【創作】下読みをしたりされたりもらい水、の話
よく来たな、お望月さんだよ。『逆噴射小説大賞2020』まで3か月を切ったということでパルプ業界もにわかに活気づいています。そんな気がします。
昨日の敵は今日の友
逆噴射小説大賞から2年も経つと戦友とでも言うべき仲間たちが増えてきます。やがて全員射殺すつもりであっても、同じ方向を向いた関係というのは心地が良いもので接点も増え、NOTEやTwitterで継続的に記事を書いているような人であれば小説技巧以外の側面に理解が及んでいくわけです。
そんな中で、読者としての評価をいただいたのか小説の「下読み」を依頼されることがありました。下読みというのは書き上げた小説のパイロット版を読み、誤字脱字や素直な感想をフィードバックして精度を高めるための役割です。
これまでに対応したのは以下の二作品で、助言というレベルの大それたことはしていないのですが、無事に公開に至りました。
『柳生十兵衛がやって来る!ヤァ!ヤァ!ヤァ!』
(天才アロハ天狗の壮大な剣豪サーガ。アロ天ジャイアントロボ、アロ天アベンジャーズというレベルまで拡大していくスケールと完璧なプロットが魅力)
『大納言、窃盗団、一途な愛』
(不如意に階級だけが上がっていく大納言が、あるきっかけに転落をしていく様を描く平安ノワール。終盤で突如開かれるオープンエンディングが魅力)
基本的には全肯定ペンギン
とはいえ、筆力の高い2名の作品なので、それほどニュアンスを変えるような助言はできず、むしろ持ち前の「書いてない設定まで読み込む」特性を発揮して、全肯定をするだけになったと思います。だって面白いんだもん。
『柳生ヤヤヤ』については、前回PRした通りです。最後まで大船に乗ったつもりで連載を追いかけてください。
『大納言』に関しては、やや硬くて重めな展開だけど、普段のパルプには少ないじっとりとした情愛を描いている点がめちゃくちゃ好みでした。「鬼目線」で鬼狩りの到来を待つという視点の逆転が心地よく、もう少し読みたい。もっとじっくり読みたいタイプ作品ですね。(どうですかゆめくらげ親方)
下読みの方針を『柳生ヤヤヤ』PR記事より抜粋
▼下読みって?
作品の掲載・刊行前にゲラ版で試読。作品評価や不自然な点の指摘を行う行為を指します。校正や編集行為は行いません。具体的には、以下の指摘です。
・面白い部分
・くどい、わかりにくい部分
・数字や描写の矛盾
・あとは流れで合いの手を
▼校正・編集とは違うの?
簡単な誤字脱字の指摘以外の、校正・編集行為は行いません。ストーリー展開の編集等も仕上がってくるので手を加える必要はありません。完全に「一読者として感想をくれ!」というそんな感じです。
下読みをしてもらった作品
『平家シャーク』
壇ノ浦に巨大ザメが出現するエンタメアクションです。
助言を受けて変更したところ、しなかったところ
助言を受けて冒頭に大きく手を加えました。
冒頭の「梅雨明け、血の雨が降った」を削除しました。最後まで書き上げてみるとこの描写はノイズでしかなく、逆噴射フォーマットに向けて冒頭でパンチを食らわせてフックにしようとしたものであることが分かります。(いわゆる筆が笑っている状態だった)
また「水死体が即身仏のように干からびている」という異常な事態も同様であり、作品を最後まで貫く寂寥感を象徴するように変更しました。
また源平合戦のリフレインにはしない、と固く誓っていたので警察署に源氏装備が飾ってある、警察署長が源氏のこてを装備して弓で攻撃する、等のアイデアは没になりました。(源平合戦に関係のない、虐げられた個人の恨みが発現される世界観にしたかったので)
意外なことにアクア空手という作中の異物はノータッチであり、むしろもっと出番を増やせ的なコメントを寄せられることになりました。怒られると思ったのに……。
何はともあれ、下読み・助言ありがとうございます。
未来へ
逆噴射小説大賞まであとわずか。次々と2年越しの作品が最終回を迎え、雰囲気が盛り上がってきました。今年の目標は「身内狙いはヤメてNOTE外の読者を撃ちにいこう」です。
たぶん、今後の仮想敵はNOTE内部ではなくて外部であるべきなんだと思います。一般層に対してどれだけ影響を示せるか、本質的なオモシロ文章が求められてくると思います。
そのためには、もう少し本数を重ねて下読みを行い、切磋琢磨していきたいですね。無数の銃弾チーム(ユダンナラナイパブリッシャ)は、サークルで切磋琢磨しているようですね。異なる個性をリボルバーに詰め込む編集長の苦労には頭が下がります。
パルプDISCORDは通年オープンしていますので、作家雑談や相談事が可能です。よろしければご来訪くださいませ。