能楽:「道成寺」について【初めて観る方に】
最終更新: 2019/03/23
今日も茶道の稽古でした、くりりん @ 和物好き です。
今回の記事は、能について!(知人が「道成寺」を披(ひら)くのでメモ)
能楽を観るのが初めてな人に、オススメするなら?
→ 「道成寺」
と答えたくなるような、オススメの曲です。
見どころが豊富で、歌舞伎や浄瑠璃にもなっていて、
日本を代表する悲恋物語、といっても過言でないと思われます。
また、
シテ(能の「主役」を演じる人)にとって、
「道成寺を演じる(披く)」 = 「ようやく一人前と認められる」
といった位置づけの、非常に重要な曲だそうです。
※ 「乱拍子」や「鐘入」という秘事や難度の高い技も含まれるため
※ 演じるには宗家の許しが必要!
http://www.the-noh.com/jp/trivia/005.html
なお・・・「能ってよくわからない!」というご意見もあるかと思います。
わかります!笑
実は、能に出てくる会話は、全て「古語(!!)」なので、
あらすじを把握しておかないと、
お囃子や謡のα波による、すさまじい心地良さにやられて、
夢(幽玄?) に引きずり込まれます(経験多数…涙)
というわけで、把握しましょう!
※ 面白おかしく書いている部分もありますが、どうぞお許しください。
あらすじは・・・
公式ページ(道成寺の)からどうぞ!
絵巻が登場するので、理解しやすいです。
さてさて、これが能になると、どうなるか…
鑑賞の手がかりとして、登場人物を記載しておきます:
登場する人物・事物など (能「道成寺」の場合)
[昔] 清姫・・・ 主人公その1。 結ばれぬ恋、想いが強くなりすぎて…
[昔] 安珍・・・ 主人公その2。 マジメな僧 → 「被害者 (注: 私見です)」
[昔] まなごの荘司・・・清姫の父。すべては、この人のせい(注: 私見です)
[今][昔] 道成寺・・・ 避難場所 → 悲劇の現場
[今][昔] 鐘 ・・・ 「これはお前の物語だ」 超重要アイテム。
[今] 鐘供養・・・鐘のお披露目イベント! 女人禁制、ですぞ(by 住職)
[今] 白拍子・・・鐘に特別な想いのある、女性
(白拍子とは、男装で舞い歌う遊女の一般名称)
[今] 住職・・・ 女人禁制の理由までは伝えず・・・。でも最後は解決
[今] 能力(寺男)・・・ 住職の部下。現場権限を発揮してしまって・・・。
[今] 大蛇・・・??
ストーリー
〜〜文章編〜〜
1. 季節は、花の咲く春、場所は日高(紀州)の道成寺
2. 訳あって、撞き鐘がないままになっていた
3. 住職、新しく鐘を鋳させて、吉日に鐘楼につるす
→ 撞き始めの法要しよう! → 今日が、法要当日。
4. 能力(のうりき。寺の勤め人)に対し、
住職「訳あって 供養の場所は女人禁制ね。入れたらダメ、絶対」
5. 能力「鐘の供養、あります!ご参詣を!女人は禁制」と周知。
〜 日が暮れて、白拍子(男装で枚歌う遊女)登場 〜
6. 白拍子 (今まで重ねた罪を鐘供養で消したい…よし、お願いだ!)
7. 能力「女人禁制だから、無理だよーごめん」
8. 白拍子「大丈夫。 私、普通の女人じゃないから。舞い、見たくない?」
9. 能力「しょうがないなぁ、私が許す。乱拍子を舞ってお見せください」
10. 白拍子、舞う。「花の外には松ばかり・・・」
→ なぜか、見ているうちに能力の意識が朦朧としてくる
11. 白拍子、舞いながら石段を、にじり登る → 鐘楼に到着!!
