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冬がはじまる

※2021/12/5投稿分を再掲

 ずっとこの場所にとどまっていたい。この時間が終わってほしくない。普段はそんなことしないのに、空を見上げたくなるほどに清々しい。切ない。自分の中のそういう感情と出会う瞬間というのは、生きている中でそう頻繁に訪れるものじゃない。38試合分の、いや、それ以上の数の物語のひとまずの終わりを告げる笛の後に沸き起こった拍手が、冬の空気を暖める。

 勝利を、喜びを目指すこと。その姿勢こそに価値があるのだと思う。川の向こうからやってきたライバルチームは、もう一か月も前に、二年連続の優勝を決めていた。この日の試合も一対一の引き分け。ぼくたちのチームが上り調子だった夏の頃に思い描いていたファイナル・マッチのイメージ――それにだいぶ上乗せされた悲喜交々――とは異なるエンディングだったが、そこに居た3万人は、シーズンの終わりをごく自然な態度で祝福した。ぼくも拍手をした。

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