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このシェアハウスが、私たちの帰る場所です。#8

久:「瀬奈ちゃんっていう子の事…
教えてくれませんか…?」







○:「瀬奈のこと…?」

○:「…」

久:「お願いします…
どんな些細なことでもいいんです…」

○:「…」

白:「史緒里ちゃんは…なんでそんなに瀬奈のことが気になるの?」

久:「もう一個…瀬奈ちゃんが生まれた時の写真…」

白:「あっ…これ?」

久:「はい…」

麻衣は俺のお母さんが抱っこしている赤ちゃんの瀬奈と、俺が映っていた写真を指差す…

久:「それが…」

史緒里ちゃんは…一枚の写真を俺らに見せる…

○:「……!!」

白:「えっ…!!なんで!?」

久:「私…ずっと持ってたんです。」

久:「この写真」

史緒里ちゃんは…全く同じ写真を俺らに出した…


○:「えっ…」

○:「これ…ほんとに史緒里ちゃんの…?
真夏とのファイルにも入れてたはずだけど」

○:「それじゃなくて……?」


黄ばんでおり、腐敗したその写真がファイルから出したことじゃないくらい分かる…

分かるけど…


久:「最初は…そこからだったんです
まなつ…?さんとのファイルを見ちゃった時…」

久:「その写真があって…
でも、すぐに美波が持ってっちゃって…」

○:「…」

○:「…っそ、…そっか」

白:「…」

○:「…」

久:「…」

○:「…」


無言の時間がずっと続く…

きっと史緒里ちゃんは俺待ちだろう…

ずっとその可能性があるって心の準備が出来てたから…

でも俺も麻衣も…心の準備が出来てなくて…

この可能性を口にしていいのか…

何もかもが分からず戸惑っている…

でも…瀬奈は…



久:「私…」

久:「生まれてからずっと…祖父祖母に育てられてきたんです…」

久:「9歳の時に児童養護施設に行くまで…」

○:「…」

白:「ど、どうなの…?」

○:「瀬奈は…母親の父母の方に預けられてるって聞いてる。」

白:「…一緒…か」

久:「…」

白:「…」

○:「…」

○:「…史緒里ちゃん」

久:「…はい」

○:「…」

○:「…明日。」

久:「…えっ?」

○:「明日…血縁関係があるか調べに行こう」

白:「…」

久:「分かりました」

○:「…ごめんね、史緒里ちゃん
まだ…全然頭の中が整理できてなくて…」

久:「…大丈夫です
私も…本当は同じ気持ちです」

○:「…」

○:「…」

白:「じゃ、とりあえず…みんなもう寝よっか」

白:「時間もないし」

○:「…」

久:「…」

白:「じゃあ、私は…帰るね」

○:「…そっか」

久:「…」

久:「…私も、寝ます」

○:「うん、おやすみ」

○:「…」





叔父:「○○や、怪獣のおもちゃ買ってきたぞ」

○:「おじちゃんっ!ありがとう!」

母:「お父さんほんとに○○に甘いんだから…」

叔父:「なーに、心配するでないの
今度はプラレール買ってくるな」

母:「お父さんっ…もう…
あなたからもなんとか言ってよ…!」

父:「いいんじゃない?
もうすぐ2人目も産まれるんだし!
お義父さん、本当にありがとうございます」

母:「ほんとにもう…」

○:「ぼく、お兄ちゃんになったら一緒にサッカーやる!!」

父:「あははっ○○、産まれるのは女の子だよ」

○:「そうなの?」

母:「うん、名前はまだ決めてないよ」

○:「ぼくがつけたい!」

母:「おっ、なになに?」

○:「ん〜」

カキカキカキカキ

○:「これ!」

母:「ん…瀬奈?」

父:「○○、なんでそんな難しい字書けるの?」

○:「七瀬ちゃんの瀬だもん!」

叔父:「瀬奈…いいじゃないかぁ」

叔父:「真子、これにしなさい」

父:「瀬奈…俺もいいと思うよ」

ジューッ…ジューッ…

梅:「…」

○:「…っ」

朝、急に目が覚めた…

朝の番組が勝手についてる…

○:「やっば…!!」

左上の時計を見て絶望と驚嘆の2つが襲いかかる…

梅:「あっ、○○さんおはようございますっ」

○:「…美波ちゃん?」

梅:「勝手にキッチン使っちゃってごめんなさい
○○さん、いつもより長く寝てたから…」

○:「あぁ…全然大丈夫だよ
朝ご飯急いで作るね」

梅:「あっ!大丈夫ですっ!もうできましたっ!
桃子っ、これ持ってって」

桃:「はぁいっ」

梅:「3人で先に食べちゃいましょっ」

桃:「うん、みなみんありがとう」

桃:「いただきます」

