ヨモギ編:第一話 ぱつ子、ヨモギと出会う!
季節は冬の真っ只中。
とある田舎町は辺り一面の銀世界。
飼い犬のルーカスを連れてぱつ子は外に出た。
30~40センチほど積もった雪は、すでに硬くなっている。
雪の上を歩くルーカス。
「お。雪、凍ってるな」とルーカスに話しかけるぱつ子。
当然の如くスルーするルーカス。聞いちゃいない。いつものことだ。
ぱつ子も雪の上に足を踏み入れる。
が、その瞬間。
「ズボッ!!」
ぱつ子「!?」
気温の高さも相まってか、さすがに成人女性の体重では雪の上を歩くのは無理があったようだ。
(子供のころは雪の上歩けたのにな・・・もう無理か・・・)
雪の上を平然と歩くルーカスに引っ張られ、硬くなった雪に足を取られながらもいつもの散歩コースを進む。
しかし、雪道を歩くのは意外にも耐力が削られる。
散歩もそこそこに切り上げ、家に向かう。
道中、雪の上にはなぜか枯葉の屑や、どこから現れたのか小さい蜘蛛や虫をちょくちょく見かける。
葉っぱなのか虫なのかを見分け、踏まないように避けながら歩いていた時のこと。
何やら緑っぽい小さいものが雪の上にある。
(葉っぱ?いや、なんか違う・・・)
腰をかがめてよく見ると、カエルの上半身だけが見えており、下半身は雪に埋もれているではないか。
「カエル・・・!?」と思わず呟く。
もちろんカエルはピクリとも動かない。
近くにはカラスが2羽いる。
(この前まで暖かかったさかい春と間違えて冬眠から出てきたんかな?その後雪が降って氷漬けにされた??)
(このままやとあのカラスに食べられてまう!助けな!)
と思いながらも、小さい頃は平気だったカエルを、大人になってからは全く触ることができなかった。
むしろ、家の中に入って来ようものなら、「ひぃー💦誰かお助け!」という程の体たらくに成り下がっていた。
しかし、このまま放っておくのも気が引けた。
カエルにとっては余計なお世話かもしれないが、寒さゆえに動けなくなっているのがかわいそうに思えた。
急いでルーカスを家に連れて帰り、割り箸と今は使っていないボウルにぬるま湯を入れて、カエルの元へ急いだ。
カエルの元に辿り着くと、まずカエルの周りの雪を手で掘ってみたが、硬くて手が痛い。
ぬるま湯をカエルの周りの雪にかける。
雪が少し溶けたが、湯は少量しか入れてきていなかったため足りなかった。
また湯を汲みに家に戻り、今度は多めに湯を入れてカエルの元へ向かう。
残りの雪を融かす。
雪が融けて露になったコンクリートの上にカエルが落ちる。
ひっくり返ったまま動かない。
残りわずかの湯をカエルにかける。
動かない。が、何となく手が少しだけ動いたように見えた。
(生きてるかも)とわずかな望みをかけ、また湯を汲みに家に戻り、少量の湯を入れてカエルの元へ。
素手で触れなかったため、カエルを割り箸でつまみ、ぬるま湯の入ったボウルに入れた。
ひっくり返ったまま浮いているだけでピクリとも動かない。
(ダメか・・・)と思ったその瞬間!
ボウルの中をスイスイと泳ぎ、壁にへばりついた。
「やった!」と呟き、そのまま家に連れて帰った。
第二話へ続く
☆今日の豆知識☆
カエルは変温動物だよ!
※変温動物とは・・・体温の調節機能がなく、外界の温度によって体温が変化する動物のこと。
冷血動物ともいう。簡単に言うと、外気温が低ければ体温も低くなる、逆に気温が高ければ、体温も上がるということ。
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