坂本龍一のことはよく知らないけれど、
YMOの最初のアルバムは当時買った記憶があるが、そんなに聴かなかったと思う。
あまりピンと来なかった記憶がある。
音楽だと忌野清志郎とか鮎川誠とか、自分が好きなミュージシャンと関わりがあったし、演技はひどいものだったけど映画としての「ラストエンペラー」は素晴らしかった。
映画音楽の作曲家はあまり意識しないので、知らないうちに坂本龍一の曲を聴いていることも多いだろうと思う。
なんだか、自分が興味を持っているものの周辺にちらちらしているのだけれど、そこまで興味があるわけではない、という感じの人だった。
環境問題を中心に、政治的な発言もしていて、発言自体は至極真っ当なものだったと思うけれども、至極真っ当な発言をするからといってそのアーティストに興味を持つわけでもない。
訃報を聞いて、この人のことは結局あまり知らないままだったな、と思った。
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アーティゾン美術館で「ダムタイプ2022:remap」を観る。
「日本のアート・コレクティブの先駆け的な存在であるダムタイプ」が2022年に新しいメンバーとして坂本龍一を迎えてヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展で発表した作品「2022」を帰国展として再構成したもの、とのこと。
特に坂本龍一の訃報を聞いたから、ということではなくたまたま。
アーティゾン美術館は確か2回目、でも前に来たのはブリヂストン美術館って名前だった頃でずいぶん昔で、あまり憶えていないのだが、ずいぶん変わった様な気がする。
展示室は4~6階の3フロア。
今回観に行ったダムタイプ展は6階。
(この展覧会のチケットで他の展示も見れる)
6階のフロアに入ると薄暗い空間に、まず壁がどーんと眼に入る。
6階のフロアの真ん中に、壁で区切られて、ひとまわり小さな部屋が作られている。
その部屋に入ると、部屋の内壁、高さ2mくらいのところをぐるっと光の帯が走っている。白い光、赤い光、赤い光がかたまってアルファベットになったりする。WHAT IS A RIVERみたいな簡単な文章。
この部屋の中で鳴っているのがおそらく坂本龍一の手による音楽なのだろうと思う。
時々人の声がする。赤い文字を読み上げているらしい。声の主は、坂本龍一の友人であるデヴィッド・シルヴィアンやカヒミ・カリィだとのこと。
真ん中の部屋の外側は回廊のようになっていて、そこにターンテーブルがいくつも置いてある。
ターンテーブルは光っているものもあれば光っていないものもある。
光っている時にはターンテーブルが廻り、音が鳴る。
レコードはガラスでできているらしい。
レコードをよく見ると、レーベルのところに都市の名前と、その都市のある場所の地図が描かれている。
レコードからは、その都市で録音された音が流れる。
街の雑踏の音、鳥の声、虫の声、駅のアナウンス、などなど。
坂本龍一が世界各国の友人知人に頼んで録音してもらったものらしい。
かなり深く坂本龍一が関わっていることがわかる。
音や光に刺激を受けて、とりとめのないことを色々考えながら歩き回るのはなかなか面白かった。
平日だったこともあって、そんなに混んでいなかった。
坂本龍一のファンなら行ってみる価値があると思う。
というかファンならもう行っているか・・・。
(5月14日まで)