キーマンはシャイボーイ(2025/1/19)

 悪い意味でチームに蔓延っていたボールプレー中心主義からの解放というテーマを抱えてスタートした2024-25シーズン、新指揮官アントニオ・コンテが最初に出した処方箋は3バック2シャドー。攻撃においてそれぞれのポジションの選手の役割を簡素化し、また重心を低く保った守備陣形からの組織的なアクションを促すことで、まずは"負けないチーム"を作るための第一歩とした。

 そこからしばらくは個々の能力差によって生じる穴を埋めるための試行錯誤が続いたが、コッパ・パレルモ戦で試験導入された保持4222、非保持5バックの本格採用によってチームの骨格がハッキリし、ほどなくして勝ち点の荒稼ぎが始まる。前4枚の中央へのオーバーロードによって稀代のポストプレイヤー・ルカクを中心に据えたパターンプレーの破壊力を高めるだけでなく、マクトミネイとポリターノの走力を使いながらクヴァラとザンボ=アンギサの守備負担を減らす妙案だった。

 ブレーク明けの10/20エンポリ戦からは彼我の状況によってシステムを適宜使い分けるように。HT明けの戦術変更で劣勢の前半からゲームをまるっきりひっくり返したこのゲームでは、昨季までのチームのトレードマークだった散開配置433を使って勝ち切ったこともあり、5ヶ月前のチームとはいい意味でまったくの別人であることを証明する格好になった。

 それでも11/3アタランタ戦、12/9ラツィオ戦など戦術と強度が噛み合った相手には完膚なきまでに叩きのめされ、スクデットを見据えるにはもう一歩足りないと感じさせたが、不足していたピースは早々に見つかることになる。この夏にポルトガルからやってきたダヴィド・ネレスだ。ブラジル仕込みのテクニシャンでありながらオフ・ザ・ボールの動きも質が高く、複数の武器でチームの攻撃を活性化させることのできる総合力の高いアタッカーだ。

 それまでは左サイドで絶対的な存在だったクヴァラの控え(もしくは右でポリターノの控え)に甘んじていたが、クヴァラがラツィオ戦で負傷したことを受けて翌週のウディネーゼ戦からスタメンに名を連ね、決定的な仕事を連発したニューカマーのおかげで現在までチームは6連勝。ホームで何もさせてもらえなかったアタランタに対しても裏のカードでは接戦を制し、暫定で2位インテルとの勝ち点差を6に拡げた。

 さて、今季ここまでのダイジェストはこの辺りにしておくとして、最後にクヴィチャ・クヴァラツヘリアとの別れについて触れておきたい。僕は、このクラブのお家芸である契約まわりのゴタゴタに巻き込まれた割にはそれほど悪くない物語の終わりだったように思う。2年前のナポリに歓喜をもたらしたライジングスターの退団は寂しいが、彼のかつての定位置ではもう別のスターが躍動している。そのパワフルなドリブルと喧嘩っ早いキャラクターで愛された77番の後釜は、シャイで無愛想な7番だ。

いいなと思ったら応援しよう!