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新聞配達中に穴に落ちたあの日

ぼくは、大学に運良く入ることができました。
千葉にある大学です。
学費が大変だと思い、新聞奨学生制度を利用することにしました。
新聞奨学生制度とは、新聞配達をすることで奨学金をもらえる制度です。
その新聞配達中に、工事をしていた道路の穴に落ちました。
痛かったです。
今思い出しても、あれはなんだったのかと思う体験です。


新聞配達をしていた場所

ぼくが新聞配達をしていたのは、千葉県の「おゆみ野」というところでした。
あの頃はまだ、駅の周りにかろうじてお店とかが少しあるだけ。
少し駅から離れると、家なんてポツポツとしかなく、これから街ができていくようなところでした。
ぼくが配達をしていたエリアの一つは、区画が整備されているだけの場所で、店長は家が建つと、引っ越しのトラックが来るのをいつもチェックしていました。
購読の勧誘のためです。

工事中の穴に落ちた

そんなわけで、そのエリアはカブ(配達用のバイク)のアクセルを全開で突っ切っていました。何しろ、ほとんど家がないので。
その日の夕刊配達も順調にこなし、いつものように風を全身に受けながら、アクセル全開で走っていました。
そこは下り坂なのでスピードが出て気持ちいいんです。

そして、その最高の気分のまま工事で掘られた道路の穴に落ちました。

「えっ ⁉︎ 」

そのとき穴の中にいたのは、カブにしがみついたぼくと、3人のおじさん。

「びっくりしたな〜」
「映画のワンシーンのようだったよ」
おじさんたちは口々にぼくにそういうと、カブとぼくを穴から押し上げてくれました。

状況を整理すると、
・夕刊配達の途中
・カブはタイヤが歪んでいて、まともに走れそうもない。
・ぼくは、体中が痛い。
・おじさんたちは無傷。

ぼくは、販売所に連絡を入れました。
「すみません、工事現場の穴に落ちました」
「は⁉︎」
電話口の人の頭のなかが「???」になってるのがわかりました。
とにかく配達が残っていて、だけど配達できる状況じゃないことを伝え、控えの人に残りの夕刊配達をお願いしました。

工事中の穴に気づかなかった訳

ぼくがいつも通りアクセル全開で下った坂道には、カラーコーンなどによるバリケードもなく、遠目には何もないように見えました。

道の途中にアスファルト舗装をした時のように、黒く見える場所があることには気がつきましたが、まさか穴だとは思いませんでした。
何かの工事をして、アスファルトで埋め戻したのだろうくらいに思ったのです。

「穴⁉︎」

そう思った時にはぼくは穴の中でした。
カブのハンドルを目一杯にぎったまま、身動きができずにいました。
なにが起きたのか理解するのに、時間がかりました。

運が良かったのか悪かったのか

不幸中の幸いだったのは、工事中のおじさんたちが無傷だったことです。
ぼくは穴の左側に落ち、おじさんたちは穴の右側で作業していました。
今思えば、奇跡としか言いようがありません。
もしおじさんたちが穴の左側にいたら、と思うとゾッとします。

工事責任者らしき人に、「何かあったらここに連絡して」と携帯の電話番号を書いた紙を渡されました。
その紙をポケットにねじ込んで、ぼくは販売所に戻りました。
カブのタイヤは歪んでいたので、真っ直ぐに走るのも大変だったし、体中も痛かったのを覚えています。

何事もなかったかのようにすぎていった日々

その後はというと、ほとんど記憶がありません。
覚えている限りでは、次の日も何も変わらず新聞配達をしていたということです。
病院にも行かなかったし、本当に何もなかったかのように、その後の日々が過ぎていきました。

店長に報告したのは覚えていますが、店長がなんて言ったか、どんな対応をしたかまったく覚えていません。

落とし穴には気をつけましょう

ひとつ間違えたら全く違う人生になっていました。
今となっては笑い話であると同時に怖くなる、そんな思い出です。

人生どこに落とし穴があるかわかりません。

みなさんも気をつけてくださいね。

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