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「レディ・プレイヤー1」の感想

アイアンジャイアントが俺と同じ速度でこぶしを握ったんだ。嘘じゃない。俺はあの時、たしかにアイアンジャイアントだった。 

『レディプレイヤーワン』すさまじい映画だった。
もはや映画ではなく《体験》であった。
とても一言では表現できない......いや、それは逆に簡単にできる気がする。

「古文書を解読して3つの鍵と秘宝を求めるインディージョーンズのアップデート版」

ほらできた。

でも、この作品にはこれだけに収まらない何かがある。シンプルな神話定型の揺るぎようのないストーリーに尋常ではないレイヤーが重ねられており全方位的に隙なく #お前を燃やす小枝 を集めた映画作品となっている。俺は完全に燃えた。これを「層に届く」という言葉で表現していきたい。

簡易的な感想はこちら。こっから先は長いよ。


"層"をつらぬく巨獣

「層に届く」という言葉がある。(類義語は「層に刺さる」か)

エンターテイメント作品のファン層には多彩なものがあり、恋愛や暴力を好み、友情や青春を求め、世界観やシスティムの攻略を追求し、役者の顔の良さをほめ、仮想現実へ逃避し、欲求承認のためにメモをとり、モチーフやオマージュについて肘で台形を作りながらウェンディーズとかで氷だけになった紙カップを吸いながら語る、Twitterでマウンティングしあう、等々、フアンが作品へ求める要素は数多い。

ファン層/ターゲット層には様々な形があるものの、魔神スピルバーグが乗り込んだレディプレイヤーワンという巨獣ビヒモスはあらゆる層を貫き通したと思う。シンプルな神話定型にこそエンターテインメントの心髄が詰まっているというのはバーフバリにも通底するテーマで逆噴射先生が「お前の遺伝子が知っている話だ」と評したソレを真正面からやる。故にストーリー展開に疑問を持つことなく意外なほどシンプルに複雑で雑多な過剰情報を読み取れてしまう。ヤバイ。

これには個人差があると思う。ハイコンテクスト過ぎて入り口でエンストしたり全力でバックしたりした人もいるだろうけど、少なくとも自分が抱えている層は全て打ち砕かれて心根が露わになり涙を流したことについてはご報告させていただきます。ハンケチーフビショビショ。

難解な用語解説

【お前を燃やす小枝】 #バーフバリから生まれた用語。 おまえ一人を燃やすためにこの作品は25年間も小枝を集め続けてきたと感じてしまう「俺のための映画!共に死のう!」という作品に向けた最大の賛辞(惨事)。

【層に届く】 #ニンジャスレイヤー ほんやくチーム及びニンジャヘッズ語と思われる。特定の描写がある特定のファン層/ターゲット層に届いて心臓に突き刺さるという意味で間違いないと思う。用例としては、「嗚呼!これは層に届く!!(特定のキャラがカッコよく散る)」「これは層ですね(特定の関係性を発見したファンがぐんぐん来た時に発言)等。

【おまえの遺伝子が知っている話だ】 社会派コラムニスト 逆噴射センセイのバーフバリのレビューで発した銃弾「ゆえに完全に強固でありどんなケチをつけようとびくともしない」と神話定型を力強く肯定した。

どんな層に刺さったのか(個人差があります)

そんなわけで、私のどんな層にこの映画が刺さったのかを解説していきます。 Note内にも断片的に記事を投下していきましたが、これらを一本の記事にまとめるとフレーメン現象が起こって読者が帰っパしてしまうので分割しました。本論のために枝葉は切らないとね。

映画を思い浮かべて泣く。

ゲームキャラクターやバーチャル/リアルが激しく前後するクロスオーバー作品としては、#シュガーラッシュ と #LEGOムービー が思い当ります。

「お仕事社長」に泣く。

【感想】説明書通りに建築をするLEGO CITYの住民に謎のパーツが憑依。自我に目覚めた彼は選ばれし者としてLEGO世界を救うためにマスタービルダーと共に戦う! というのが表向きの話。 実際には実写パートの好き勝手にやってこそLEGO完成度の高い構築こそがLEGOというエゴの争いへ発展していく。両者はいずれ和解してともに高めあう最高のエンディングを迎えるがラスト5秒。最強最低のヴィランを呼び寄せてしまう。指をはじいただけでお前らの半数は消滅することを覚悟しなくてはいけない。お前が求める自由とは、他の全員を自由にさせることと引き換えなのだ。

