察しが良い
コロナから回復し、家事を再開してもらっている梅子さん。
昨日、100円タイルが貯まったので100円玉と交換した。
しかし、計算したら50円足りないことに気づいた。
梅子さんとお金が落ちてないか探したりしたが全く見当たらない。
さて、どうするものか…
梅子さんは計算の合計金額と現金の金額があっていないことは理解していても、実際、いくら足りないのかが分かっていない様子だった。
梅子さんに計算した合計金額と実際のお金が50円足りないことを帳簿の計算を通して伝えてみた。
まず、計算で出した合計金額(Y)からいくら引いたら(X)、今の現金の合計金額(Z)になるか…という計算式を立てさせた。
Y-X=Z
梅子さんは、Yにあたる部分とZにあたる部分を計算式に書き込んだ。
問題は、Xだ。
Zの数字は、辻褄が合うように数字を入れなければいけない。
一の位は、すぐに「0」と出てきた。
十の位は、想像がつかなかったようで小さい声で「分かりません」と言ってきた。
私は梅子さんならそう言うだろうと予想していたので、「ちょっと待ってね」と言ってファイルからタイルの引き算九九表を取り出した。
表を見せると、梅子さんに「7ー◯=5」になってると指差ししながら梅子さんが書いた筆算を指差した。
梅子さんは、表を見て7の段を目で追った。
そして、指が「7ー2=5」の上で止まった。
とはいえ、指差しを確実にしない。
その様子から、梅子さんは、ここだろうと察しはついているよう。
とはいえ、確信が持てないでいる。
やったことない計算だから、そりゃそうだ。笑
でも、この察しの良さが彼女の成長そのものだ…
昔なら、この「−5」の意図さえ組めない。
大きな1歩だと思って、改めて「どれ?」と聞いてみた。
梅子さん「…7ー2・5…?」と小声で答えた。
私「素晴らしい!よく気づいたね!やるじゃん!」
と笑顔で褒めた。
そして計算式のXの部分に「2」と書き込ます。
そうすると50円という数字が出てきた。
梅子さんは、Yにあたる部分から50円タイルをハサミで切り取り、貼った。
そして、帳簿の金額と現実の現金の合計金額が合うようにした。
次に帳簿の計算が終わると、新しい100円タイルの裏に硬貨を貼るため、椅子から立ち上がり、豚貯金箱から硬貨を取り出した。
豚貯金箱には、いつも100円玉硬貨を入れていたのだが、ある日、100円硬貨がなかったので、50円玉硬貨4枚を入れていた。
豚貯金箱の中には、何故か3枚の50円玉硬貨しかなかった。
この時、なぜ50円足りなかったのかの理由について私は気づいた。
前の100円タイルを作った時に50円玉硬貨1枚だけ貼ったな…
もし、この考えが正しいのなら、梅子さんは今回も1枚だけ50円玉硬貨を貼るだろう…と思った。
梅子さんの様子を黙って観察していたら、案の定、100円タイルに50円玉硬貨を1枚貼り付けた。
そして、豚貯金箱を片付けた。
よし‼️
思った通りだ‼️
(๑•̀ •́)و✧
どう気づかせるか…を考え、「これっていくら?」と聞いた。
梅子さんは100円タイルを見ながら、「100円」と私に答えた。
私は、「裏に貼ったお金はいくら?」と聞いた。
梅子さんは、裏をめくった。
梅子さん「50円❣️……(ㅎ.ㅎ )」
私「……(*'ω'*)」
梅子さんは、一旦片付けた貯金箱を出してきて、もう1枚50円玉を貼り付けた。
梅子さん「100円‼️」
私「……😂😂😂そう❣️100円になった」
はるか昔の私なら「重度の人は、直ぐにお金をなくす‼️😡」と考えて梅子さんを怒っていただろうなぁ。
または、解決しようとせず有耶無耶にして彼女を諦めていただろうなぁ。
河島先生から教わった上記の方法(理論的に物事を観察し、コミュニケーションの1つ1つを記録していく)だと感情的にならずにまっすぐ解決していく道のりを踏める。
重度発達障害者と向き合うと感情的になりがちだが、感情はさほど必要としない。
むしろ客観的(類人猿の研究者のような)な思考が必要となる。
徹底的に原因を考え、その仮説が正しいのか違うのか見極め、結論を出す。
これが療育者の生き方。
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