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詩まとめ

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書いた詩のまとめ。
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2021年2月の記事一覧

【詩】Silver Dream

本日誕生日を迎えるとあるキャラに宛てたもの 「それ」は、どこにもいない。 僕の住む町、僕の家、テレビの向こう、ゲームの中、本棚の小説、僕の頭の中でさえ。実在などしないから。 だけどいつも君のいる世界を見ている。君がいるという「設定」で作った嘘っぱちのリアル。僕にだけ見える白昼夢。本当のリアルでは、何も見えない。夢ですら会えない。あるのは冷たい現実だけ。 ここはどこ? 君のいる銀の箱庭でずっと、全てが間違った世界を見る。その時だけだ。僕らが笑いあえるのは。 だから今日も

【詩】chamomile

白い花畑でぽつんと リンゴの香り華やいだひと 涙色の目は地平線を覗いた 紫のサイレンに抱かれて 桜が散り、青葉に詰られ、紅葉に怒られた夜、細雪のノックで目を覚ます 扉の向こう、寒椿 水面に弧を描く 今年はリンゴの花が咲くのかもしれない

【詩】旅行

駅のホームの端っこ。青いライトが照らす所で列車を待つ。 乗り込んだ車両から見下ろす街は星空。飛び散る光。生命。夜景の養分。さよならぼくのまち。 オーロラの道の先、通り過ぎた三日月の冷めた目から顔を背ける。わかっていた。ここも僕の居場所でないことくらい。 生命は地に足を着いてなければならない。それでも飛びたかった。一夜でいいから、この闇に抱かれて。 夜空を裂いて天の川の中。命を振り回す濁流の中でも、窓の外には青い星。手を伸ばした。 新月の憐れむ目。涙が空を舞う。 さよなら銀河駅

【詩】アザレアに鳴く

願望は常に嵐の中 黒き翼で渦中を目指す 敗戦と墜落 空は青 降り注ぐ涙に街が沈む前、 仰ぐ天青澄み渡る 落つ羽根手に取り笑む最終戦 「聞け、我が赤き夢を──」 叫びは閃光となり、青に消ゆ 嵐の中、星の聲がする アザレアの名を呼んでいる 呼び声は遠く、されど聞ゆ 青天の果て、アザレアが咲く時── 夢はこの青をも裂き、宙の彼方へ ──次の旅路、お前はどんな色を見る?

【詩】春待

その背には夜の刺青 紺色の髪を弄ぶ 雪の旋律に花香る 春が近い 桜の歌を歌いながら 星の砂漠の先 カンテラで照らす道に君はいる 青く煌く、春世界の旅路 「その果てでどうか、待っていてほしい」 振り返った君は、小指を立てて微笑んだ

【詩】Mr.Apple

毒リンゴ食べた黒ウサギ 幻想ワルツで踊り狂うなら 明日の方角赤い靴 天気になるまで賽を振れ 迷子の姫には未来の十字架 うつくしドレスでおやすみを 時間は待っちゃくれないのです ラタタで走れ峠道 グリーンアップルプリンセス 喰らうは狼王子様 浅くやいやい儚く喘げ お祭り騒ぎとリンゴ飴 お姫様にハニーキスでさよなら ふわふわな夢でまたいつか

【詩】みどりの夜

みどりの夜、というものがある。 エメラルドグリーンの空に、白い三日月と星が数粒光るだけの夜。 夜というには明る過ぎて、朝というほど「はじまり」からは遠い、その色をワイングラスに注いで飲み干す。視界がとろけて、海のような夜に落ちていく。 南の海は、夢色。 朝と夜の間、白昼夢の中にある夜明けを待つ空を、流星くじらと共に漂う。 風に舞う翠の雫は、私の涙かもしれない。 ああ、水平線の果て。白い朝日が見えだした。 夜が明けたら、あなたとお茶をしましょう。好きな歌など語らいながら。

【詩】Marmalade

「おはよ」と言えば「おはよう」と返ってくる そんな日常が憎かった 僕の聞きたかった目覚めはこんな煩わしいものではない 好きでもない人間の声と始まる朝は、この上なく不愉快である 理想はあまり話したことのないあの子 たまに世間話と恋バナをする、華やかなあの子の「おはよう」で目覚めてみたい そう思うとどうにもダサ過ぎてムカつくけれど マーマレードジャムを乗せたトーストを齧りながら、うるさく囀る君と 一度の朝だけでいい、結婚してくれ 白昼堂々そんな夢を描ける程度の肝はあるのに、口には

【詩】Raspberry

朝になると日が差して、夜になると星が煌めく その繰り返し いつか途切れるなんて考えもせず、今日もあたしはカフェに行く 甘いお菓子と飲み物、チャットで彩られる白い日常 それだけでいいのに ラズベリーのような甘酸っぱい日々だけ歌っていられたらと、見えもしない星に願う 青空はイタズラっぽく白い月でウィンクした アオハルはピンク色で甘くて、冷たい 銀色の恋で掬う その感覚は知ってるはずなのに、何故かまだ知らない気がする だから乙女らしく流れ星に願いをかけた あたしに福音を 鐘の音

【詩】春告花

空一面に白雲 地上は銀世界 雪が降る中、傘も差さず世界を見ていた 月や星は当然見える筈もなく、人間さえも存在しない 在るのは白 それのみ ふと水面に浮かぶ白椿を見つけた 息はまだある 掬い上げて雪に還し、春を祈る 澄んだ空気を身に受けながら歩き、やがて袖からいつかもらった髪飾りを出してみた それもまた、白椿であった 髪に着けて、また歩く 彷徨っていると言った方が正しい 当てもなく、果てもない 強いて言えば、花々を弔う旅路だったのかもしれない やがて白銀の泉に辿り着き、花の如

【詩】ミッドナイトシティ

蠢く人間と瞬く光をビルの屋上から見つめる よく晴れた空に星ひとつない 月さえもない 地上のゴミだか虫のようなものしか、今この夜には存在しない がらんどうの空に浮かべるものはない 歌は苦手だ それに、数を知らない 夜景をつくる光を数えるのも飽きて、また地上を見つめる 眠れない街と人間 狭間に生きる身には何を思うこともない それらが共生して生まれる夜景にだけ意味を見出す それは多分何よりも愚かで、ゴミや虫よりも醜い この景色の一部すらつくれないのだから、本当に存在価値がない だか