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「ブロッコリーが毎食30日連続で続いた朝」 #同じテーマで小説を書こう
さっき企画に気づいたので20分タイムアタックでテキストライブしました。
「ブロッコリーが毎食30日連続で続いた朝」
政府の緊急事態宣言から二週間が過ぎ、不要不急の買い出しは控えめになり食生活がワンパターンになってきた。特に生鮮食品、野菜のたぐいの入手や保管に気を遣うようになり主力は「冷凍ブロッコリー」になりつつあった。
冷凍ブロッコリーは無敵の冷凍野菜だ。食べ応えがあり、オイルやスープとの相性が良い。一部のベジタリアンはブロッコリーをこねてブロッコリーライスにする人々もいるそうだ。ゆえに、冷凍ベーコンや冷凍コーンと組み合わせ、豆乳を投入した簡単スープは朝食の定番となった。冷凍ブロッコリーと刻みニンニクと合わせたニンニク炒めがあっさりとしながらボリュームもあり、鶏肉を合わせれば十分おかずとしての存在感を発揮する。
妻も大変に冷凍ブロッコリーを気に入り、やがて冷凍庫はブロッコリーに占拠されるようになった。ブロッコリーブロッコリーブロッコリー。すべての引き出しにブロッコリーが詰め込まれ、食事は三食ブロッコリーだ。
ブロッコリーを茹でてブロッコリーライスに盛り付ける。ブロッコリーのニンニク炒めをおかずに、ただただブロッコリーを口に運ぶ日々。
やがて俺は発狂した。ブロッコリー!!ブロッコリーが怖い!!テレワークのために部屋へ逃げ込むと妻がブロッコリーを裏ごししたポタージュを運んでくる。妻は衣服や容姿も徐々にブロッコリーに寄せ始めた。髪型は丁寧に巻き上げたブロッコリーヘアー、グリーンのボアコートに緑色のスリッパ。
俺は外へ駆け出した。マスクの着用など考えてもいなかった。開花前の桜並木は失せ、外界は緑色に染まっていた。嘘だろ。桜はどうした? 花見は? 桜色の季節はどこへ? 貴様か? 貴様が奪ったのか!!通行人のアフロヘアの青年へつかみかかる。
「なにをするんですか!あなたは!なんか ブロッコリーくさいですよ!!」
「見るな!おれをブロッコリーのように見るな!!」
青年を突き飛ばして走り出す。駅前へむかえばブロッコリー以外の人間もいるに違いない。だが、公園の角で道を尋ねられる。それは、新緑色のブロッコリーの傘を傾げた女だった。
「もし、駅前はどちらでしょう……あら、あなたブロッコリーくさいですわよ」
「うわわわわわわ!!」
女性を突き飛ばしうろたえながら大通りを横断、ブロッコリー運搬トラックが避けてクラクションを鳴らす。「ブッロッコッリー!!」
俺は走り続け、走り続け、いつの間にか自宅の前へ戻る、その新築のグリーン外壁の屋上から、妻だったはずのブロッコリーがブロッコリーを振っていた。
俺はブロッコリーを全て食べた。
【20分経過したのでおしまい】
【元凶はこちら】
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