愛される存在でいるためには - ubies 庄野裕晃のコラム
"summertime"がTikTok東南アジア各国の利用楽曲1位となり、"TikTok流行語大賞2020ミュージック部門賞"を受賞した、注目のポップスバンド evening cinema。SNSスタンプDL数5億を超えるキャラクター "うさぎゅーん!"とコラボしてIPビジネスを展開するなど、領域を軽やかに超える自由な発想でevening cinemaを売り出すのは、所属レーベルAno(t)raksを傘下に持つ、グリッジ株式会社代表の籔井健一さんだ。
中国深圳で開催される世界最大級の芸術祭Shenzen Fringe Festivalにて、evening cinemaがテーマソング、ubisum by ubiesの優勝者である河野ルルさんがテーマアートの担当でコラボレーションの機会があったことがご縁で、以来仲良くさせていただいており、共感値もとても高いことから、今は音楽とアートとIoTを融合させた空間ブランディングの事業を共創中だ。
ある時、そんな籔井さんから「つんくさんにインタビューして頂いた記事が公開されたので見てください。」とメッセージをいただき早速見てみると、籔井さんとevening cinemaのボーカリスト・原田夏樹さんの記事がそれぞれ上がっていた。
おそらく、他では話したことがないのでは?と思うような素の部分が語られていて、ますますお二人に興味を持ったと同時に、話を引き出したインタビュアーとしてのつんくさんに興味が沸いた。
まず「原田くんはいつ頃、音楽に目覚めたの?」と間口の広い質問に始まり、「5歳のころだとピアノのレッスンに行くの、嫌じゃなかった?」と、原田さんの原点と思われるピアノレッスンの話へと深めていく。つんくさんのインタビューは、大プロデューサーであることを感じさせず、近所の兄ちゃんのような雰囲気で接しながら、相手が発する言葉の中から、その人の根っこに近づけるであろう事柄を瞬時に見つけ、テンポよく深く掘っていくので、本音やありのままの姿が次々と浮かび上がっていく。
ハロー!プロジェクトのメンバーにもきっと同じように接し、一人一人の"らしさ"を引き出しているのだと思う。"らしさ"とは、愛されるブランドを築くための"根"に当たるが、それぞれの中に当たり前なものとして存在しているので、自らそれに気づくことはとても難しい。つんくさんが、メンバーの"らしさ"を見事に引き出していることが、アイドル市場の激しい競争の中、未だ第一線で売れ続けている大きな理由の一つなのだろう。
これは表現者やクリエイターに限らず、企業にも当てはまる。企業も長く生き残り、愛される存在でい続けるには"らしさ"に気づくことから始めなくてはいけない。我々エージェントは、人の"らしさ"を見出すことに一日の長があり、ありのままの姿を映す"鏡"的な存在だと言える。クリエイターのエージェンシーであるubiesが、ベンチャー企業から大手グループ企業のリーダー層まで、様々な立場の方からアドバイザリーやコンサルティングをご依頼いただけるのは、そうした理由からだろう。
と、つんくさんの仕事ぶりから、自分自身の"らしさ"について改めて見つめ直す機会をいただくこととなった。籔井さんが記事を共有してくださったのも、きっと私に響くと見抜いてのことだったのだろう。
Cover Photo by Jorik Kleen on Unsplash