見出し画像

愛なんて、錯覚なんだ#1

○:「ごめん、おまたせ!」

久:「いいよっ」

久:「いこっか」

○:「うん」

久:「今日はバイト?」

○:「そうだよ」

久:「今日、電話…できたりする?」

○:「うーん…
めっちゃ遅くなっちゃうけど…」

久:「それでもいいよ」

○:「わかった!」

久:「バイトは直接向かうの?」

○:「ううん、1回家帰るよ
はるか用に夜ご飯作ってからじゃないと駄目なの」

久:「…そっか」


久:「…そうだ!」

○:「ん?」

久:「今週の日曜日、空いてる?」

しおりは真っ直ぐな笑顔で前かがみに聞いてくる…

○:「あー
バイトが夕方からあるね…」

久:「それ、休めたりしない?」

久:「遊びに行こうよ!」

○:「うーん…できるかなぁ、言ってみるね」

久:「うん」

○:「まって、ギリギリじゃん…!
はるかにお弁当渡さなきゃ行けなかったのに…」

久:「…」

久:「急ごっ!」

○:「うん!」

私が気づいたのは、
1時間目の授業が終わってからだった。


遥:「あっ…」

遥:「お弁当、忘れちゃった」

遥:「どうしよ…」


"かっきーっ!!"


さ:「かっきーかっきー!!」

さ:「今日の部活、ダッシュ練らしいよ!」

遥:「えっ…」

さ:「やだよね…」

さ:「休みたいなぁ…」

遥:「でもこういうことからちゃんとやってかないと上手くなれないからね」

さ:「かっきーまじめ…」


さ:「それより、どうしたの?」

遥:「あっ、お弁当…忘れちゃってさ」

さ:「えっ?」

遥:「お財布も忘れちゃって…」

さ:「購買も行けないじゃん!
どうすんの!?」

遥:「どうしよう…」

さ:「さくのお弁当、いる?」

遥:「いいの?」

さ:「うん!」


"かっきー、お兄さんきてるよ!"


クラスの女の子から、そんなことを言われた…



さ:「○○さん!!?」

遥:「ちょ、ちょっと!」

さくはあの人のところに目掛けて猛ダッシュする…

さ:「○○さん!」

○:「おぉ…えっと君は…」

さ:「遠藤さくらですっ!」

○:「あっ、賀喜です…」

○:「はるかは…?」

遥:「…なに?」

○:「あ、お弁当、忘れてたよ!」


俺ははるかのお弁当を渡す…

遥:「…」

さ:「お弁当!
かっきー忘れて困ってたんですよ!」

遥:「ちょっと、言わなくていいから」

○:「そっか、よかった
忘れないように気をつけてね」

遥:「わかったからもう行って」

○:「あ、うん…」

○:「ばいばい」

さ:「○○さん!また今度!!」


"かっきーのお兄さんってカッコよくない?"

"そーかな?私はあんまり…??"

"私、知ってる先輩の中なら1番タイプ!"


遥:「…はぁ」

さ:「かっきーいいなぁ」

遥:「なにが?」

さ:「だって優しくてかっこいいお兄さんがいるんだもん」

さ:「羨ましいよぉ」

遥:「…わかんない
あの人のどこがそんなに…」

遥:「さく、部活行くよっ」

さ:「えぇ…」

遥:「ほら、あんまり遅いとダッシュ増えるよ」

さ:「それはやだ!」

遥:「じゃあほら、行くよっ」


2人は少し急ぎめに体育館に向かった…

梅:「今日の練習は基本的にダッシュ練です!」

梅:「基本的なボール回しとかの後は、色んなダッシュ練して、その後にミニゲームを行います」


バスケットボール部の部長の美波さんが、そう言った後に、みんなもアップを始める…


遥:「はぁ…はぁ…はぁ…」

さ:「かっぎぃぃ…まっでぇぇ……」

遥:「スタミナ…ちゃんと…つけないとね…
さくの課題だね…」

さ:「もぅむりぃ……」

遥:「ペース…あげていい?」

さ:「えぇ……!!」

遥:「着いてきてね」

さ:「かっきーのぉ……おにぃ……!!」

さ:「はぁ…つかれた…
かっきー、ふくらはぎ痛くない?」

遥:「うん…疲れたね」

さ:「ペースあげた恨み…忘れてないよ!」

遥:「ごめんって…」

さ:「でもいいなぁ、かっきーうまくて
体力もあるなんていいなぁ」

遥:「そんなことないよ
まだまだこれからだから」

さ:「意識たかいね…」

遥:「じゃ、私ここだから」

さ:「じゃあね!またあした!」

遥:「うん、ばいばい!」


さくと別れたあと、私はすぐに真顔になる…

遥:「ただいま…」

誰もいない無人の家の机に、ラップで敷かれたご飯が置いてある…

そしてもうひとつ…

遥:「…置き手紙」

"はるかへ。部活おつかれさま!
冷めてたらレンジでチンして食べてね!"

遥:「…はぁ」

私はひとり、無音のこの部屋で夜ご飯を食べ始める…


遥:「私は、今日もひとり…」



誰もいない部屋で、私はふとその一言が出た


いつしかの食卓での会話が脳に甦る…




父:「○○〜またバスケで賞貰ったんだな!」

父:「すごいぞ!!」

○:「えへへ…」

遥:「お兄ちゃんすごかったよ!
遠くからシュッって打ってスポッて入ってたもん!!」

○:「たまたまだよ…」

真:「はるかもこれからそういう選手になれるよ!」

○:「そうだよ!がんばって!」

遥:「えーお兄ちゃんに言われてもなぁ…」

○:「大丈夫だよ!
はるか身長もあるんだから」

○:「俺より上手くなりそう!」

真:「それより○○、ちゃんとお勉強してるの?
もうすぐ高校生になるんだから…」

○:「もうお母さんうるさいっ!」

真:「ん〜!?
うるさいって!?」

○:「勉強はちゃんとするから!」

真:「んもぉ…」

真:「バスケの熱量がもうちょっと、お勉強に加わればいいのに…」

父:「○○、すきなことをやりなさい」

○:「はーい!」

真:「もぉ…お父さんも甘いんだから…」

遥:「はるかもお兄ちゃんと同じ高校いく!」

真:「えー?」

○:「そっかぁ…!!じゃあはるかにずっとバスケ教えられるね!」

遥:「やったぁ〜!」

遥:「…」

遥:「…はぁ」

遥:「家族、かぁ…」

遥:「こんなに楽しかった日は…」






遥:「…どこいっちゃったんだろ。」






私は考えるのをやめ、空いた食器を片付けた…

to be continued…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?