【編集中】食心理学「フードアナリスト検定」~第17章 美味学 第2節~
本記事は、 上記のテキストをまとめた記事です。
(※ 現在編集中です。)
[1] おいしさについて (pp. 16-19)
食物は、さまざまな感情を呼び起こす。
「おいしそう」「おいしい」
「まずそう」「まずい」
などなど。
これらの心理的側面について、考える
◆ おいしさは食物の特性でなく心理経験である
上記 文献[1]では、「おいしさ」の解釈を2通り定義している。
解釈 1: 「おいしさ」は、食物に備わる、味、匂い、といった感覚属性(特性)の一つである
普遍的に<おいしい>食物が存在する、という考え方
解釈 2: 「おいしさ」は、食物を摂取した人間の快反応である
あるタイミングや状況下で、ある食物を摂取して「おいしい」と感じた
※ 「おいしさ」は、食物にではなく人間に属する、という考え方
→ 食品開発・検査に関する重要な問題を提起している
食品開発、食品官能検査といった領域で行われている作業・研究を
大胆に単純化した図(準備中)
「食物」は、その刺激属性を安定させることは比較的容易
「味・匂いの評価」は、よほど注意深く行わないと、妥当性、信頼性が乏しい結果になってしまう
妥当で信頼性のある官能検査を行うために、
・ 鋭敏な感覚知覚能力をもつ人々をパネラーや、テイスターとして用いる
・ 評価方法を吟味し、様々な統計解析方法を駆使する
だが、この3点こそが、味、匂いの評価を決定する重要な変数といえる。
1. 人によって評価に個人差がある
2. 一個人内において、評価に一貫性がない(状況などにより異なる)
3. 評価が質的な内容となる
◆ おいしさは摂食を喚起する必要条件でも十分条件でもない
食べるものすべてが美味しいもの、というわけではない
美味しければ、必ず摂取される、というわけではない
例えば、ダイエット中の人であれば
1. アイスクリームが「おいしい」と評価しても、頻繁には食べない
2. おいしさが「低い」、生野菜やこんにゃくなどを積極的に食べる
「美味しいものであれば、必ず食べてもらえる」
というわけではないので要注意。
[2] おいしさは変動する (pp. 19-21)
◆ 食事中のおいしさの変動
「空腹は最高のスパイス」という言葉がある。
逆に、満腹であれば、どのようなものを食べてもおいしさを感じにくい。
3つの実験
1. ショ糖溶液を使った快不快評定 (Cabanac, 1971年)
2. 摂食中のおいしさが、感覚刺激の処理レベルにより変化(Roll, 1981年)
3. 「感性満腹感」の実験的検討(今田純雄, 1993年)
ショ糖溶液の実験
A「飲み込まずに評定」B「飲み込んで評定」の2条件で比較
→ Bの場合、評定が進行するに従って、評定結果が快から不快に変化
※Cabanacの説明
「食物が体内に取り込まれることにより身体の生理状態が変化し、
その変化が食物の味覚評価を変化させる」おいしさの変化の実験
摂食中のおいしさの変化は、
上記の「生理状態の変化」とは別に、感覚刺激の処理レベルで起きる
例: チーズばかりを食べていると、飽きておいしさが下がる
(味、匂い、触感などに飽きが生じる)
「食事の終了は、感覚刺激の処理水準で生じる<飽き>によるものであり、満腹感の実態は この感性満腹感(sensory specific satiety)である」と説明「感性満腹感」の実験的検討
結論(※ 意訳):
食感が異なるものを織り交ぜれば、
カロリーが増えていっても
飽きずにおいしく食べ続けることができる
背景:
Cabanacの説「生理状態の変化が発生したら食物のおいしさの評定に影響を与える」が真であれば、
いかなる食物に対しても同等に影響を与えるはず。
だが、食べまくることでカロリーを多く摂取して、生理状態の変化が生じても、異なるものに対するおいしさは変わらない、ということを示した。
手順:
被験者を2つのグループに分ける
A「チョコレート群」、B「ポテトチップス群」
各グループともに、それぞれを多量に摂取する(合計数百カロリー分)
→ 実験開始直後と、終了直前に、
両群ともチョコレートとポテトチップスの評定(後述)を行う。
※ 例えば、チョコレート群の人たちは、以下のような食べ方をする
i. チョコレートとポテトチップスを両方食べて評定を行う
ii. チョコレートを食べ続ける(途中、昼食も摂る(!))
