さだめの時

 遠い遠い北の大地に、一組の母娘(おやこ)ががおりました。
 父はなく、二人は人里離れたところでひっそりと暮らしておりました。
 ある夜のことです。オーロラが空一面に輝き、まだ言葉の喋れないはずの娘が、
「お母様。時が満ちました」と、言いいました。

 その次の瞬間、火が付いたように泣き出しました。いつもの娘に戻ったようです。
 さて、あの言葉は何を意味するのでしょうか?
 この娘(こ)は何を背負っているのでしょうか?

 言い知れぬ不安に母親はぎゅっと娘を抱きしめました。

【ラップランド・母・不安】

#掌編小説
#すくものノルマ

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