出産

 おめでとうございます、元気な女の子ですよ、と助産アンドロイドが言う。おのれの存在を主張するかのような、産声。
 よかった、産声が聞こえてきている。
「あの、奥様は……」
 分娩台の上でわたしがいう。奥様に伝えなくては。奥様のご令嬢がお生まれになりましたよ、と。
「待合室におられると思いますよ」
伝えてきましょうか、と助産アンドロイドが言う。お願いしますと、わたしは返した。

 西暦2150年。
 人は子どもを産まなくなった。
 かわりに、開発されたのがわたしたち。
 人工の子宮を持ち、十月十日、胎児を育てるガイノイド。

 ――わたしたちは、人間の代わりに子どもを身ごもり、出産する。

【未来・機械・誕生】

#掌編小説
#すくものノルマ

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