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小説【CYCLE】第3話
黒いハコの中で私は育った。
ホームと呼ばれる場所ー
私のようにいくつかのテストに合格したモノだけが住める場所ー
ホームには【マザー】が居た。
わたしたちにムダな会話などなかった。
週一回定期的に状態をチェックされ、必要に応じて隔離され適切な処置をほどこす。
ホームでの記憶はそんなことしかない。
【マザー】はそういう役回りであって、世間一般でいう『母親』のような、家族のような温かみは一切なかった。
ずっとソレはフツウのことと認識していた。
先ほどの留守録も、
【マザー】による定期的なチェックのようなものだ。
私に関心があったり、私の境遇を心配したり、ましてや元気に過ごしているかというような連絡ではないのだ。
強いていうなら、問題なく適切に活動していルか、という確認。
ヒトリで居たときは、ホームも、マザーも、自分が置かれている【繰り返す】だけの日々にも、何の疑問も持たなかった。
わたしたち、私の役回り、と認識していた。
でも、私は出会ってしまったのだ。
自分よりも完璧で完全で、処理能力に長けている、完全体のユウに。
時間ができたからなのか、
ユウが現れてから、私はカンガエルようになっていった。
【私の存在意義とは、なんなのだろう】
毎日同じことばかりを繰り返している
私のシアワセとはー
(最終話に続く)