庭の扉

 もうすぐ帰るよ、お母さんの声が聞こえてくる。わたしはそれを聞かなかったふりをして、一点を見つめていた。

 あの入り口の向こうには何があるんだろう。
 誘われるようにして、わたしはふらふらとそちらの方に進んだ。

 向こうには、花の咲き乱れた庭がどこまでも続いていて――

 それ以来、わたしはこの場所にいる。帰る家もとっくになくなってしまったらしい。

 どうやら気づかぬうちに何十年単位で時が過ぎていったのだ。

――初出:Tumblr「創作保管庫」

#掌編小説

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