推奨されている、家庭内感染予防のための〝窓を開け放つ換気〟と、〝24時間換気扇による換気〟は、同じと見てよいのか?
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家庭内感染予防として、定期的な換気が推奨されています。
なぜ換気するのかは、申し上げるまでもなく、感染源となる飛沫などを屋外に排出するためです。
ここで言う換気とは、明らかに窓を開け放って行う換気のことです。
その一方、我が家には24時間換気扇が設置されている
24時間換気の詳細は、私のnote、『「住宅の24時間換気って?」 と 「住宅の換気事情について」』をお読み頂ければと思いますが、今日の住宅は、2時間に1回の頻度で家全体の空気がまるっと換気できる性能を備えた換気扇の設置が義務付けられています。24時間で12回、家全体の空気が入れ替わっていることになります。
以前から疑問に思っていたのですが、家庭内感染の防止策としての、窓を開け放つ換気と、24時間換気扇による換気は、同じと見てよいのか? ということです。同じであれば、手間がかかる窓を開け放つ換気をしなくて済むのではないか?
また、窓を開け放つ換気が推奨される一方で、24時間換気扇による換気について触れているのを(私が知る限りでは)見たことがありません。そもそも、24時間換気扇が存在しないもののように扱われている印象を受けます。
わからないことは訊けばいい。行政はどう捉えているか知りたい。ということで――
地元の保健所に問い合わせてみました。
24時間換気は家庭内感染対策になるのか訪ねたところ、電話対応にでた方はわからなかったようで、少し待つように言われ保留。しばらくすると「確認しました」とのことで回答を頂きました。回答は以下の通りです。
24時間換気扇による換気も〝感染対策としての換気〟として有効。ただ、窓を開ける換気も行い、特に窓を二箇所開けて行う換気を推奨する。
窓を二箇所開けて行う換気については、詳しくは東京都福祉保険局の「換気の方法が知りたい」をご覧ください。
イラスト出典:東京都福祉保健局ウェブサイト
窓を二箇所開けて行う換気は、厚生労働省のウェブサイト掲載の『3つの密を避けるための手引き(PDF)』にも書かれています。その頻度は1時間に2回とあります。かなり頻繁に換気しないといけない……という印象です。
ということなのですが、電話にでた方がすぐに回答できず、他に人に確認を取ってから回答してくれたので、なんとなく心許なく感じ――
確認の意味も込めて、東京都 新型コロナウイルス感染症電話相談窓口にも問い合わせてみました
結論を先に言えば、保健所と同じで24時間換気扇も有効との事ですが、「その有効性や数値については、個別にはお答えできない」とのことでした。
個別にはお答えできない、とはどういうことかというとーー
窓の開け放つ換気は、家庭内感染予防として一概に有効。24時間換気も同様である。ただし、各家庭によって状況は変わるので一概に言えず「あなたの場合はこうです」といった個別の回答はできない。
ということ。
この回答は、その通りだと思いました
間取り、窓の大きさに配置、換気扇の清掃状況など、各家庭の状況を一概には扱えません。相談窓口が個別に回答することは不可能ですし、答えてはいけないことだと思います。
個別には回答できませんが、東京都や厚生労働省は、先に書いたとおり、換気の方法など、一概に扱える情報をちゃんと提示しています。
大切なのは、各家庭(個人)が、行政などが提示した情報を参考に、自身の環境に合わせて、家庭内感染予防に努めることだと思います。なにより、健康でいたいですものね。
ただ、もうちょっと掘り下げたい
ここで筆を置いてもよいのですが、家庭内感染症予防として、お部屋に設置できる『隔離・換気扇』を開発している身としては、もうちょっと換気について掘り下げたいと思います。
ここから書くことは、私の所感です。科学的、医学的根拠はありませんので、その点ご留意の上お読みください。
24時間換気は非常にゆるやか
24時間換気は2時間に一回、家全体の空気が入れ替わる性能が義務付けられていますが、その空気の流れは非常に緩やかです。空気が流れていることを肌で感じることはほとんどできません。
唯一できるのは、アンダーカット部と換気扇ファンの間近。
