【映画感想】「バーフバリ 王の凱旋」(ややネタばれあり)
某ラジオ番組へ手紙行為したときにまとめた元データのディレクターズカットです。(マガジン内リンクやツイッターから引用等を増補)一般向けなので独自用語はいつもより控え目。ややネタバレがありますが今作は想像通りのストーリーが想像を絶する演出で表現されているので問題ないはず。
追記:ラジオ放送されました。宇多丸さんの映画評はこちらでチェックできます。https://www.tbsradio.jp/217873
何度も繰り返しますが「まず最初に伝えなければいけないことは、劇場へ行け。時間がない。」です。劇場で観られるうちに急いで劇場へ!!
映画『バーフバリ 王の凱旋』公式サイト
http://baahubali-movie.com
【「王の凱旋」感想】
◆評価点数◆
最高でした。五億点中六兆点です。
完全に映画の評価が「バーフバリ以前以後」で別れるくらいのカルチャーショックを受けた最高の劇場体験でした。
「インド映画なんてすぐに歌と踊りが入って上映時間だけ長いんでしょ~?」なんてスタンスで鑑賞すると身の詰まった展開にチュッパチャプスみたいな棍棒にぶん殴られて完全にナーメテーターだったことに気が付かされるでしょう。私的な調査結果ですが映画館を出た後に「バーフバリ!バーフバリ!」以外の語彙を失ったのが3億人くらいいます。(Twitter調べ)
◆中毒性が強い◆
この映画は「マッドマックス 怒りのデスロード」と同じく鑑賞することを《キメる》と呼び複数回の吸引が当然なカテゴリの作品です。本作鑑賞後に「パート1伝説誕生」を見ると冒頭の「おばちゃんがT2みたいに絶命するシーン」の説得力が高まり初見は失笑気味だったトンチキなシーンに号泣するようになります。主人公親子のDNAのシンクロに爆笑しながら涙ぐんだり、暴君のHSC(ハンドスピナーチャリオット)がパート2ではHS3Cに進化しているなどの発見が多くて「2をキメたら1がキメたくなり1をキメながら2をキメる」という輪廻の渦(バーフバリオーバードーズ)に巻き込まれます。
◆ジャンルをはみ出す◆
ジャンル区別が不可能な内容で、アクション、神話、歴史スペクタクル、ファンタジー、コメディ、ファミリー、ロマンス、戦争、政治劇、バトルヒロイン、アニマルビデオ、エロス、法廷劇、etcetcの要素があり、水戸黄門と遠山の金さんと大岡越前(セクハラ裁判)と暴れん坊将軍とスペースコブラとコマンドーと300とほぼ300と晏子(あんし)を足して割らずにマサラナイズしたような、ジャンル「バーフバリ」です。
◆シナリオの秀逸さ◆
ストーリーの一点一点に感想を述べても良いのですが「(これまでのあらすじ)でおつりがくる」から始まり「タイトルロゴの大きさ」から「スタッフロールが皆無なため圧を下げる前に劇場を追い出されて異常行動に走るマヒシュマティ国民」についてまでの全場面言及で紙面が足りませんので控え目な紹介に留めさせていただきます。
トンチキなインド描写と笑うしかない過剰演出に隠されがちですがシナリオが非常に丁寧で迷子になりません。ストーリー上の避けられない対立や王座を降りることになる二者択一など感情面でも十分にケアされています。ありがちな「ヒロインがさらわれそうな場面」でも決断的速度で奪還し「人質を前に手出しできなくなる場面」ですら0秒で解決するストレスフリーな設計が好ましいです。放たれた矢のようなまっすぐなストーリーで気持ち良い。
◆キャラクターが立ちすぎている◆
また、名前の響きに馴染みがなく登場人物の見分けがつかなくてもキャラクター性が際立っているので問題になりません。あれだけ派手なアクションシーンでも戦場で誰が誰と何をしているのかが一目瞭然です。
役者陣では全員凄いですが特に推したいのが「カッタッパ」です。
生真面目な奴隷剣士かと思いきやパート2で見せるおとぼけな演技巧者ぶり、子煩悩さ、迫真のトーク術でシヴドゥに父親の人生を伝えるなど、シナリオ全編にわたって目が離せません。クンタラ王国での「なめてた相手がバーフバリ」パートでは(永遠にこの時が続けばよいのに)と思うほどの微笑ましさでした。ノールック手斧投げ渡しバディアクション等で完全にKIZUNAが高まった後の「裏切り」は言葉を失う壮絶さでした。
同様にクンタラ王国の頼りなげな「クマラ」がとても良いコメディリリーフで、情けない貴族がマハラジャの決意に目覚めて一線級の戦士としてバーフバリと肩を並べていくという展開には熱いものがこみあげます。(こんなキャラクターに悲劇的なドラマが待ち構えているとは……)
◆繰り返されるテンドン◆(ややネタバレあり)
3世代にわたる大河ドラマではシチュエーションがテンドン式に繰り返されます。
パート2 冒頭の「かんぬき破壊暴れ象調伏シークエンス」がそのまま「最終決戦城壁突破シークエンス」に反映されている、仇敵の膝を砕いて絶望を味わわせる、無慈悲に皆殺しする女性に惚れる、わけのわからない方法で意中の女性へアプローチする、国王即位式と黄金象建立で国王無視でバーフバリコールが巻き起こる、デーヴァセーナを害する相手の首を飛ばす、使命に燃えると炎の戦闘インド装束が浮かび上がる、クンタラ王国での猿芝居とバラーラー親子の猿芝居でだまされるアイツ、バラーラーデーヴァ概念が滝下の村へ流れ着く etcetc...。
世代を超えた共通した部分と新たな打開方法に我々は興奮するのです。
◆語るべきパートが多すぎる◆
3世代の女性の世代間闘争、弓矢の6本射ち、「いやまて→盾で砲丸を作ってもそうはならないだろう→バーフバリだからできるんだよな→全員やるのかよ→バーフバリジャイホー!!」等、語るべきところが多すぎるのでここらで止めます。すでに映画を観ていた時間よりもバーフバリについて考えている時間のほうがはるかに長くなっています。
常に期待値を上回るエスカレートにエスカレートを重ねる展開が最高潮でありながら、これから先もまだまだ高まっていく確信めいた予感を残したままズバッと終わる、ベストオープニングとベストエンディングです。
【劇場鑑賞時の記録】
本作は初めてメモをとりながら映画を鑑賞しました。あらかじめパート2は1の比ではないとインドの方からTwitterで助言をもらっていたからです。結果、口をあんぐりし続けるしかないニューロン滅多打ちシーンの連続に遭遇したのでメモがなかったら記憶を失って何度も鑑賞しにいくことになったと思います。
その後、劇場を出てから23:55まで感想をまとめ続けるという奇怪な行動に出ました。(当日の見たままの勢いで書いたレビュー)
これは「観るスパイス」いや「観るバーフバリ」です。オススメ。
拙作バーフバリ感想マガジン
https://note.mu/ubmzh/m/mcbe5c533e024
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