『ももいろそらを』(2012年の映画)
ずっと「ももいろそらを」のことを考えている。
世界的にも高評価な映画で映画サイボーグ リチャーさんから推奨され拝見したものの……いまいちノれなかったことが悔しいからだ。
全編モノクロで撮影された本作品のあらすじはこうだ。
女子高生いずみが30万円を拾うが落とし主が天下り官僚の息子であることがわかると正義のために着服して20万円を困ったおっさんに与えてしまう。
友人三人の前で拾った財布を出し豪遊しようとするが財布の中の生徒手帳からイケメンであることが判明したので友人Aの性欲の赴くまま財布を返しに行く。
使い込んでしまった分を友人Bから借り財布を返却するがイケメンが中身が不足していることに気が付く。その財布の中身は父親から着服した裏金だったのだ。
不足分を払えないいずみと表立って告訴できないイケメンは秘密の協定を結ぶ。それはイケメンの意中の相手、入院中のかずみちゃんのために壁新聞を作ることで借金を帳消しにしてやろうという申し出だった。
おもしろい。
女子高生三人組と秘密を抱えたイケメン。
顔も知らない病院の意中の相手に対して女子高生が町の良いところを探して訪ね歩く……。そして、意外な展開と突き放すような優しいようなエンディングがあり、初めて桃色の色彩が見えるようになる。
物事の判断基準についても、恋愛脳の友人A、モラルがなく流されしたたかな友人B、ファッション反社会派ないずみとバランスが取れている。
イケメンは三人の取材をことごとくボツにしてデータだけをもらうという謎の行動を繰り返す。ここには予想通りの展開と予想だにしない秘密がある。
おもしろいんだよ。
なのになぜノレなかったのだろうか。
おそらくは、作品評で絶賛されている「女子高生の生々しさ」「ヒリつくようなやりとり」という部分が辛かったのだと思う。
あまりにも自然にムカつくやり取りが進行する。演技指導がうますぎるのだろうか。彼女たちからは本当にイヤで汚い言葉しか出てこない。
そして、監督インタビューによると、私が唯一良いと思った釣り堀の場面におけるいずみのべらんめえ口調は寅さんの借りものなのだそうだ。
いずみという存在はあらゆる対象に対して空虚であり反射だけで存在している。そして、一歩を踏み出し、最終的に自主的な行動を起こす。
筋は面白いのに演技にノリ切れず面白いと思えなかった。たぶん私は情報だけで映画を食っている。演技とか人物にあまり興味がないのだろうか。普段から倫理観のない作品をホメているのに楽しめなかったことが不安になる。
ちょっとほかの人の感想も聞いてみたいな、と思った。
『ももいろそらを』
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