連続恋愛小説【Re:】第一話
さよなら、またいつか―。
そんな挨拶もなく、私の日常から突然彼は居なくなった。
アパートの窓側の本棚には今も、彼の大事にしていたメイトンが立てかけてある。
そこだけ時間が止まっているかのように。
「泊まらなくてもいいじゃない。二駅だし近いから帰って来られるでしょう?」
「俺だけ帰ってくるわけにいかないよ。仕事だし、俺が一番後輩なんだ。」
柊吾が私に反論するなんて初めてだった。
「じゃあ、せめて寝泊まりする部屋を別にしてもらってよ。女の子たちと一緒の部屋で寝て起きて、そんなのおかしいよ!」
「…ミュウはさ、俺のことが信じられないの?」
いつも優しく、私のワガママを結局は受け入れて折れてくれるのに、そんな言葉が返ってくるなんてちっとも想像してなかった。
心配症で嫉妬深くても、それは愛情があるからこそで、そんな私を一番に理解して優先してくれる、そう思っていた。
「柊吾を信じてないわけじゃない!知らない女の子たちと同じ部屋で、一週間以上も寝泊まりして過ごす仕事環境や、それが平気な女の子たちと過ごすこと自体が嫌でたまらないの!」
いつの間にか泣き叫んでいた。
あの頃の私には彼だけが世界のすべてで、
ただただ、彼が大好きだった。
(続く)