わたしたちのプロ野球
2020年、6月19日。
プロ野球が、開幕した。
開幕の数時間前からどきどきして、そわそわして、まるで7回にピンチを迎えたときのように鼓動が高なった。
球場になんて行けやしないのに、かばんにはユニフォームとつば九郎タオルをしのばせた。せめてもの、開幕への思いをと思ったのだ。
ただでさえ10〜2月の時期を苦しみながらわたしたちは過ごしている。野球がないという事実。切なくて苦しくて、うんと寂しいこの時期。わたしたちはそれを乗り越えて、球春を迎える。
でも今年は、6月まで愛する野球にふれあうことができなかった。こんなにも、野球を心から愛しているのに。
スワローズ は、負けてしまった。石川さんはうんと頑張ったし、てっとはホームランを打ったし、村上くんはきちんと仕事をした。でもそれで満足できるほど、わたしは心優しいスワローズファンではない。
でも、心は震えてどうしようもなかった。野球が、ここにある。その事実が、わたしの心を揺さぶった。
幼い頃から、日常となっていた野球。どれほど心待ちにしていたか。日常が戻ってきたことが、どれほど嬉しかったことか。
大きな声で、声援を送りたかった。叶わないのならばせめて、心の中で。
わたしたちのプロ野球が開幕した。わたしたちは、どうしようか。この愛をどうやって、伝えようか。この幸せを、どうやって表現しようか。
花の都の真ん中で、わたしたちは共に戦おう。心を、震わせて。