、前時代的なデザインやグラフィックで、ゲーム内容もストーリーもよく分からない。バラエティ豊かな理不尽が我々を出迎えてくれる。
製品に対する理不尽さもあるし、ゲームのキャラクター (一般兵) が置かれている理不尽さもある。しかし遊ぶ (戦う) しかない。もう買ってしまった (侵略が始まってしまった) のだから。
購入者が感じる理不尽とキャラクターが感じているであろう理不尽が混ざり合う。そしてそれでも立ち向かっていくしかないところが、独特な一体感を産む。
マルチプレイで一緒に戦っているフレンドとのコミュニケーションも面白いし、他の既プレイ者の話を見るだけでも楽しい。みんな等しく理不尽を経験して、なんとか立ち向かった隊員達だからだ。
昨今のゲームはホスピタリティに満ちたものが多い。もちろん、それはそれで面白い。
しかし逆に、これだけ理不尽の演出に振り切ったゲームは貴重だと言えよう。いくらでもマイナス要素を列挙できるが、それをみんなで経験して熱烈なファン (EDF隊員) を集めたゲーム、それが地球防衛軍だ。
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