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日曜日のクルーメイト #0092 終わらない夏の告知

アディオス! クルーメイト! 
暑い日々のおかげで、冲方はそろそろ5月になろうかというところです。

みなさま、今年のゴールデンウィークの準備はバッチリですか? 
人は気分次第で時空を意のままに変えられるのです。知ってましたか?

暦(〆切)は、人類が生み出した三大フィクションの一つ。
それは社会を築くうえで不可欠な、膨大な人間が時を一つにし、大勢が集って共に働くシステムを実現させましたが、リモートワークにおいてはメッセージ送信時の記号に過ぎません。

また、異常気象で季節感が喪われる一方の新時代、マイ・シーズンを勝手に設定することも人生を豊かにするすべになるはず。

ゆえに冲方暦では、今は夏なのです。

暑いし。

ちなみに三大フィクションの残り二つは、(来世や死後の世界の設定上なくてはならない概念)と、貨幣(信用)であるという説がありますね。
あと貨幣の根拠は長らく家系というフィクションであったとか。
家系は権利継承の根拠であり、また、貨幣を発行するには未来においても価値が保証されている必要であったことから、最大権力者の血筋がその最たる根拠となったものの、血はすぐに混ざるし、混ざらないと遺伝子の疾患で絶えかねない脆弱な根拠であることが判明したので、やがて選挙が家系に代わる貨幣の価値を保証する根拠となったとかなんとか。

フィクションとはそもそも何であるか、何のために生まれたか、というのは、酔っ払いながら思いを馳せるうち、世の些末なものごとなどすっかり忘れ、すやすや安眠できる素晴らしいテーマですね。

さて。
なんとなく、最後の投稿は先週あたりだった気がしますが、早くも新たな告知が到来しております。

それでは早速見て参りましょう!

アニメ『ばいばい、アース』シーズン2決定!

アニメ『ばいばい、アース』シーズン2ぅーーー!! ヒュー!!

放送は2025年! ほんの少し寝たら来てしまうじゃないですか。あっという間ですね!

今の内に、シーズン1を改めて振り返りたいと思います。

ベルがかわいい&かっこいい!
シアンとドランブイが、両方とも良い大人と悪い大人を兼ね備えてて良い!
キティ・ザ・ナッシングが、ガチでウサギだ! もふもふだ! オールの悪い顔がいいギャップ! 懐中時計と演算のデザインがすごすぎる!
次々に出てくるキャラクターのさばきが上手い! 大変すぎるから何人か減らすのもやむなしでは、と監督にこっそり話しましたが、限られた尺の中で、なんと漏れなく全員登場しています。さすが!嬉しい!
剣楽団のアクション、大変すぎ!
片腕と隻眼のコンビが楽しい! ほんと飲んでばっかだなお前ら!
シェリーがかわいい! 歌がすごい! 吟遊詩人の歌も、この世界で歌われているという説得力があり、不自然さがないのがすごい!
ベルとシェリーはシスターフッドだった!(執筆当時、小説の打合せで出ることなどまずなかった言葉です)
そして我が作品史上、屈指のダメ男であるアドニスの魅力が満載! おう、なんてダメなんだ、と目を覆わんばかりのダメさに目が離せない!
主題歌とエンディングも、キャラクターと世界観を解釈したものでありながら、それぞれ普遍的なテーマとして昇華し独立しており、何の違和感もなく楽しませていただきました。

くそう!
シーズン2はまだか!
次の話が一年後なんてひどいじゃないか!

と。

久々に視聴者・読者の視点に立ち戻らせて頂けたのが、一番の振り返りです。
待つには長い一年ですが、作るにはあっという間どころか瞬殺すぎる期間。その限られた時間の中、今日も尽力しているスタッフに、どうかみなさまのエールを!

シーズン2はまだか!

『十一人の賊軍』重版出来! 映画11/1(金)公開!

いよいよ11/1、『十一人の賊軍』が公開です!

そして映画に先行して出版されるという異例の小説版が、おかげさまで重版出来! 
映画サイドのタイアップ方針の柔軟さは、自分たちが作るものへの自信があるからこそ。
つくづく素晴らしい姿勢と仕事ぶりに、感心させられることしきりです。
とはいえ今はまだ何も話せません。早く映画について語りたい!

少しだけ話してしまうと、『マッドマックス:フュリオサ』で物足りなさを感じた点が、『十一人の賊軍』には全部盛りで入ってましたよ!

大満足! 

11/27 小学館の紙・文芸誌『GOAT』創刊!

