アウトロー果つる街『グランドセフトオートV』(2013年のゲーム)
約3500文字。本記事はプレイ動画を多く含みます。
よく来たな、お望月さんだよ。
このところ、数年前に挫折したオープンワールド犯罪アクションゲーム「グランドセフトオートV」に再挑戦している。前回のプレイ時はあまりにも高い自由度に縛られてしまい、まったく本筋を進めることなく「電車に乗り続けて踊りまくる」「タクシー運転手として生涯を過ごす」「犬を追いかけたらネコに噛まれて死ぬ」等の不規則行動をしたままで終わったので、決意を込めた再プレイだった。
物語の概要はこうだ。
虚飾と享楽のソドム《犯罪都市ロスサントス》を舞台に3人の犯罪者が出会い、敵対し、友情を結び、愛を確かめ合う。果てなき欲望のまま明日なき暴走を続けるアウトローの行く末を描く。
また、物語の道中には発作的に自由行動をおこなうサブクエストが挟み込まれる。プレイヤーの手腕によりオープンワールドならではの様々なドラマや文脈が生まれていく。
プレイ時に生まれた文脈のひとつ『運転がめちゃくちゃ下手』が『人身事故の天才』として回収されていく。後に発生した「危険運転をして同乗者を怖がらせろ」というクエストに対しても物凄い説得力を発揮した。
本筋のドラマがめちゃくちゃ面白い
映画やドラマから学んだ手法を駆使しながらも《自動車泥棒》と《強盗》という要素を絞り込んだシナリオで魅せる作風。インタラクティブなドラマ体験をすることができる。
第一部
心療内科に通う金持ちのおっさん《マイケル》は、不肖の息子のトラブルによりレポマン(車両回収業者)の《フランクリン》と出会う。不肖の妻の浮気に怒り心頭のマイケルはフランクリンを巻き込みメキシコギャングの自宅を完全破壊。巨大な借金を背負うが、昔取った杵柄である《強盗》で借金を返済する。
第二部
宝石店への強盗の手並みを見て、死んだはずの親友が生きていることを確信した、殺人鬼の《トレバー》はかつての友情を取り戻すためにロスサントスへ向かう。マイケルと再会したトレバーは、マイケルの不肖の娘が芸能界で受けるセクハラに激怒。マイケルを巻き込んで番組を粉砕する。こうして、三人のアウトローが出会い友情を深めていく。
第三部
友誼を取り戻して絶好調のトレバーは港湾地区での機密取引情報を入手。三人で力を合わせてタンカーを爆破して潜水艇で秘密兵器を奪取するが、戦争勃発の機器を回避するためにブツをあった場所に戻す羽目になる。一方でマイケルは連邦警察《FIB》との司法取引に縛られて手先として働くことになり、これも三人で取り掛かることになる。
第四部
発作的に繰り返されるトレバーの暴走と無理難題をふっかけるFIBとの板挟みにあったうえに家族が去っていった不肖のマイケルは気が滅入る状況に陥っていた。トレバーはマイケルの持ち込んだ仕事をめちゃくちゃにしてメキシコマフィアの妻《パトリシア》を誘拐して新婚生活を送り始める。マイケルはトレバーの破天荒さを「演技」だと罵るが、次第に家族からもFIBからも縛られないアウトロー生活に魅力を感じ始める。一方でフランクリンは資産家の《デビン》と知り合い高級車専門のレポマンとして才能を認められていく。
第五部
アウトローの階段を上り始めるフランクリン、転落する快感を覚え始めたマイケル、自ら地面を這いつくばるトレバー。三人のアウトローの仕事は次第に肥大化していき、ついには連邦金庫や《民間軍事会社》を相手にした命がけのものとなっていく。際限のない明日なき暴走の果つる先とは!?
