歌会始2025 -SINGER, YOUNGER, TANKABOOMER-
新年あけましておめでとうございます。
ところでみなさん、まだまだお正月は終わっていないって気づいてましたか?
宮中では新年の行事が終わるまでがお正月とされています。
その最後の新年行事が終わるのが1/22!
というわけで、今年も参りましょう
宮中新年行事の最後を飾る、1月から早速行われる、立憲民主主義最高のパーティ!
年明け早々、宮中文化と平民の感性をスパークさせて2025年をぶち上げましょう、
歌会始2025の開幕です!
今年の歌会始、例年に比べかなり特徴的です。
まず入選者をざっと見ると全体的に若いですね。30歳代以下が5人(うち20代が3人!)、
大半が50代以上だった去年までとは明らかな違いを感じます。
何年か前に選者が変わった影響でしょうか。
近年の短歌ブームの影響も出てきのかもしれません。
なんにせよ、若い歌が宮中文化とどうマッチするのか、見どころです。
そして今年のお題が「夢」
これもちょっといつもと雰囲気が違いますね。
例年の、これまでの「野」」とか「和」とかいった熟語にすればなんとでも取れそうなお題に対し、
「夢」はポエミーながらも具体的。解釈が絞られそうな、ある種挑戦的な題が取られています。この解釈も世代間の差が出てくるか。
今年の応募は1万6250首(うち海外88首、点字12首)
映えある今年の入選者10人はこちら!
まず最年少、
宮崎県延岡市 延岡学園尚学館高等部1年 森山の文結(16)
数年前まで、新潟のどちゃくそ強い短歌強豪校が毎年のように最年少を送り込んでいたのですが、今年は宮崎の延岡学園から入選。文芸部の1年生だそうで、普段はお母様の影響で俳句を詠み、短歌甲子園の入賞経験もあるエリート。お名前も読書家のご両親が文の字を入れたそう。
日頃から日記のように歌を詠むJKが、わずか30分で詠んだと言う入選作、若さと日頃の鍛錬から生み出される瞬発力に期待です。
東京都北区、中学校教諭 栗田の岳(22)
そもそも歌会始の入選は元教員が多いんですが、現職でしかも20代は珍しいです。
しかしそれもそのはず、栗田さんは高校時代から作歌を始め、何度も全国大会で入選。その情熱をそのままに国語の先生になったという生え抜きの若き歌人です。
んー、この年代の荒削りの歌は素人くささに歌会始としての面白みを添えていたのですが、だんだん若年層でも経験のある「上手な歌」が入選する傾向が出てきたのでしょうか。
東京都世田谷区、東京理科大4年 村木の陸(23)
夜間部で大学に通う村木さん。表現文化基礎演習(日本語表現法3)の課題で作った歌がお見事入選です。高校の授業で作ったものが入選はよく聞きますが、大学の課題が入選ってのは初めて聞いたぞ!