iii. 最後にチョコレートとポテトチップスの両方を食べて 評定を行う
「評定」は、以下の3つの尺度で行われた。
① おいしさ(0: まずい ⇔ おいしい:100)
② 好悪(0: 嫌い ⇔ 好き:100)
③ 摂取欲(0: もう食べたくない ⇔ もっと食べたい:100)
各評定を「評定1」「評定2」と呼ぶ。
評定1
両群ともに「おいしい」「好き」「食べたい」という結果が出た
評定2
両群ともに、「食べまくってないほう」への評価が上がった
考察:
・ 摂取した食物と異なる感覚属性(味、匂い、触感)をもつ食物に、
生理状態の変化は影響を与えない
→ 満腹感の発現に 内的な生理変化はあまり重要な役割を果たしていない
おいしさは、食べるほど減弱するが、感覚刺激の「飽き」の影響が大きく、栄養状態はあまり影響を与えないといえる
日本の「幕の内弁当」形式と「甘い調味料」と感性満腹感
日本では、食事前に、すべての食物を食卓に並べ、いわば「幕の内弁当」スタイルで食事を開始する、という習慣がある。
加えて、調理において、「みりん」「砂糖」といった甘味調味料を頻繁に使用する。
感性満腹感という観点から、この2点は、
日本料理が低カロリーでありながら、満腹感を得やすくさせる条件をうまく引き出していることになる。
(cf. 「三角食べ」を思い出した)
1. 「幕の内弁当」スタイル
最初から、さまざまな食物の匂い、見え、という刺激を与えてくれる。
→ 食べないうちに、満腹感を獲得し始める
cf. 欧米のコース料理: 皿ごとに新たな刺激が与えられる状況と大きく異なる
2. 甘味調味料の使用:
欧米のコース料理であれば、最後に砂糖たっぷりのケーキなどが登場。
現地のレストランで出てくると、甘みの強さと、その大量さに驚く。
→ 「最初は完食できる?と思うが、いざ食べ始めると完食できる」
(※ 個人差があると考えました)
感性満腹感の観点からすると、デザート以前の料理では、甘味がほとんど使われていないため、甘味に対する満腹感だけが満たされていない状況が生じたうえで、デザートを食べるため。
[3] おいしさと意識 (pp. 22-26)
「意識」の主要素である「認知と感情」を軸に、おいしさを考える。
「摂食」の意識性
生きていくための必須行動として、呼吸、睡眠、排泄と並び、摂食がある。
なかでも「摂食」は、他の行動と比較して、意識性の高い行動といえる
たとえば、呼吸や睡眠は、無意識下で生じるのに対して、摂食については、
数多くのダイエット経験者が存在することからもわかるように、
どのくらいの量を食べるのか、または、どういった内容のものを食べるのか
といった事項を、自らの意思に合わせて変更することができる。
逆に、毎回考える必要が生じる「煩わしさ」を感じる人もいる。
◆ 食事の終了とおいしさ
・ 学生を対象とした実験
・ 「どのように感じたときに食事を終えるか」と質問紙を渡して調査
・3種の調査方法を用いている点が特徴的
最初から選択肢(「お腹いっぱいになったから」など)を与える場合
一切の情報を与えずに自由記載させる場合
など
→ もし最初から選択肢が与えられており、
しかも1番目が「お腹がいっぱいになったから」というものだったら、
選択肢に引きずられた判断をしてしまう可能性があるため、そうならないように、最大限の注意が払われた
(注: 詳細は本文に登場しておらず、文献を参照する必要あり)
(コメント: 「学生を対象」という点が、最も偏りを生んでいる可能性がありそう。なぜ美食家を対象にしなかったのか)
◆ 食物の心理的分類
● 食物への好みに基づく分類
● 摂食拒否をみちびく動機による分類
● 摂取される食物の分類