GOATという言葉から、みなさまは何を連想したでしょうか?
冲方は、サッカー雑誌を作るのかと思いました。

GOATは、単語としては「山羊」を意味しますが、略語としては「Greatest of All Time」、すなわち「史上最高の選手」の意でもあります。サッカー好きにとっては一般用語です。

紙好きの山羊にちなみ、紙の雑誌として最高峰を目指す――とのこと。
史上最高であれ、という、なかなかハードルの高い名を冠する雑誌に、このたび短編を寄稿致しました。

とはいえ、まだ雑誌のカラーも何も「白紙」の状態。
ここぞとばかりに、思いつくまま好きなように書けたものですから、楽しいことこの上ありません。

世がデジタル全盛へと向かう一方、電子書籍と雑誌のそれぞれの有用性がはっきりしてきた今だからこそ、紙の文芸誌の存在意義を新たに見出す雑誌に育ってほしいもの。

しばらくは季刊的な発行ペースになるのでしょうか。
じっくり時間をかけて短編を寄稿し、納得のいく短編集にまとめるには、個人的には大変ありがたい雑誌なのです。

ぜひ、みなさまの応援がありますことを!

『蒼穹のファフナー』20周年記念!!

『蒼穹のファフナー』20周年を記念したイベントが豊作すぎます。

来月末のパシフコLIVE、配信、YouTube無料公開、尾道コラボ、カフェコラボ、初の「ファフナー展」など、こんなにあるのかとビックリ。
詳細は公式ツイートを御覧あれ。

なお「ファフナー展」のパンフに、能戸さんとの対談が掲載されておりますが、こうして改めて作品を振り返る機会を与えられるというのも、なかなかないことだなあ、と身に染みる思いがします。

『蒼穹のファフナー』とは、自分にとって何だったのか?
と、わざわざ問うのも不自然に感じるくらい、自分の人生の一部でした。

その一部だったものと、こうした記念イベントの賑わいを通して、お別れを告げるのかといえば、そんな気持ちにもなれません。

『蒼穹のファフナー』の世界とそこに生きる人々を、あまりに深く見つめ、その空気や手触りまでも容易に感じ取れるほど没入したわけですから、これからもずっと続いていくとしか思えないのです。

自分たちが作らなくなり、目を向けなくなったあとも、ずっと。

これからも、彼らの人生は続いていきます。
物語の向こう側で、あの世界は常に激動を繰り返し、悲喜こもごもの中で新たに人が生まれ、成長し、結ばれ、別れ、老い衰え、次の世代に受け継がれるものもあれば、忘れ去られたりするものもあるのでしょう。

そうした中で、生者も死者も変わらずそこに居続けるし、我々が知ることのない未来が、たゆまず訪れるのです。

その漠然とした気配を常に感じるからこそ、今回の20周年ののちも、30年、40年と時を重ねるであろう自分は、迷わず次の道を進んでいけるのだと思います。

そのような人生のマイルストーンとなる作品に参加できたことを心から幸福に感じるとともに、全ての関係者、全てのファン、そしてあの世界で生きた・生きる全ての者たちに、感謝を。

あなたは、そこにいますか?

この問いに、胸を張って答える自分でいられることを祈りつつ。

あとがき

2024年は、まるでタイムリープとタイムループとタイムパラドクスがいっぺんに来たような、時空がひっくり返る1年でした。

25年前の小説がアニメになり、若い頃のかなりの時間を費やしたアニメが完結して20周年を迎え、何本も抱えていた小説連載があらかた終わって今後の執筆リストが一新され、これまで正しいと思っていた執筆の信念や業界の常識を総ざらいして見直す時期に突入するという、精神的粒子加速器の中に放り込まれたような日々でした。

精神的にあまりに忙しすぎるせいで、正月と夏のちょっと余裕があった数日の記憶しかないような、宿酔のまま1年が過ぎたような気分です。

これほどまでに意識から時間が消えてなくなるほど、邁進できる何かに恵まれたことこそ感謝すべきで、ということは感謝しかないんです、力はパワーです、という某シンジロウ構文になりかけるほどタイムループなのです。

つきましては、我がクルーメイトたる読者諸氏への多大なる感謝を込めて、今後とも、このうえなく思い入れのあるキャラクターたちが次から次に命を失う物語や、世の中でもとりわけ無視され忘れられたようなテーマや、映像化されるまでに25年もかかる世界観や、陳腐とされてしまって誰もかえりみなくなった感動などを、ためらわず喜び勇んで書いていきたいと思います。

それではみなさま、良いお年をお迎え下さい。

冲方丁でした。


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