ある日突然「メヘンディ・アーティストになる」って言い出したライターのお話。《水曜日のエッセイ by アミカ》
水曜日の記事は文章クラブ『放課後ライティング倶楽部』メンバーさんが担当です。だいたい2ヶ月くらいで順番がまわってきます。
◆
「メヘンディを始めることにした」
そう言うと、ほとんどの人は「え?何それ?」と言う。
滅多に知られていない名前というのは、説明するところから始まるんだなと改めて思う。
「ヘナアート」といった方が、馴染みが良いのかもしれない。
ヘナという植物の葉の粉末にいくつかの素材を混ぜて液体にしたものを使い、肌に模様を描く。
それをヘナアートという。
最初は鮮やかなオレンジ色に染まるが、時間が経つにつれて落ち着いたブラウンに変わる。
染まった肌は1週間から10日ほどで元のように消える。
インドの結婚式に花嫁が指先を染めるのが有名で、おめでたい席での活用が多い。
近年日本でも人気が出始め、妊婦さんのマタニティアートとしても使われることが増えている。
ヘナアートに出会ったのは、小学校の教員時代だった。
仕事で疲れた自分を癒すため、私はひたすら都内の大型書店に入り浸った。
閉店間際の店内で好きな本を漁り、ジャケ買いしまくっていた。
当時、投資する場所なんてラルクか本しかなかったのだ。
ある日、店内を彷徨いていた私の目に飛び込んできたのは、鮮やかなブラウンで描かれたヘナアートの本だった。
肌の曲線に沿って描かれた単色のデザインは、モノクロでありながら繊細で美しく、思わず購入して帰った。
自宅でページをめくりながら「このデザインを書くにはどうしたらいいんだろう」と想像した。
「いつか自分もやってみたい」
そう思ったものの、ヘナアートはヘナタトゥーとも呼ばれると知り、肩を落とす。
タトゥーなんて、入れられるわけない。
親も同僚も、そういうものにはうるさいのだ。
バレた日には、大変である。
美しいデザインを眺めつつも、手を出した後の騒動を考えるとそれ以上のことはできなかった。
ところが、転機が訪れた。
次男を出産後、再びヘナアートを目にする機会があった。
ヘナアートをやっている人が都内にいる。
しかも、個人宅で。
もう結婚していたし、先生も退職したのでうるさい親や同僚はいない。
やってみても、いいんじゃないかな。
恐る恐る問い合わせ、子連れで行ってもいいか聞いてみる。
先方にもお子さんがいるとかで、あっさりOKをもらった。
どきどきしながら行った初めてのメヘンディは、美しい孔雀の姿をしていた。
旦那さんはあまりいい顔をしなかったけど、私自身はものすごく嬉しかった。
やってみたかったことに一歩踏み出せたのだ。
「勇気を出して聞いてみる」
これだけで、意外とどこでも行けちゃうんだと自信がわいた。
これなら、やってみたかったメヘンディもできるかもしれない。
しかし、懸念もあった。
肌に直接ヘナの液体を載せる。
これは、アレルギーのある人にとっては危険なのではないか。
当時、ヘナアートをやっている人の中に医療関係者はいなかった。
個人がやりたいようにやっているだけで、「肌のトラブルがあった時は自己責任」という世界。
実際トラブルに発展することも多かった。
「医療関係者でヘナアートをやっている人がいればな……」
ヘナアートをやってみたいという思いは、燻ったままだった。
続く。
[ライター:アミカ]
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