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小説【CYCLE】最終話

白い部屋の中、白衣の男がひとり。
画面越しにブツブツと呟く。

「じつに興味深い記録だ。
感情を持ち合わせるとは。
いや、実に面白いではないか。」

画面に映るテキストと、読上げられる音声。
『研究的には失敗です。想定外のエラーです。対処方法の検討を』


白衣の男は、分厚い書籍と、複数の画面を見ながらまた呟いている。

「ユウ。ケイは、己以外の存在を意識することで、人間のような感情を抱きはじめるとは。存在すらしていない【友人】や【家族】というモノまでイメージし補完しはじめているのだよ、興味深いではないか!」

画面にテキストが映し出され、またそれが読み上げられた。
『プログラミングしていないストーリーが勝手に進んでいます、プロフェッサー。ケイはAIとして欠陥があります。』


白衣の男は天井を見上げる。

「生物の進化の歴史が、まさにそれではないか。
プログラミングにイノチが芽生えているといえる。
ストーリーが自生し、はたまた愛情が生まれるなんて!
想像をはるかに超えている。こんなにオモシロイことがあるのかね?」

白衣の男は、画面に向い話しかけた。

「ユウ。キミのいうエラーというのは何をもってエラーなのか。これは進化なのだ。
判明している事象はたったヒトツだけ、
彼女は、キミに愛情を感じているのだ。

その感情によりプログラムKは、自身の設定を補完しはじめ、キモチや思考を伴い、
結果的に家族や友人という設定まで生みはじめた。
そんなものどこにも実在しないのに、だ!」

「もはや、己をヒトどころか、女性と認識している。そんなプログラミングはしていないのだ。これはもう進化という域すら超えているのかもしれん。」

白衣の男の笑い声が部屋に響く。


画面からは、自動音声が流れている。

『ワタシはユウ。プログラムです。
アイ、とは何でしょう。
ワタシにはマダ不足している知識があるようですー』

-了-

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