レディプレイヤーワンとは実写パートが共に描かれるという点で類似性があり「ものをつくること」「何が一番たのしいのか」というテーマで共通している。お仕事社長の存在感も強く、ある一場面でお仕事社長が本来の素顔を見せたような気がする瞬間もあった。ぼくはレディプレイヤーワンのアイツのことをずっとお仕事社長と呼んでるしこれからも呼ぶ。

「夢の競演」に泣く。

【感想】場末のゲームセンターのレトロゲームに住む30年間悪役を続けてきた大男はいつか夢見たヒーローを目指して最新鋭ゲームの世界に殴り込む。しかし、彼が役割(ロール)を逸脱したことによりゲーム世界の崩壊がはじまり......という自身の役割を務める大切さと本当の自分の居場所を追い求めるジュブナイルが描かれており何も変わらないけど少しだけ自分の視点が変わった日常。キープオンルーピングを描く。

レディプレイヤーワンとはゲームキャラクター総登場という共通点があり一部をシェアしている。それぞれのバースに確固としたゲーム世界がありマルチプレイオンラインゲームではないが、レディプレイヤーワンが完全にその世界をアップデートしてしまった。夢の世界かここは。新作のシュガーラッシュ:オンライン でどう描かれ差別化されるのかが楽しみですね。

「このゲームを終わらせる」に泣く

また、近年ではジュマンジ/ウェルカムトゥジャングルでも全力で泣きました。どうやら私は「ゲームを終わらせようとする瞬間」に泣くようです。だいたいわかってきたぞ。

レディプレイヤーワンと比較するとキャラクターの個性や関係性の #至尊 が圧倒的に強くレディプレイヤーワンの無味無臭に近いキャラクター達が物足りなくなってくる。とはいえ、ロック様がいるとストーリーに集中できないし、むしろ「俺はザ・ロックでいく」にならなかったのがおかしいくらいキャラ立ちがやばい。ゲームマスターとしてのジュマンジに感情移入していたのでレディプレイヤーワンは完全に層だよ。

「おれはガンダムでいく」に泣く。

とにかく好機を待ち味方のピンチにも瞑想でコンセントレーションを高め最も効果的なタイミングで「おれはガンダムでいく」と母国語で宣言。
なんてまっすぐで力強いセリフなんだ!!そんな姿に触発されて己はなにでいくのかを考えた結果ぬるぬるオイルが思い浮かんだという感想文です。

「集団マルチプレイ大反乱」を思い出して泣く

終盤のプレイヤー集結シーン。
呼びかけの後の静寂。
遠くから振動が響く。
小石が跳ね上がる。
うっすらと砂煙が舞う。
アイアンジャイアントがそれをみやり、俺の動きに合わせてゆっくりとこぶしをにぎりしめる。俺はアイアンジャイアントになった。

泣く。

「都合のよい未来はない」に泣く。

全人類がオタク要素を備えた場合、オタク要素しか取り柄のないお前らは死滅する。そんなシビアな理想社会(オアシス)の描写に俺たちは怯えて震えるしかない。

お前を燃やす小枝はどこにでもある。

こうして人体のありとあらゆる穴から感情失禁して、映画が終わってももったいないから他の映画が見れないという状態になってしまったレディプレイヤーワン。 他の人からはどうかわからないけど、喜怒哀楽の全ての感情とむしろ憎悪の対象のような複雑な愛情を抱えた特別な作品となりました。

映画や小説やマンガやゲーム等の肌に密着したポップカルチャーは血肉となりエンターテイメントのパワーでぼくらを燃やしてくれる。正直、登場人物はは薄いし語られるゲームやポップカルチャーとは層が違うので全然響かなかったけど、この新しい神話定型は年代や世代に関係ない郷愁と未来が詰まっている のでそれが層に刺さって殴られて実際泣いた。

次の20年へ残すべき情報遺伝子(ミーミー)。

ぼくたちは次の20年間、新しい世代にどんなカルチャーを残せるだろうか。リアル2040年代にも僕たちの好きなアイツらが生き残っているように、今現在を応援していこうじゃないか。小枝を集めよう。それは次の世代を燃やすための小枝だ。

未来へ

今から頑張ればニンジャスレイヤーランドとかは実現可能だと思う。ホテルも併設してほしい。フートンで寝る。仲居さん(赤黒い)が(いやされやー)とかいう。ネオサイタマへ行きたい。

#レディプレイヤーワン #映画 #映画レビュー #青春 #号泣 #小枝 #コンテンツ会議

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