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青と夏《水曜日のエッセイ by 鳥飼 アミカ》
水曜日の記事は文章クラブ『放課後ライティング倶楽部』メンバーさんが担当です。だいたい2ヶ月くらいで順番がまわってきます。
◆
ラルク好きを公言している。そう言うと「ロック好き」「ビジュアル好き」と思われるようだ。
ロックばかりが好きなわけでもないし、顔面だけでバンドを選んでいるわけではない。
ミセスグリーンアップルだって大好きだ。
ミセスグリーンアップルを知ったのは「青と夏」
テレビをつければ必ず流れていたあの曲は、耳にするたび青春の匂いがする。
高校から大学にかけての、複雑な心の変化に周りも自分自身も振り回されていたあの頃。
映画みたいな青春に、憧れていたあの頃。
同じように感じる大人が多いから、あの曲が人気なのだろう。
ミセスグリーンアップルの昨年のアルバムタイトルは「ANTENNA」だった。こちらも青春時代の思い出にあるワードだ。
大学の頃、いろんなことに手を出した。
昼間に通う学生だったが、大学の規定が緩いのをいいことに夜間もぶっ通しで学校にいた。
自分に必要のない単位も、友人がとっているからと出席した。ピアノ室がある学校だったので、時間が余るとピアノ室でピアノを弾きまくった。それは、親に見せていた表側の話。
アル中の父が特に荒れていた頃で、顔を合わせれば怒鳴り合いが始まった。アルコール飲料というのは、大人の正気を無くさせる飲み物と学んだ。怒鳴られる母を見るのも嫌で、とにかく家に居たくなかった。
反動だったのだろう。
裏では空き時間にデザイン画を描き、服を作った。それらのドレスは、文化祭でショーをしてお披露目した。
ギターを片手にバンドを組んでステージに上がった。近くのライブハウスでいくつかのバンドと組んで演奏していた。
バイトして稼いだお金は、ラルクに全部注ぎ込んだ。
彼氏はいたが、社会人だったので滅多に会えなかった。「彼氏がいる」ことが一種のステータスみたいな時期だったから、別にどうとも思っていなかった。
女子大だったので、友人の合コンに参加して他校に男友達を作っていた。
泥沼になるような遊びはしない。
リスクは取らない。
後戻りできなくなるようなヘマはしないと決めていた。
でも、時間は持て余していたから、遊び相手は固定しなかった。夜通し遊び、明け方まだ開店している居酒屋で朝ごはんを食べ、そのまま次の日の授業に出ることもあった。
あの頃は、どこにぶつけたらいいのかわからない熱を、目に見えるものに手当たり次第に投げつけていた。
ある日、バンドメンバーとライブハウスに向かう途中で他のバンドの男子に会った。彼女といちゃつきながら現れたその人の首筋には、キスマークがあった。
見た瞬間、さーーっと引いたのが自分でもわかった。
「彼女がどうしてもって言うからァ」ヘラヘラ笑いながら言う彼に、バンドメンバーが「仲良しだねぇ」と返す。
どいつもこいつも、日々持て余した時間や体力を目の前にぶつけているだけだ。
誰も、本気じゃない。
自分も、そうだ。
「本当に、それでいいのか」
血の気の引いた頭に浮かんだのは、疑問符だった。
それからすぐに、バンドを辞めた。
バンドの名前は「アンテナ」だった。
服作りもやめ、卒業後すぐに働けるよう資格を取りまくった。家を出るつもりだったから、就職は大事だと思った。自分は会社員に向いていないってわかっていたから、小学校教諭を目指した。確実に受かるため学生ボランティアにも行った。
時々思い出す。
あのとき血の気が引いたのは、自分がどう見られているかに気づいたからだった。
危ない橋は渡っていない。
周りの目なんて関係ないと思っていた。
けれど、周りからもそう思ってもらえるかはわからない。人は、見たいものしか見ないものだ。
友人も固定ではなかったから、誰かに責められるようなことはなかった。
誰とも関わらず、私はひたすら真面目にコツコツ積み上げる生活を目指した。
自分に本気で生きようと思った。
どんな時も本気で生きてきた自負があるから、いまも自力で立つことができていると思う。
実家の様子は今も変わらない。
父親のモラハラもアル中も、それによって振り子のように揺れる母の感情も。
だけど、自分はもう大人だ。
「アンテナコントロールして
全てを抱きしめて
どこまでも行ける
そんな気がしてる」
今日もミセスグリーンアップルの歌に励まされている。
[ライター:鳥飼 アミカ]
◆あとがき
ヤスです。自分のことを書くのは難しい。変な情をもってほしくないし、かといって何も書かないと「私」という存在を表しにくい。こうやって隠したい自分を書くのは、物語なら主人公ルートだね。
◆66日ライティング×ランニング〜シーズン2 《63日目》
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参加者全員の記事はこちらに。
《こちらはシーズン1》
ひとりでなかなか頑張れないなら、私たちがいっしょに走るよ。
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