無意味な連続考察事件【勝手にリレーエッセイ2023"春"#6】
2023年3月25日。北の大地のある温泉旅館にて。宿泊客はイベントの参加者しかいない。貸し切られているのだ。
同日17時26分。主催者イトーダーキの呼びかけで宴会場に集められた面々は、今回行われる企画の趣旨の発表を待っていた。
目の前には海鮮系の豪華な夕食。そして星マークの付いたビール瓶が次々と旅館スタッフにより並べられる。
ひとりの男が立ち上がり話し始めた。
「やぁやぁ、「勝手にリレーエッセイ2023春」が4月からスタートだ。飽きもせずにこれで通算3回目の開催。この場に集まった方々、ありがとうございます。こんばんは、イトーダーキです」
宴会場は大きな拍手に包まれた。
「それでは夕食のまえに、今回のテーマを先に発表しよう。テーマは、『有意義で無意味』」
会場は徐々にざわついた。
「は?ゆ、有意義なのに無意味だと?そんなバカな……」
「ありえなくない?そんなのワタシが書けないってわかってるじゃない!」
「これは策略だ。イトーダーキは「意味ありげな記事を書く俺」をハメようとしているんだ!」
「ふん、茶番だぜ。オレぁさっさと部屋に戻って記事更新でもしてらぁ」
「きゃりーぱみゅぱみゅ!」
パチパチパチパチパチパチ。
見慣れない男がいつのまにか立ち上がり手を叩いていた。皆の視線がイト―ダーキからそちらへ移り「誰だこいつ?」と露骨な戸惑いの目を向けている。
旅館が貸し切りになっていると知らず、イトーダーキの計らいで宿泊を許可され、偶然この場に居合わせた探偵・銀田一大五郎だ。
「みなさん、すこし落ち着きましょう。そこの貴女、ちょっと目の前のビールでも飲んだらどうでしょう」
「この状況でお酒なんて飲めるワケないでしょ!イトーダーキはワタシが書けないって疑ってるのよ!ってかそもそもアンタはだれなのよ!」
まるで舞台役者のように両腕を広げ、銀田一は言葉を続ける。
「ボクはね、落ち着きましょうと言っただけです。貴女が書けないなんて疑ったりはしてませんよ。だって貴女には"書く動機"があるでしょう?」
驚愕の表情で女は黙った。「……なぜ、それを」と小さな声が聞こえた。
「お集りの皆さん、ボクは探偵の銀田一と申します。ここの温泉はいいですねぇ。湯に浸かっていたらそこのヤスさんに会いましてね。顛末は聞きました。
今日はリレーエッセイという企画の集まりなんですね。みなさんがリレー形式でエッセイを順番に書いていく。間違いないですね、ヤスさん?」
「は、はい!そうでしゅっ」
唐突に話をふられたヤスと呼ばれる男は盛大にかんだ。先ほどウケ狙いで「きゃりーぱみゅぱみゅ!」と叫んだのもこの男だ。
「ボクはね、話を聞いてすぐに気付いたんですよ。この企画、いや、そこでほくそ笑んでいるイトーダーキさんの企み(たくらみ)にねっ!」
「た、企み?」
「ちょ、ちょっと!どういうことかワタシにもわかるように説明しなさいよ!」
「今回は……アンチテーゼだけじゃないのか?」
「たくらみ、ですか。そう言われるのは心外だね。銀田一さん、説明してくれませんか」
笑みを崩さないままイトーダーキは穏やかに言う。銀田一も笑顔のまま答えた。
「ボクはね、このリレーエッセイを何故3回も開催したのかが、とてもひっかかったんです。ヒントは2回目にありました」
「2回目?」
「ワタシも参加してたわよ。それがなんだっていうの?」
すこしの静寂のあと、銀田一は口を開いた。
「みなさん、大事なフレーズを見落としているんですよ。それは……
………
……
【読者への挑戦状】
イトーダーキの震えが止まらない。数か月にわたり立案し実施してきたこの時間は、企みがばれてしまうと無意味となる。どうにかこの場を切り抜けられないものか……。
――私は読者に挑戦する。
謎を解く鍵はグループBの第1走者~第5走者の記事ですべて提示してある。「最強の温泉」「無償の愛」「偽りの眼鏡」「読めない日記」「恋心の独白」そして「場違いな探偵」。
これらの手がかりを元にし、リレーエッセイを愛する諸君にイトーダーキの企みを推理してほしい。健闘を祈る。
………
……
尚、解決編など存在しない。なぜならそれこそが無意味だからだ。
(1673字)
最終走者リトさん。おまかせしました!
[画像協力:さちわ]
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