第六部
「????」現在進行中。
トレバーの恋、メキシコマフィアの刺客、パトリシアとの別離。
降りしきる雨。恋は雨上がりのように。
主な登場人物
GTAVはとにかくキャラクターがどうかしている。分裂気味なトレバーやマイケルと比べて、若者のフランクリンの行動力は気持ちが良いものだ。サブキャラもおかしな人々に満ち溢れており気が休まるところがない。明日には全員死んでいる。アウトローの吹き溜まり、ロスサントス。
マイケル・デサンタ
かつて強盗業界のヤングスターとして頭角を現した男。連邦警察との司法取引により仲間を売り渡して隠棲生活を送っていた。中年の危機と映画的な劇場犯罪への憧れの板挟みにある。外見モデルは『ブレイキングバッド』のウォルター・ホワイト、寂海王。
フランクリン・クリントン
ロスサントス育ちの若きバッドガイ。レポマン(車両回収業者)として鍛えた運転技術とクソ度胸の持ち主で、その才能は数々の大物に認められつつある。正反対のマイケルとトレバーの間で揺れる。外見モデルは野比のび太(アニメ版)
トレバー・フィリップス
親友のマイケルを亡くし(たと思い込み)悲観に暮れてロスサントス郊外で山賊暮らしをする男。彼の経営するTPエンタープライズは国際企業でありありとあらゆる犯罪行為を取り扱う。航空機と暴力の専門家。外見モデルは定まっていないが、いつの間にかキャラクターの方で着崩してしまう。(フランクリンに合わせたのか、水色っぽいことが多い)
タクシー
準レギュラー。道路を通行中に襲撃される。電話で呼び出されて乗っ取られる。巻き込まれて爆発する等の活躍を見せる。
ガルウィング
本編中で最も高性能なスポーツカーのひとつ。フランクリンの趣味によってガルウィングに改造される。
貨物列車
ロスサントストスを周回する貨物列車で一周しても止まることがない。無限の回転を備える。様々な場面でキャラクターの手助けをする。物語の終盤では主役回が増え、たびたび爆破される。
ヨガ講師
「いまヨガって言いました?」(にゅっ)無から出現するヨガパワーの使い手。(たぶん)フランス人のツイ廃。
クレイジーおばさん
主人公達の前に立ちふさがるスポーツに命をかけるクレイジーなおばさん。ものすごい勢いで罵り、悪態をつきながら全力疾走する恐怖の怪人。
山
プレイヤーはそれぞれの理由で山を目指す。そこに山があるからだ。
様々なクエスト・ドライビングイベント
なんだかんだで本作は「グランドセフトオート(自動車泥棒)」である。盗んだ車で走り出すシーンが非常に多い。車両ごとの特性やカラーリングから、車両が持つ「個性・社会性」のようなものを感じることができるようになると思う。特に特徴的なのは車載ラジオの選曲で、持ち主の性格や社会的ステータスが反映されている。(例えば、タクシーを盗むとだいたいメキシカンなEast Los FMが選局されている等、社会的世相が見えてくるようになっている)
ヒッチハイクイベントもある。(返り討ちにした山賊バンに乗り込むやつもどうかと思うぞ)
「洋画」に対する解像度が上がるぞ!
GTAVはアメリカ西部の生活をシミュレートする作品であり、このことで見えてくるものがある。貧富の差、外国人労働者、砂漠に住まう人々、車両ごとの性格、ファッション量販店、トレーラーハウス。様々な要素を得ることで、映画作品を見たときに「あっ!これはGTAで見た場面!」という進研ゼミ効果を得ることができるのではないかと思う。(その逆もたくさんある)
こんなの見たことないぜ!もある。
(だいたい『XXX再起動』とか『X-ミッション』みたいになります)
膨大なサウンドトラック
車に乗り込むと、なんとなく場面に合った音楽が流れているような気がする。あるいは、いわゆるサウンドトラック効果として、印象的な場面に聞いた曲がそのシーンにマッチするように感じられる。制作側の意図的な選曲もあると思うけど、偶然流れていた曲が心に残るような場面が好きだ。
(誘拐してきた)恋人のパトリシアを夫の元へ送り返すためにオープンカーを運転するトレバー。吹き込む大雨のため涙を流しているかは定かではない。
恋人を夫に引き渡し一人でクソッたれのロスサントスへ向けてハンドルを切るトレバーがラジオをつけると『シスコはロックシティ』が流れ出す。
クソッたれシティ!嘘だらけのこの町!
クソッたれシティ!薄っぺらなこの町!
あの薄っぺらくダサい曲が、今日だけは胸にしみる。(この選曲が偶然か仕様かは定かではない)
(その他の楽曲については与一さんの情緒あふれる記事を確認していただきたい)
未来へ
ストーリーモードは、いよいよ終盤が近づいたという感触があり間もなく彼らの旅路にも決着がつくだろう。
本記事で紹介できる内容はプレイ時間に対してはごく一部である。ロスサントスの街並み、砂塵を巻き上げるローバー、波濤とサメ、UFO、無数の要素があるオープンワールドアドベンチャーを映画的に楽しめる作品なので、まだ手を触れたことがないのであれば楽しんで見て欲しい。
ようこそ!ロスサントスへ!!