受けるべきか受けざるべきか

論文を書いて投稿して、それが見事に受理されると嬉しい。
どれくらい嬉しいかというと、その日1日はデレデレしてしまうくらい嬉しい。
なんだかなんでもできそうな気がするくらい嬉しい。
でも、心配にもなる。
これで科研費継続できるかな?とか、また同じようにできるかなとか、果たしてたくさん見てもらえたり引用されるかなとか。
もう修羅道。
すごい昔のゲームのナレーションで、”武士道とは死ぬこととみつけたり、修羅道とは倒すこととみつけたり”っていうのがあったが、一旦論文を投稿し出したらそこから逃れることはできないのである。
ちなみに、私の密かな野望は、払った税金を研究費として取り戻す、である。
もちろん遠く及ばない。(いうまでもないことだが、たくさん税金を払っているわけではない)
そんな二流(三流とは決して言わないのが、私の小さな矜持である)の研究者であるが、時に査読の依頼が来る。

査読とは何か?
投稿された論文を読んで、受理に値するかどうかを検定することだ。
投稿された論文なので、投稿した人は命をかけている(に違いない)修羅だ。
同じ修羅道を歩むものへの共感や、rejectされたときの辛さを共有している憐憫が判断を迷わすことはない。
でも、通してあげたい。
そんな気持ちで読む。
読み込む。
結構疲れる。
参考文献まで眺めながら読むと2週間でもきつい。一応他にも仕事しているからね。
しかも、コメントが必要だ。そりゃそうだ、魂を込めて書かれたものに対する最低の礼儀ではあるし、そうすることが回り回って自分だけでなくコミュニティのためになるからだ。
だから尊敬するカズさんのように、手に魂を込めてタイプする。
もちろん推敲もする。
コメントを書き直すこともある。

以前、若者に、論文はラブレターだと、気が狂ったのかこのおっさん、という感じのことを話したことがある。
夜中に魂を込めて書いていると暴走する。
discussionは特にあかん。暴走して、もうそれは言い過ぎどころの騒ぎではないわいな、というくらいのことも平気で書いている。
だから、次の日の朝読み返すと恥ずかしい。(そんなところに二流(三流とは言わない)の二流たる所以が溢れ出している)

だから査読のコメントも、見直すと恥ずかしいことがある。
もちろん英語なので、grammarlyでチェックしたり、deep lでおかしくないかを確認する。
ちなみにgrammarlyのこなれ感が本当かどうか心配なので、必ずdeep lで確認して、いい具合になるかを確認する。その程度の英語力だ。
ともあれ、そうやって修羅道を邁進する。

そんな先日、なんで私に?というくらいの超がつく、そして誰もが知る高級誌から査読依頼が来た。
これ、なりすましか?などとは思わない。
そんなことをしても、誰も何も得しないからだ。
しかし、期限1週間…。きつくね?
泣きながら、昨晩ようやく返信できた。
ふと見ると、ありがとうのメイルが来ていた。
自動返信だが、ちょっと嬉しい。
そしてorcidからも変更の連絡が来ていた。地味に嬉しい。
査読は非常に重要であるにもかかわらず、なんの業績にも加味されない。
だから、記録に残るだけで嬉しい気がする。もちろん、査読した論文のタイトルなどは記録されないので、後から見返しても、なんだったっけ?となるのだけど。

そして朝、メイルを開いてみると、聞いたこともない出版社から査読の依頼が来ていた。
こういった依頼は結構、実は多い。
しかし、多くの場合はいわゆるハゲタカジャーナルで、しかも分野とか180度どころか、ねじれの位置で交わることすらない内容のものであることがほとんどだ。(この私に農科学についての知識は、残念ながら何もないが、そういうのが平気できたりする)
でも、今朝のは内容がそのものドンピシャ(懐かしかろう)である。
でもでも調べてみると、出版社はいわゆるハゲタカだ。
もちろんオープンアクセスだし、雑誌名もこの内容も受け付けるんかね?というくらいの幅広さだ。(大体が、biologyとかいって医学も含んだりする。確かに生物ではあるが…)
期限は1週間。
果たして、これは受けるべきなのかどうか?
なんか、内容を確認したくても、一回その出版社に登録されただけで面倒くさくなりそうで、嫌なんである。
どうしたものかと考えあぐね、今これを書いている。つまり、逃避しているのである。
エグいところだと、そのまま知らぬままにeditorとかに名前を並べられそうな気すらする。っていうか、そういうことをやっているハゲタカ雑誌は多い。
いい加減な気持ちでいいなら受けても全く平気だが、しかし上述のように結構魂を込めるのである。
だから、どうかお願い。若い人々よ。私のような二流(三流とは言わない。しつこい?)でも魂込めてます。罷り間違ってもハゲタカジャーナルには投稿しないでね。そして、安心して立派な論文を書いてください。

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