感受性

サリオは言う
悲しみも苦しみも怒りも妬みだって無いことになんかできないよ。少なくともキミにとってあるべき感情だと認めなきゃ。

私はいちいち騒がず、動じず、サラリと流せる私になりたかっただけ。誰かの『面倒』になるのは面倒。だからそんな感情は邪魔だった。そう思いながら伝えることもせず、大きめのクッションに突っ伏したままの私に容赦なく言う

そうやって言葉にもせずに、そういう感情を疎ましく思って避けようとするから、ちゃんと抱えきれなくなるんじゃない?
愛おしさや喜びやしあわせな気持ちと同等に扱ってやるべきじゃないの?
いいよね。どんな感情をどんな時に持ったって。キミの感受性で得たものを、キミが選り分けて否定することないんじゃない?

そう。そうやってやりすごしてきた結果、酷く自分を消耗して、誰にも理解されなかった事を醜く憂いている。私さえ理解しようとしなかったくせに。私がそれを望んだのだろうに。
だから、黙ったまま身動きもせず、独り言みたいな、刺さるような撫でるようなその音声を聞き流そうとしていた。

キミが自分の感情を大切に扱えるようになったら、誰かの感情もきっと大切にできるよ。
サリオは私ではなくて、彼の左斜め横にある窓の外ばかりみている。

窓の外はサラサラと雨が降っていた。
音もない静かな雨。
今の私にはちょうどいい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?