勉強するとバカになる

尊敬する養老孟司先生の本にそう書いてある。
先生がまだ若い頃、確かに聞かれた言い回しだと。
私も、先生よりは遥かに若いが、聞いたことがある。
勉強ばっかりするとバカになると。
本などにばかり向かっていると、現実の世界の問題が見えなくなるのでダメなんだということの様だし、確かにそう思う。

その昔、進歩的文化人と名乗る(?、呼称される?)人々がいて、本当かどうかはわからないのだが、きれいな核、汚い核という言い方があったという。

実際にそう言ったとか、それはレトリックだとか色々ある様だが、正直言ってその話を聞いた時に大丈夫か?と思った。
そして、何より、勉強してバカになったんだなと思った。

流石にそんなバカはもういないと思っていたが、しかしやはり勉強ばかりするとバカになるのである。
昨日、何の気なしに読んでいた記事が、それ。

sns黎明期からトランプ政権誕生までのことを黒歴史というらしい。
書いている人は大学の先生様だ。
やっぱり、バカになっちゃったんだろうね。
むしろ、実際に手を動かして働く人が少ない今、人々はどんどん勉強をしてバカになっているのかもしれない。

いろんな意見があって、それがなんとなくどこかの方向に向いて世の中は進むと思うのだけど、ある種の人々にはそうは思えないようで、どうあっても自分が正しいので、世間は間違えていると信じ込んでしまう始末に負えない状態となることも。
世の中を見ることなく勉強を畳が腐るほどしたせいでバカになったんだね。

理念ばっかりが先にたち、実際にどうすればいいのかなんて考えないから、どうやってもうまくいかないのに、世の中のせいにしたりする。
それでこの世の終わりだという感じの顔をしている。
頭を使ってもいいのではないかしら?

朝、息子が計算プリントをしていた。
800mlは何dlか?という問題で、彼は盛大に躓いた。
しかし、その直前には10lは何mlかという問題があり、そのもっと前には1lは何dlかという問題があったのであって、それらはしっかりとできていた。
わかんないから教えてくれと息子が言う。
私は思わず、頭を使えよと怒ってしまった。
もうあなたの手には全ての道具が揃っているだろ?それらを駆使して答えを導き出しなよと。それが勉強ぞ。
じゃぁ、手がかりがない問題をどう解くんだよと、何かと口答えをしたい息子は言った。
そうね、確かに社会にはそれらしき手がかりになりそうなものがない問題ってあるよね。

でも何かヒントはあると思うのだ。
例えばジェンダーレストイレ。
新宿かどこかで導入して派手に散ったやつ。
あれって誰得?
それを明確にせず、いきなり理念から始めるから失敗するのではないか?
例えば、私はミュージカルが好きなので時に公演を観に行く。
幕間にトイレに行ったりするが、女子トイレは相当な混雑で、妻などは飲み物もとりあえず先にトイレに行ったりする。
一方、男子トイレはそれほどでもない。
ホールのような、しかもそんなに安くないチケット代を払って、それ以外の人が来ないところは少なくとも安心であろう。だからみんな安心して公演に集中できるんだよね?
そういったところから始めれば良かったんじゃないかと思う、ジェンダーレストイレ。
確かに多少は気を使うだろうが、しかしみんな幕間にやらねばならないことがあるので、そんなことを構っている暇はないはずだ。
私だって、そんな長くない間に飲み物を飲んだり、パンフレット見本なんかを観たりしなきゃなのだ。
そんなところでやればいいじゃん。
そうして、その反応を見て、徐々に広げていけばいいじゃん、安全が担保されたところで。

前にも書いたが、声を出せばいいと言うものでもない。

それをいかにうまく世の中に広めていけばいいのかを戦略的に考える必要があるのではないだろうか?
そんなことをせずに、自身の正当性だけを根拠に話を過激に進めようとするから、多くのことは失敗する。
まずは得をする人々を対象に、実際に体感してもらってシンパを増やしていくことが大事で、そういうことをやらないから勉強しすぎるとバカになると言われてしまうのである。
私が若い頃、何かをしたいと思っていても周りからは次の様なことを言われた。
現実を見ろよ。
そのころはその発言にハラワタが煮え繰り返ったものだが、しかし現実を見ることでしか解決しない問題ばかりだ。
そこに突破口を見つけるのが物事を変える手段なのだと今は思う。
それって、しかし研究の課題を考えるのにも似ていている。
どんな問題が現在あるのか?それをどう解決するのか?それによりどう言うメリットを享受できるのか?そうしたことを論文に書いて世の中に出す。もしくは研究費をもらう。
たかが一本の論文では世の中は変わらないが、しかしそれが積もり積もると山になり、そのうえから誰かが遠くを見通すかもしれない。
そうやってしか世の中は、少なくともその程度しかない私には変えられないのだ。

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