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【詩】星の喧騒

暗い夜空に光る雲。雲の切れ間から満月が見える。
大きな風が吹いて、近くの竹藪が大泣きしだした。その足元を三毛猫がよぎって、闇に消える。あたしも真似して細い横道に消えてみた。誰もいない。
ちっぽけな公園のベンチに座って足を揺らしてみても、何も来ない。営業時間外の古本屋とか居酒屋に思いを馳せても、やつらの朝にあたしは出会えない。夜行性はもう、その辺の空き缶とかタバコの吸い殻と同じで、ただのゴミクズだった。この世界のいらない存在。許されているのはやっぱ猫とか、イルミとか。あとコンビニとその店員。
ため息を吐くとタバコをふかした。ネイチャーなタバコ。メガネが曇った。
「息とは水蒸気だから、氷点下で息を吐くと瞬時に凍る。それを【星の囁き】と言うのですよ」
内容はうろ覚えだけど、いつか同僚がそんなことを言っていた。まあここは所詮東京だし、偽物でもいいか。
ひときわでかいため息を吐いた。囁きなんてキレイなもんじゃない。星の喧騒だった。あまりにうるさくて、笑っちまった。

作家修行中。第二十九回文学フリマ東京で「宇宙ラジオ」を出していた人。