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夢を語れ(新宿地下ラーメン)

新宿地下ラーメンの本質は情報弱者を篩にかける佇まいにあるのかもしれない。最近はそう感じている。徒手空拳で入るにはあまりにも敷居が高すぎるからだ。

本日は今週フィーチャーされている「夢を語れ」を訪問してきた。実は一昨日に店の前まで行ったものの、掲載されていた看板メニュー「豚ラーメン」(1,700円)の圧倒的なボリューム感を見て、断念していたのだ。「これは無理だ、半分も食べきれない」と。

入口に設置されている看板

その後の調査により、ライトなメニューとして「ラーメン」が存在することを知っての再訪だった。本日は見事入店して「ラーメン」(1,200円)と「ギルティ」(250円)を注文。
この「ギルティ」は背脂、ほぐしたチャーシュー、ニンニク、唐辛子に独自開発のタレを絡めた味変用の薬味とのこと。二郎系ラーメン店の専門用語を逆手に取った記憶に残るネーミングだ。

店内はお昼時だったこともあり満席に近い状態。若い男女から50代と思しき男性までがひしめき、40代以降の女性を見かけなかったのが何となくこの店の客層を表している気がした。

着席して15分弱でラーメンが届く。もやしの上に乗った背脂とステーキのような肉厚のチャーシューが圧倒的な存在感を放っている。トッピングの隙間から見える醤油豚骨の海といい、説得力があるビジュアルが目を惹いた。これはお腹に溜まりそうだ、と。

ラーメン(1,200円)

さっそく箸を付けた。これは個人的な感想だが、二郎系ラーメンはスープに絡めたもやしを食べる瞬間が最も幸福を感じる。

今回訪問した「夢を語れ」は二郎系のご多分に漏れず、濃厚以上に強烈な塩気の醤油豚骨に極太の麺を絡めて食べるジャンキーなラーメンだった。麺、スープ、トッピングのそれぞれが強固に主張をしながら、同時に三位一体となって一つのハーモニーを作り上げている。味の濃さという意味では狂気のようでもあり、効率よくカロリーを摂取できる(=実際にこの日は夕食を食べずに済んだ)という意味では優しさのようでもある、標準的な二郎系ラーメン。誤解を恐れずに言えば、とみ田監修デカ豚ラーメン(セブンイレブン)でもかじることができる種類の食体験だ。

ギルティ(250円)

私は今回、掟破りのニンニクなしでコールして、同時に「ギルティ」を添えるという店員もハテナ?な感じの注文にした。午後の仕事を意識する昼時のサラリーマンには、これが限界だろう。全力で食べたが、スープを3分の1くらい残す残念な結果にもなった。
ちなみに、「ギルティ」は麺を3分の2くらい食べたところで満を持して投入。濃い味に濃い味を足したので明快な味の変化を感じることはできなかったが、にんにく抜きでコールしていたので、にんにくのライブ感を楽しむことができた。

さて、この「夢を語れ」はチェーン店とのこと。公式ウェブサイトによると、2025年1月現在で北は青森から南は沖縄まで全18店舗あるようだ。新宿地下ラーメンの店内にも「修行生募集中!」の案内が掲載されていた。

修業生募集のポスター

そのポスターを見て興味深いと感じたのは、企業やラーメンの特徴よりも、「ラーメン作りを通じて夢を実現する」という行動にフォーカスを当ててアピールしていたこと。経済的な成功よりも夢の実現を重視しているような書きっぷりだった。
調べたら、この「夢を語れ」の修業生は1年目は既存店舗で修業し、2年目に自分の店舗を持ち、その店舗を3年間運営したら独立(屋号を変える)か廃業かを選択できる仕組みのようだ。

この短期決戦的な仕組みとラーメンという商品の特性を考慮すると、4年という年数が修行生に成長実感を与えられる限界なのかもしれない。
実はこの「成長実感」はZ世代を育成する際のキーワードだと言われている。若手に漠然とした不安を感じさせることなく、常に進んでいるイメージを与え、スキルを身に付け人件費が上がってきた頃にリリースする。そういう考えで運営されているのであればよくできた仕組みであるし、独立にあたってフランチャイズ化していないのであれば企業側がキャッシュポイントを放棄しているという意味でもったいない気もする。

また、各店舗の店主がSNSで生き様を発信しているのも今風の特徴だと思った。言葉足らずで時に炎上するようだが、それも含めて各店主が紡ぐ物語がラーメンの味付けにもなっているのだろう。

まとめると、スタンダードな二郎系の土台に練り上げたブランドと店主の生き様をトッピングしてお客に提供する。これが味の差別化が難しい二郎系における「夢を語れ」のストロングポイントなのかもしれない。そう思わせる体験であった。

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