12. 次第に高揚し、激しく舞い始める 白拍子
13. 突如 白拍子「鐘が恨めしい」と叫び、鐘の中に飛び込む
→ すさまじい轟音とともに、鐘、地に落ちる
〜鐘の落ちる音で目が覚める能力〜
14. 能力たち「わーーーーーー!すごい雷だわー」
15. 能力たち「・・・?雷?揺れたから、地震なのか?」
16. 能力たち「鐘楼のほうだ。行ってみよう → うわーーーー!!!!」
17. 鐘は落ち、なぜか煮えたぎっている
18. 能力たち「・・・(どーすんのよこれー)」
19. 他の人から住職に伝わると よろしくないと思った能力たち、
観念して住職に「鐘が落ちた」と告げる
20. 住職「なんだと!一体何があったというのだ!」
21. 能力「いや実は、きれいな白拍子が、どうしてもというので少しだけ」
22. 住職「バッカモーン!!!!!!!あれほど女人禁制と…クドクド」
23. 能力たち「ははぁ、申し訳ありません・・・」
24. 住職「はぁ…しかたない、さっそく行ってみよう」
25. 落ちた鐘、煮えたぎる様子を見て・・・
26. 住職「黙ってたが、この寺の鐘にまつわる恐ろしい言い伝えがあって…」
〜回想〜
27. 「まなごの荘司」と、幼い娘、清姫
28. 奥州から熊野詣をする山伏が毎年泊まるように
29. 山伏、清姫が喜ぶので土産など。
→ 荘司「あの山伏はお前のお婿さんだねぇ」などと冗談を
→ 清姫、幼心に、山伏を夫と思い詰め焦がれて過ごすように
30. ある年、山伏が出立しようとすると、
年頃になった清姫「いつまで私をここに待たせるの?
今年は私を奥州に一緒に連れて行って!」
31. 山伏(聞いてないよぉぉぉぉ) → 夜に紛れて逃げる
32. 娘、逃すまい!と、追う
33. 山伏、道成寺に逃げ込んで「かくまってくれ」と頼む
34. 寺中の者が集まり、知恵を絞る → そうだ、鐘の中に隠そう!
35. 一方、清姫。日高川の岸辺を探し回るも、偶然水位が上がり渡れない
36. しかし恨みの一念で、ついに蛇の姿に。 → 川を簡単に渡り、寺に。
37. 蛇体と化した娘、鐘が伏せてあるのを不審に思い、
龍頭を咥えて口から炎を出し、七巻巻き付き、尾で鐘を打つ
38. 鐘はたちまち、煮えたぎる湯のように溶け、山伏もその場で消失した…
〜回想終わり〜
39. 住職の話を受け、寺の僧侶たち「知らなんだ・・・」
40. 「日頃の修行の成果を見せるとき!成仏させてやりましょう!」
41. 「なんとかして鐘を吊り上げよう」
42. 住職「せやな」
43.「悪霊が相手だとしても、
日高川の水が枯れ河原の砂(まさご)の数が尽きるとも、
我等の法力(ほうりき)の尽きることはあるまいぞ」
44. 呪文:
なまくさまんだばさらだ せんだまかろしやな そわたやうんたらたかんまん
聴我説者得大智慧、 知我心者即身成仏
45. 「蛇身の成仏を祈っているのだ、恨みは残るまい」
46. 揺れ動き始める、重い鐘楼
47. 更に祈る。 鐘は撞かずとも鳴り始め、綱は引かずとも躍り上がる
48. 息を合わせて引き上げる! 現れたは、大きな蛇の化身!
49. 大蛇「ああ恨めしい! 一大三千大千世界(いちだいさんぜんだいせんせかい)の恒河(こうが。ガンジス川)の砂の数より 数限りない龍王様よ、私を哀れみ願いを聞き入れたまえ」
50. 僧「何を言う。龍王の世界のどこに、蛇体などの居場所があろうぞ」
51. 更に祈る僧たち、大蛇は、がば と倒れ、また起き上がる
52. 大蛇が鐘に向かって息を吹きかけると、息は猛火となり、
我が身を焼き焦がす
53. 大蛇は波立つ日高川に飛び入り、その深淵へと沈んでいった。。。
〜〜 現場からは以上です!〜〜
凄まじい量になってしまった・・・
気が向いたら、頑張って短くします!!
さて…このストーリー、全て下記の文献を参考にしています。いいほん。
参考文献:
「能の本」西日本出版社、
文: 村上ナッツ、マンガ: つだゆみ、監修: 辰巳満次郎<シテ方宝生流>
※ 全力でオススメ。 厳選20曲を、まとめ(マンガとセリフ) + 物語で紹介
〜〜
清姫、なかなか悲しい運命を背負ってしまってますよね・・・
白拍子もまた、清姫の怨念に乗り移られ・・・
安珍とばっちり・・・(繰り返しますが、私見です)
まなごの荘司・・・なんという罪作りな!!
〜〜
と、話題は尽きませんが
個人的に凄いなぁ、と思うのは、
約1000年以上もの昔の話が、このように克明に、
我々の気持ちを動かす、というところ。
日本だからこそ、伝わるのか、
国を超えて伝わるのか。
そういうことを、この先問い続けられるよう、
日本に住んでるからこそ、物語を覚えておこうと考えています。
もし面白い物語があれば、
ご紹介頂けると嬉しいです!
〜〜
最後まで
お付き合い頂きましてありがとうございました!
くりりん @ 和文化好き