アンダーカットとは、ドアの下部に設けられている隙間のことです。
筆者の部屋のドア下部には、13ミリの隙間があります。
ドアが閉まっていても、主にこの隙間を空気が通って換気されるわけですね。アンダーカットなんて洒落たネーミングですが、要はただの隙間です。
余談ですが、昔はこの部分に沓摺り(くつずり)と呼ばれるドア枠がありました。
写真の沓摺りは戸当りの無いタイプ。沓摺りは防音、虫の侵入防止、冷気やホコリの遮断の役目があります。今日では24時間換気の義務化とバリアフリーの観点から、その姿を消しています。
閑話休題
↓このように、アンダーカットに手をやると、本当に僅かですが、ヒンヤリとして空気の流れを感じ取ることができます。
次に、換気扇の間近です。
これはわかりやすいと思います。ただ、その吸引力は弱いです。
24時間換気扇の吸引力を、タバコの煙で調べたことがあるのですが、換気扇の直近、「そこまで近づければ吸うわいっ!」と突っ込みたくなるほど近づけないと煙を吸いません。これは本当に空気を吸っているの? 換気できているの? と疑いたくなるほどです。
しかし換気できています。そもそも、24時間換気はホームシック症候群対策で義務化されたものです。科学的な根拠のもとに法制化されています。実際、ホコリをキャッチするプレフィルターにはホコリがしっかり付きますし、外気を取り込む給気口のフィルターも真っ黒になります。
確かに換気できる。できるけれどーー
24時間換気扇は、家庭内感染を予防する換気としては若干心許ない
と思うのです。
新型コロナウイルスは飛沫感染するとされています。本当に飛沫感染するのか、空気感染はしないのか、ということは、ここでは一旦おきます。飛沫感染対策として考えます。
飛沫感染は、空気感染に比べて感染力が弱いとされています。
飛沫感染は、文字通りに飛沫に感染源が含まれ、それによって感染する。飛沫感染は唾液などの飛沫なので、重く、長時間空中に留まらずに落下。家庭なら床に落ち、その後、清掃などで除去されるか、時間の経過とともに感染源が不活性化する。
一方、空気感染は感染源が空中に長時間滞留するほど軽く、遠くに移動しやすく、人が吸い込みやすい。
なので、感染力は、空気感染>飛沫感染 というわけです。
さて、換気は確かにするとはいえ、非常に緩やかな24時間換気。
思うのです。24時間換気では、換気力が緩やかすぎて、飛沫を含んだ空気を屋外に排出する前に、飛沫が落下してしまうのではないか?
24時間換気は、一般的にお風呂の換気扇で家全体を換気します。
たとえば、↓の間取りで、右上に部屋で発生した飛沫が、空中にただよったまま浴室の換気扇に到達するだろうか?
到達する前に廊下で落下してしまうのではないだろう。
それはわからない
その時の状況によって変わってくるでしょう。わかるためには、科学的な検証が必要だと思います。
これらのことから言えるのは、感染源となる飛沫を排除する換気は、窓を開け放つ換気をメインにして、24時間換気扇による換気は、補助とするのがよい、だと思います。(※マスク着用、手洗いなどは大前提として)
ただ、厚生労働省が推奨する、1時間に2回の換気は相当に難しい。これから寒く(本note執筆は10月上旬)なりますし、夏も大変です。こまめな換気ができるのは、春秋のよい季節だけかもしれません。
窓を開ける換気は、そのお部屋の空気を直接屋外に排出するということですが、お部屋に換気扇をつければ、それが窓を開けずとも実現する
だからこそ、「隔離・換気扇」の開発に着手したわけです。
個別のお部屋に「隔離・換気扇」を取り付ければ、↓このように、そのお部屋の空気を外にもらさず、屋外に直接排出できます。
もちろん、先述の通り、窓を開ける換気を併用するがよい、は変わりありません。
ということで、換気について掘り下げて考えてみました。
よい住環境になるよう、空気の流れを設計することを「換気計画」といいます。家を購入したことがある方なら耳にしたことがあるのではないでしょうか。
この機会に、ご自宅の換気計画を確認してみてはいかがでしょうか。コツは間取り図を書くことです。↑上の図のように空気の流れを書き加えるとと、湿気が溜まりそうな場所などが見えてくるかもしれません。(この間取りの場合は、玄関に湿気が溜まりやすいです)
このnoteが、あなたの住環境の向上につながれば幸いです。