UXとマーケティングの違い・共通点とは?関係性を徹底比較
マーケティング会社のディレクターをしている私は「UXとマーケティングって、近いようで業務が違う…何でだろう?」という疑問を持っていました。
そこで見つけたのがINTERACTION DESIGN FOUNDATIONの記事「How to Change Your Career from Marketing to UX Design」です。この記事によると、UXとマーケティングにはそれぞれ違いと共通点があるようです。
そこで今回は、UXとマーケティングを比較しながら、互いの関係性を考えていきたいと思います。
UXとマーケティングの違い
まずは、UXとマーケティングの2つの違いを見ていきます。
違い①ユーザー体験 vs コンバージョン
記事には「UXでは、会社の利益に関わらずあくまでユーザーのために良い体験を構築する一方、マーケティングではものやサービスの売上を増やし、会社の増収につなげることが重視されている」と書かれています。
たとえば、広告の設置を検討する場合、UX目線では「ユーザー体験を妨げる広告は設置しない」、マーケティング目線では「コンバージョン獲得のために広告設置は必要である」という議論になるかもしれません。
UXにおいては、収益目標も意識しながら設計やリサーチに取り組む姿勢が大事になるでしょう。一方で、マーケティングの考え方が行き過ぎてしまうと、たとえば在庫があるにも関わらず希少であるとして購買を煽るなど、ユーザーが意図しない行動を促してしまう状況(いわゆるダークパターン)を招きかねません。UXとマーケティング、両者のバランスを取ることが求められます。
違い②個人の行動 vs トレンド
UXは個人、マーケティングは市場・マスを起点にする点で違いがあると言えます。記事では「UXではユーザー個人や行動の詳細に注目し、マーケティングでは統計から消費のトレンドを導くような、大きな数字を意識する」と書かれています。
UXでも定量データを利用することはありますし、逆にマーケティングでユーザーにインタビューを行うこともあるので、あくまでどちらかの傾向が強いという考え方になるでしょう。
UXとマーケティングの共通点
つづいて、UXとマーケティングの共通点を見ていきましょう。
共通点①リサーチベースであること
UXにおいてもマーケティングにおいても、リサーチに重きが置かれている点が共通であると記事には書かれています。
UXはユーザーのニーズや行動、マーケティングは消費者の行動や嗜好パターンに着目している違いはあるものの、調査の結果を元に施策を考える点において共通していると言えるでしょう。
共通点②心理学の側面
UXもマーケティングも、ものやサービスを顧客またはユーザーにとって望ましいものにするという目的において一致しています。そして、そのためには心理学が大きな役割を果たすと記事に書かれています。先日ご紹介したUXデザインの法則も、心理学が絡んでいますね。
UXデザインの本を読んでいると「UXを詳しく理解するためには、行動心理学や認知心理学の基礎知識が必要」と書かれていることが多いです。これについては勉強しながら、少しずつまとめていきたいと思います。
UXとマーケティングの関係を考える
以上の違いと共通点を踏まえて、果たしてUXとマーケティングにはどのような関係性があると言えるでしょうか。
「ノンデザイナーでもわかるUX+理論で作るWebデザイン」では、以下の図のように、ビジネスを成功させる上でUXとマーケティングの両方が同等に必要であるという見解が示されています。
ただし、この場合は「UXとマーケティングは別物」という味方が前提になりそうです。
ここまで見てきたように、UXとマーケティングには違いと共通点がどちらもあることを踏まえると、私個人としては、現代において、UXとマーケティングは一部が溶け合う関係であると考えます。
近年ではSNSの普及により、ユーザーがサービスの感想などを気軽に発信できるようになりました。
そのため、良いUXを設計することでユーザーが満足し好意的な口コミが広がれば、それ自体がマーケティングとなって、集客が見込めるかもしれません。逆に、ユーザーを無視したサービスによって悪評が増えれば、ネガティブなマーケティング効果につながり得ると言えるでしょう。
つまり、UXがマーケティングとなり、マーケティングがUXとなる関係ではないか?と思うのです。
ちなみに、「UXグロースモデル アフターデジタルを生き抜く実践方法論」では、「UXデザイナーがこれからのマーケティング活動を推進する主役になっていく」と書かれています。
これは、マーケティングそのものが変化する中、新たなマーケティングを実現する上でUXが重要な役割を担うからです。
これまでのマーケティングでは以下のような「マーケティングファネル」の考え方が採用されていました。
マーケティングファネルは、マス広告などにより認知を拡大し、認知に至った見込み顧客をふるいにかけ、最終的に購入に至った顧客から収益を得る考え方です。つまり、これまでのマーケティングでは集客や販売を重視していました。
ところが「UXグロースモデル アフターデジタルを生き抜く実践方法論」では、新たなマーケティングとして以下のモデル(図は一部割愛)が提示され、次のように書かれています。
無料版ジャーニーに潜在顧客が常にぐるぐると滞留する状態をつくることができれば、広告宣伝や営業をはじめとした集客・販売にまつわるマーケティング活動に今ほどコストをかける必要がなくなります。…これまで広告宣伝や営業をはじめとした集客・販売にマーケティング活動が担ってきた役割を無料版ジャーニーが代替する、ということです。
たとえば課金をしなくても遊べるゲームのように、顧客以外も含めすべてのユーザーが利用できるサービスを提供し、一定のユーザーが有料に転換して収益化する仕組みが新たなマーケティングのあり方ということでしょう。
これを踏まえると、マーケティングにUXが被さってくるような、そんなイメージを持ちました。
まとめ
良いUXを設計しても、人が集まらなければ(マーケティングがなければ)使ってもらうことができません。一方で、マーケティングによって集客をしても、UXが不十分だとユーザーは離れてしまいます。
UXはユーザーを裏切らないこと、マーケティングはユーザーを集めること。これからのものやサービスは、この2つをどちらも兼ね備えた状態をめざすことが重要だと思います。