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ドキュメンタリー『牛久』
トーマス・アッシュ『牛久』(2021、日、87分)
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一口にドキュメンタリーといっても様々だが、この作品は潜入報道、いや告発そのものだ。
祖国で命の危険があり、日本へ逃れてきた人でも、難民として認定される例はほとんどない。
在留する資格すら与えられないため、「不法滞在者」という立場に追いやられる。
そのような人々を強制的に収容してしまっているのが、出入国在留管理局の施設、いわゆる入管だ。
監督は、施設の中に閉じ込められた人たちとの面会を重ねる。
映像の大部分は隠し撮りされたもの。
なぜそうせざるを得なかったのか。
公の機関で、内部がどのようになっているのか、透明性が全く確保されていない。
まずその時点で不信感が湧き上がってくる。
当事者たちの訴える実情は、今思い返しても苦しくなるほど。
基本的人権が完全に踏みにじられている。
誰だって目を背け、耳を塞ぎ、なかったことにしたくなるだろう。
ただ、このように映画として世に出たことが一つの希望でもある。
それがどんなに酷いことだったとしても。
仕組みとして非人道的になってしまっている。
この事実を一人でも多くの人が知れば、それだけ変えていく力になるだろう。
諦めずに、そう信じ込むしかない。