○:「美波ちゃん…ごめん」

梅:「大丈夫ですよ
○○さんこそ、何かありました?」

○:「えっ?」

梅:「寝過ごすなんて初めて見たから…」

桃:「桃子も、心配です」

○:「ごめん、ちょっと夜中考え事してて…」

梅:「そうですか…何かあったら頼ってください」

桃:「○○さん、麻衣姉さんは今日は来ます?」


桃ちゃんは美波ちゃんの作った料理を俺の前に置く

そこにはバターで焼いたトーストにベーコンと目玉焼きを載せたものが湯気と一緒に存在感を醸し出す…

○:「麻衣は今日こないよ」

桃:「わかりました、みなみん5人分だって」

梅:「聞いてたよ
久保ちゃん達のは後でいいや笑」

○:「美波ちゃん、ありがとね」

梅:「大丈夫ですよっ」

梅:「じゃ、いただきまーす」

桃:「いただきます」


2人は1口目をがぶりつくように食べる…

最初に2人にオムライスを見た、あの時とはまるで違うその食べ方に、俺は一目おいてしまう…

○:「いただきます」

…味がしない

決して美波ちゃんの朝ご飯が悪い訳じゃないのは分かるけど…

今日の俺に、味覚がついてこなかった…

○:「…」

梅:「んっ!ご馳走様でした!
2人の作っちゃいますね!」

与:「んぅん………桃ちゃんおはよぉ…」


目をこすりながら祐希ちゃんが2階から降りてくる

桃:「おはよう」

梅:「おはよ〜今日は私が作るからね〜」

桃:「しおりちゃんは?」

与:「まだねてる……」

梅:「はいっ!出来たよ祐希の分!」

与:「はぁい」

桃:「ごちそうさま、みなみん
桃子しおりちゃん起こしてくるね」

梅:「うん、ありがとう」

梅:「こーら、祐希食べながら寝ない!」

与:「んぅ…みなみん…」

梅:「もぅ…」

梅:「ていっ」

与:「んぅっ」

梅:「こら、寝ない寝ない」

与:「うん…」

桃:「みなみんみなみん…
しおりちゃん学校休むって」

○:「えっ?」

梅:「大丈夫なのかな…」

○:「お、俺…いってくる」

俺は足早にしおりちゃんの部屋に向かった…

○:「史緒里ちゃん、失礼するね…」

久:「はい…」

○:「今日、休むの?」

久:「あ、はい…
ちょっと倦怠感…?みたいな」

○:「…俺もなんだ」

○:「なんか考えることが多くて…
もし…史緒里ちゃんが…」

久:「○○さん」

食い気味に史緒里ちゃんに止められた…

久:「今日…休んでもらえますか?
私は…今すぐにでも確認したくて…」


○:「…」

○:「…半休で、いいかな?」

○:「午前中、仕事が終わったら、そのまま帰ってくるから…」

久:「…分かりました。」

○:「お昼ご飯は、はい、これ
コンビニで買ってきて」

久:「…」

史緒里ちゃんは震えながら、千円札を受け取る…

○:「じゃあ、仕事行ってくるね」

久:「はい…」

○:「…」

俺は扉のドアノブを捻る…



久:「お兄ちゃんっ!」


○:「…!?」

○:「ど、どうしたの?」

久:「あっ、いや…」

久:「お仕事、頑張ってきてください…」

○:「…」

○:「…うん、頑張る」


…お兄ちゃん、かぁ

俺は会社のデスクでなんとなく、その事を考える…


……

ただ、ただ繰り返される平凡ないつもの日常が進んでいたあの日…

"どうしよう…"

"わ、私…殺しちゃった…"

○:「…えっ?」

母親から発された言葉はそれだった…

○:「…ひぅっ!!」

父親が仰向けに寝そべって…

腹部に包丁が刺さっている…

血の気が引いた。

俺はこの時、初めてそれをリアルで体験した…

○:「な、なんで…!!」

○:「…」

生:「○○くん、手が止まってるよ?」

○:「あっ、ごめんなさい…」

固まっている俺を見て、上司のえりかさんが声をかけてくる…

今日…なんか、こういうこと多い…

生:「何か、あった??」

○:「いや…ちょっと考え事してて」

生:「今日半休とるらしいね」

生:「どうしたの??」

○:「ちょっと体調が良くなくて…」

生:「そっか
悩みがあったら、なんでも相談に乗るよ」

○:「ありがとうございます、いつも…」

○:「ただいま…」

久:「お、おかえりなさい…」

○:「おまたせ、しおりちゃん
お昼ご飯たべた??」

久:「あっ…まだ、コンビニ行ってなくて…」

○:「そっか、じゃあどっか食べに行こっか」




to be continued…

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