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小説【CYCLE】第2話
ユウが私のもとに来てからー
もう3ヶ月になるだろうか。
各種プロジェクトの工程別タスクの洗い出し、
必要なメンテナンス、不測な自体のフォロー。
関連する申請や手続き、システム構築や運用といったPDCA…。
業務範囲は幅広く多岐に渡っている。
しかしそれらは手厚く、ミスすらない、まさに最高品質。
完璧で非の打ち所がないとはこういうことなのだろう。
ユウがくる前。
以前は
私がひとりでそれらを担っていた。
今でもおそらく
プロジェクトを回すことなど、私ひとりでできなくもない。
そう、ただ実行するだけなら、だ。
以前と決定的に違うこと。
それは、常に「孤独な戦い」に
私が耐え得るか、という点だ。
周りからの妬みや嫌がらせ。
実質的な被害の数々。
中傷のツブヤキ。
自分ではスマートに、
適切な対処をしてきたつもりだった。
スルースキルというものか。
持たざるモノは
等しく
持つモノを羨むようにできている。
人手なしとか、感情は無いのか、という単調な陰口。
根深い嫉妬は後を絶たない。
それが
今ではどうだろう。
ユウが居てくれる。
この絶対的な安心感。
ヒトリジャナイ
常に余力が確保できている。
時間もある。
これがバッファやゆとりなのだ。
その言葉の真の意味がようやく理解できたともいえる。
資源やエリアを血眼に奪いあう
なんてバカバカしいのだろう
勝ちか負けか
敵か味方か
そんなものにもう分けることに興味もない
何かを成せないのは
自分に実力や経験が不足している
そう判断し、スペックを上げるべく日々ヒトリ奮闘してきた。
今はどうだ。
新しいアイデアや技術を生むためには
それ相応のエネルギーが必要なのだ。
そのためには余力つまりバッファが不可欠である、と落ち着いて分析がデキル。
24時間365日
数多のプロジェクトのことしか頭になかった。
プライベートの多くは犠牲となり、
家族、友人、周りの人に感謝だとか、
それらを大切に思う、
なんて考えたことがなかった。
しかし今は。
ユウと共に在ることで
「繋がり」や「頼る」こと、
誰かの力を借りるのも悪くない。
そういうキモチがいつの間にか私に芽生えていた。
そして近ごろは誰かに与えられる存在になりたい、とさえオモウ自分が居る。
いかに時間とお金を生み出すかの試算をしては、そのとおり以上の成果を出す
そんなことで満足を得ていた。
数字で見えない測れないキモチなんてものには、興味がなかったのだ。
(続く)