若い方の短歌にありがちなのが、いちばん身近な「歌」であるJ-POPに影響を受けまくったふんわり恋や夢や友情なんかを詠んだもの。今年は最初から手練れが若年層でもそろっていて短歌らしい短歌を詠んでくることが予想されます。このあたりでゆるふわJ-短歌も聞きたいなあ。
岡山県岡山市、会社員 西江の涼帆(27)
20代が3人目ですって!信じられないですね。
大学3年生の時に映画サークルの先輩に誘われて短歌始めた西江さん。
ああ、すごく文化系!このエピソード自体がすごく映画みたい。清少納言だって現代に生きてたら映画サークルに入っているサブカル女子大生だったと思うんですよ。
いまでも月に何首も詠んで、通勤電車で推敲しながらネットで発表しているとか。確実に短歌ブームの影響が見られますね。一昨年以来、2回目の投稿で入選を果たしました。応募したのは締め切りギリギリの9月下旬だったとか。このへんもすごくリアルなサブカルっぽいエピソード。
埼玉県さいたま市、会社員 川崎のななせ(31)
30代からも一人入選。ことしは女性が多めですね。
毎年一人はいらっしゃる、一切素性のわからない方。お名前で検索するとキャバ嬢がヒットするのですけど、まさか、ね。
若い方が続いたので、がばーっと年代飛びます。
40-50台会社員はもともと少ないのですが、例年のママ世代も今年は無し。
埼玉県朝霞市、小学校教諭 吉田の光男(60)
60代から複数人の入選。親の介護とか孫がどうこうみたいな歌が多いイメージですが、今年の「夢」のお題だとどう出てくるか。
今年の60代教員パレードの一人目は小学校の先生です。多分ですが、今年2人目の国語の先生です。
新潟県上越市、元中学校教員 大堀のみき(65)
さあ、しばらく元学校の先生が続きます。この辺は例年通りの展開。
退職したら短歌を初めて、新聞に投稿して歌会始入選。この歌会始王道パターンのパレードです。
「ちょっと早めの10年前に教職を離れ、歌を詠み始めたそうです。入選作はそのころの生徒の言葉を思い出し詠んだ歌。夢」というお題も教員とは相性がいいか。
静岡県浜松市、日本語教師 佐藤の一央(69)
定年退職後に歌を詠み始め、今は浜松で日本語教師をなさっている佐藤さん。一種の「先生」による歌が続きます。
日本語を勉強する在日外国人に夢を詠み重ねました。
長崎県諫早市、元諫早郵便局集配課長 馬渡の寿人(74)
やはり退職後から短歌を始めたという馬渡さん。この年代の入選者の王道にならい、地元新聞の短歌投稿コーナーに作歌を続け腕を磨いてこられました。個人的な感情のみならず、コロナからウクライナまで社会情勢も題材にする作風だそうです。今回は能登のことを歌ったものが入選。歌会始は政治的な話題は避けられる傾向がありますが、ちらっと社会風刺みたいな語感が入ってきたらおもしろいなあ。
そして今年の最年長
長野県佐久市 元エンジニア 金井の寛(77)
「元エンジニア」という肩書きにプライドを感じます。
100歳まで短歌を詠んでいたというお母様に影響を受け、その介護をしながらつきあって歌を始めたという金井さん。なんと歌を初めて数年だそうですよ。
長野といえば松本に故小沢征爾のオーケストラがあるのですが、その大ファンの金井さんは去年2月の訃報を受けて歌を詠みました。毎年、最年長の方は年季の入った堂々とした歌を歌いがちですが、時事ネタではないにせよ、去年の訃報という当時性がある歌を最高齢の方が詠んできたのが面白いですね。
平民の歌の披露が終わったら、次は召人(ゲスト)と選者の歌。
今回のゲストは三田村雅子さん。源氏物語なんかの古典文学の研究者です。歌人じゃないのに、歌の専門家として詠まされるってなかなかのプレッシャーですね。
続いて選者の歌。偉そうに10名の入選決めたお前の歌はどんなもんなんじゃい、という目でご覧ください。そこはガチガチのプロ歌人。現代短歌らしい流石の「上手さ」に乞うご期待。
そのあとは皇族方の歌。
愛子ちゃんが今年、会場にデビューだそうです。実は大学で古典を専攻しているそうで、それを踏まえた去年詠んだ歌が結構良かったんですよ。今年も期待
最後は天皇皇后両陛下。
雅子妃は数年前までいっつも子供の歌を歌っていましたが、しばらく封印して去年復活させました。
今年は何の話題でくるか。
天皇御製は毎年地味にトリッキーなのでそこもお楽しみに。
歌会始のお約束として、皇后歌は2回、天皇御製は3回繰り返して詠唱されます。
DEIなんて立ち入る隙のない、完全な特別扱いと立憲君主主義の妙味を感じてください。
最後に来年のお題が発表されます。
出してみようかな、と思った方いらっしゃると思います。
応募方法は平安時代から変わらず、「半紙に毛筆で書き、宮内庁に郵送」一択です。
歌会始2025は令和7年1月22日、朝10:30よりNHKで生中継です。