少女は闇の中にいた。なにも見えない、ここがどこなのかもわからない。どうしてここにいるのかすらわからなかった。ただ、帰るところはないのだ、と少女は気づいていた。
それでも、それなりに彼女は幸せだった。
ある時、少女の前に少年が現れた。少年に声をかけたが、気づかずに通り過ぎていく。
気づいてほしくてほしくて肩に手を伸ばしたが、少年は霧のように消えてしまった。少女はうずくまり、涙を流した。
少女は相変わらず一人ぼっち。あらわれては消えていく少年を、今日も追いかけていく。
ふと水の流れる音が聞こえてくる。
橋だ。少女は立ち止まった。
少女は橋の隅で一人佇んでいる。
いろいろな人が橋を通り過ぎていった。怒っている人、泣いている人、思いつめている人。
しかし、誰も彼女に目を向ける事なく、手を差し伸べると幻のように消えていく。あの少年のように。
そう言えば、毎日が夜だったと少女はふと思う。
こんなふうになった時から……いつからかはとうの昔に忘れてしまった。ずいぶんと長い間、誰とも口をきいていない。
心の中がすぅすぅする。いるべきではないところにいるような気がして、少女は自分の肩を抱いて、しゃがみ込んだ。
(あたし……何かを探していたんだ)少女は思う。
とにかくここから動かなくてはいけない。
(あたしは、ここにいるべきじゃない)
少女は立ち上がり、周りに目を向けた。